2021年受賞部品

電気・電子部品賞

WaveConnect 小型高性能アンテナ

日本航空電子工業株式会社

従来製品比5分の1に小型化

 「WaveConnect(ウェイブコネクト)」は、日本航空電子工業のアンテナ製品。金属リングの一部を切断したC字型の共振器(スプリットリング共振器、SRR)の構造を採用することで、従来製品比5分の1のサイズに小型化した。
 一般的な銅合金の板金だけで構成しているため、「受け取った電波をどの程度の確率で返せるか」を示す放射効率は最大90%以上と、高性能を実現した。コネクター事業で長年培ってきた高精度なプレス技術を生かした。
 あらゆるモノがインターネットにつながるIoTを活用したスマート家電をはじめ、Wi-Fi機器やカーナビなどの小型化や高品質化、省電力化、生産性向上に貢献できる。
 今後はプライベートLTE(特定企業専用の携帯電話ネットワーク)や「ローカル5G」製品への搭載も目指していく。

Voice
日本航空電子工業 ワイヤレス事業開発部 部長 渡辺 真秀 氏

 このたびは栄えある賞をいただき、光栄に思います。
 「WaveConnect」は、他社に類を見ない小型かつ高い放射効率を持ち合わせた高性能アンテナです。PCBアンテナやダイポールアンテナの組み付けにおける仕損リスク、小型チップアンテナに見られる性能低下など、従来のアンテナが抱える課題を独自のスプリットリング共振構造と、基板への自動実装を可能とすることで解決しました。
 IoTやWi-Fi、車載通信など、無線技術に求められる信頼性に貢献したいと考えており、受賞を契機に国内外のマーケットへの供給拡大を目指します。

1000台メッシュネットワークを実現するWi-SUN FAN対応無線通信モジュール

ローム株式会社

通信コスト不要、高信頼性備える

 ロームは、最大1000台を同時接続できる無線通信モジュールを開発した。国際無線通信規格「Wi-SUN FAN」に準拠し、通信コストが不要になる。マルチホップ通信により自動で電波状況を見て通信経路を切り替える高い信頼性を備える。
 他の省電力広域無線通信(LPWA)にない強みを持つ。活用が進みつつあるLPWAは、大規模システムでの通信コスト上昇や、環境変化による通信速度低下、通信障害に課題があった。
 すでにWi-SUNが採用されているスマートメーター、ソーラーパネルなどの社会インフラに実装し、都市をカバーする大規模メッシュネットワークの構築が可能。物流管理機器や産業用メーター、街路灯など、IoTやDXに欠かせない遠隔監視、制御用途でユーザーからの引き合いが急増している。 

Voice
ローム モジュール事業本部長 田邉 哲弘 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 当社は、Wi-SUN対応無線通信モジュールでトップシェアを有し、各種Wi-SUN規格の普及促進に注力しています。業界のテクノロジーリーダーとして世界初、業界初の開発を実現してきました。
 受賞製品は、スマートシティーやスマートグリッドなどの大規模な通信網を構築でき、従来は困難だった大規模化、低コスト・通信安定性を実現した革新的な製品です。
 今後、普及が期待される第5世代通信(5G)と共存することで、Wi-SUNがより良い社会の実現に寄与できることを期待しています。

5G通信用LTCCデバイス用ガラス粉末及びグリーンシート

岡本硝子株式会社

ミリ波帯域で低誘電損失を実現

 「5G通信用LTCCデバイス用ガラス粉末及びグリーンシート」は、通信周波数帯域の800メガヘルツの高周波から、第5世代通信(5G)や車載レーダーに使う76ギガヘルツのミリ波までの帯域で低誘電損失を実現する。周波数が10ギガヘルツの場合、誘電損失を0.0015に低減できる。試用提供にはガラスとセラミックスの複合粉末、複合粉末で形成したグリーンシートを用意した。
 電子部品製造工程で電極を印刷したグリーンシートを積層した後に焼成すると、ガラスが軟化流動してリジット基板を形成する。ガラス中に結晶が析出・成長するように設計し、高周波とミリ波による骨格振動を低減して低誘電損失を実現した。析出結晶量が多いと良好な電気特性を得られるが、焼成時の収縮特性の制御が難しくなる。ガラス組成とセラミックスフィラーの設計を最適化し、課題を解決した。

Voice
岡本硝子 代表取締役会長兼社長 岡本 毅 氏

 このたびは栄えある賞を賜り、誠にありがとうございます。
 モノづくりの上流である原料開発段階に力を入れるため、そして、20世紀を有機の時代とすれば、21世紀は耐熱性、耐久性などに優れるガラスなどの無機の時代になると予測し、10年以上前から開発を進めてきました。
 当初は、5G基地局で周波数を選択するフィルターに使用されることを想定し、すでに国内外60社の電子部品メーカーにサンプル提供しています。IoT(モノのインターネット)時代を支える重要な技術である5Gの信頼性向上などに貢献していきます。

小型化と高効率を両立した大型データセンタ向け大容量無停電電源装置

株式会社日立製作所/株式会社日立インダストリアルプロダクツ

従来機比40%減に省スペース化

 日立製作所と日立インダストリアルプロダクツが開発した大容量の無停電電源装置(UPS)「UNIPARA-UP2001i」シリーズは、三相4線式で2000キロボルトアンペアながら、従来機比40%減の省スペース化を実現した。
 冷却構造の最適化と電圧や電流の変動を抑える自社のスイッチング制御技術を組み合わせ、主要部品の小型化と低損失化の両立に成功した。最高効率は97%を達成した。
 停電時でもサーバーへ電力供給を続けてデータを保護するため、デジタル変革(DX)時代における最重要インフラである大規模データセンター(DC)への導入を想定する。スペースが限られる都市部でのDC建設計画も多く、大量のサーバーを設置したい事業者のバックアップ電源など周辺設備の小型化ニーズに応える。

Voice
日立インダストリアルプロダクツ 常務取締役 今井 勇人 氏

 この度は、「電気・電子部品賞」を賜り、誠に光栄に思います。
 今回開発した大容量三相4線式UPS「UNIPARA-UP2001i」は、従来UPSの大容量化において、大電流と高密度実装の相反する条件下で冷却最適化と自社技術により、高効率化と設置面積の最小化を実現しました。本製品は、デジタルトランスフォーメ-ションの加速が見込まれる大規模データセンタなどにおいて、カーボンニュ-トラルを目指した二酸化炭素(CO₂)排出低減を可能にする製品です。
 今後も、優れた自社技術・製品の開発を通じて社会に貢献してまいります。