機械部品賞
偏平形中空アクチュエーター 安川電機
製品プロフィール
ロボ関節一体化で容積1/3
最適な機構設計を編み出した技術者陣
サーボモーター、ギア、ブレーキ、エンコーダーを一体化したアクチュエーター。ロボットと共同で構成部品の各部を最適設計した。容積は同社製アクチュエーターと比べて3分の1と大幅な小型化に成功。これによりロボットの関節部をスリム化でき、人と共存して作業が行える環境が実現した。
同アクチュエーター搭載のロボットはさまざまな分野での用途に期待されている。
開発の狙い
安川電機は現在、人に代わるロボットの開発を進めている。実現には①人のような動きをする②ロボットのための専用設備をなくす③人と同等のスペース―などが必要となる。05年には、人の腕と同様な動きを可能にした7軸単腕ロボットと双腕ロボットを開発した。しかし小型化という点に課題を残していた。
偏平形中空アクチュエーターは、小型化実現のために欠かせなかった。ロボットの関節部(動力機構)に埋め込まれているサーボモーター、位置検出器(エンコーダー)、ギア、ブレーキを一体化して大幅な小型化を実現した。
一方で中央の空洞部に配線を通せるようにしたことで、アーム同士や周辺機器との干渉がなくなった。同アクチュエーターの開発でロボットと人が共存して作業が行える次世代産業用ロボットが誕生した。
ブレークスルー
従来、ロボットの関節部はモーターやブレーキが個別に埋め込まれていた。このため大型になり、人の腕のように凸凹が少ないアーム形状を製作するのに無理があった。
同社は各部品の一層の小型・偏平化に取り組むと同時に、機構の一体化という前例のない作業に取りかかった。「従来の機構もムダな空間があったわけではないが、さらなる最適設計を繰り返した」(尾崎秀樹モーションコントロール事業部八幡工場技術部部長)。外注先とも1ミリメートル以下の交渉を続け、最終的には同社従来品比60%の偏平化率、容積比3分の1の製品が完成した。
「より偏平化するために構造そのものを見直した。薄くすることで可動範囲が広がり、人並みの省スペース化が実現できた」(同)自信作だ。
今後の展開
悪戦苦闘の末に完成した偏平中空アクチュエーターは双腕ロボット「MOTOMAN-SDA10」と腕ロボット「同SIA20」に搭載、発売した。しかしいまだに用途が限られている。というのも双腕ロボットを製造ラインで利用するといった概念がまだ市場で希薄だからだ。 まずは自動車製造ラインに据え付けることから始めている。「双腕の特徴は左腕で固定して右手で作業する。つまり治工具がいらない」(尾崎部長)点にある。少子高齢化により労働力の減少が深刻化している。自動化が必要な作業現場へ訴求していく考えだ。