2008年受賞部品

機械部品賞
超微細加工用マイクロボールエンドミルシリーズ 日進工具

製品プロフィール

半径0.005mm刃形状を追求
小径にこだわり今までにない工具に挑んだ(研究開発チーム)

最小半径0.005ミリメートルのボール状の刃先を持つ「マイクロボールエンドミルシリーズ」は、自由曲面の超微細切削加工を可能にする。シリーズは超硬素材と、超硬より3倍の硬度を持つ立方晶窒化ホウ素(CBN)素材をそろえ、最小ボール半径は超硬製が0.005ミリメートルで、CBN製が0.01ミリメートル。
微細な刃でありながら刃形状を最適化しており、幅広い被削材を高精度加工できる。

開発の狙い

“小径の日進”に自信―。超微細加工用の切削工具を得意とする日進工具はこれまで、刃径0.01ミリメートルのマイクロ工具シリーズで、スクエアエンドミルとドリルを製品化してきた。今回、最小半径0.005ミリメートルのボール状刃先を持つエンドミルを標準品としてラインアップに加えて、超微細切削工具の大まかなシリーズが完成。「穴あけから2次元、3次元まで、あらゆる超微細切削加工が可能になった」と後藤勇二取締役開発部長は胸を張る。
極めて微小な寸法の工具は、超微細金型やコネクターなど部品加工のほか、医療・バイオ機器分野向けなどが期待できる。さらに「これまではレーザー加工やエッチング加工でしかできなかったものが、マイクロエンドミルの登場で切削加工に置き換わる可能性もある」と後藤取締役は強調する。

ブレークスルー

今回標準化に成功したのは、非鉄金属など比較的柔らかい被削材向けの超硬製エンドミルと、高硬度材向けのCBN製エンドミルで、対象物に合わせてそれぞれ最適な刃の形状を設計している。「いかに折れづらく、きれいな加工面を残す刃形状を設計するかが課題だった」と後藤取締役は振り返る。
これまでのマイクロエンドミル開発で蓄積したデータを土台にしながら、約10人でなる開発チームは理想的な刃形状と、実際に製作できる刃形状のすり合わせを行っていった。超硬製エンドミルでは「ボール半径0.01ミリメートル以下を製作するのに壁があった」(後藤取締役)。一度は開発中止も検討したというが、砥石の回転速度や研削油の選定、素材の粒子サイズ、バインダーの含有率などさまざまな条件で試行錯誤しながら、「最後は気合で乗り越えた」(同)。

今後の展開

超微細加工用エンドミルは、これまで世の中になかった工具だけに、市場が明確化しているわけではない。「マイクロ切削加工を世間に広げることが重要」(同)として、今後ユーザーとの情報交換を積極的に行うほか、講演などで製品をPRしていく考えだ。 さらに刃径の小さなエンドミルの製造にも興味を示す。”小径なら当社”というプライドがある。受賞に飽きたらず果敢に挑戦していきたい」(同)と意気込む。