2008年受賞部品

機械部品賞
小径cBNスパイラルボールエンドミル (協和精工)

製品プロフィール

専用研削盤でこだわり実現
微細な刃先形状を作り出すには技能工のスキルと経験が不可欠

 CBN製の微細なボールエンドミル。最小刃径は0.1ミリメートル。切削抵抗を減少する「スパイラル形状」に加え、刃が欠けるのを抑える微小面取りを施すなど、専用研削盤の開発で複雑な刃先形状を実現した。超硬のエンドミルより寿命が5倍以上と耐摩耗性に優れ、工具の長寿命化や生産効率の向上などに寄与する。

開発の狙い

 よい「素材と出会えた」。協和精工の鈴木耕一社長は、立方晶窒化ホウ素(CBN)エンドミルを開発した経緯をこう振り返る。02年に直刃の刃径0.1ミリメートルのCBNエンドミルを開発した。ダイヤモンドの次に硬いCBNの加工は困難で、当時商業ベースに乗せたメーカーはなかった。だが、鈴木社長は工具に半世紀携わってきた経験から「必ず開発できる」と確信していた。
 こうした実績を踏まえ、今回のチャンファ(微小面取り)付きCBNスパイラルボールエンドミルの開発に取り組んだ。市場には超硬のスパイラルボールエンドミルが出ていたが、より硬いCBNであれば超硬工具からの置き換えが可能だ。さらに金型の高硬度材加工は放電加工で行われてきたが、エンドミルの直彫り加工であれば、放電加工よりエネルギー使用量を削減でき時代の要請に合うとにらんだ。

ブレークスルー

 微細で複雑な刃先形状を実現するため市場に出ている研削盤を探したが、条件を満たすものがなかった。そこで専用の研削盤を開発した。硬いCBNを加工するには砥石が重要だ。精度よく加工するのに砥石の材料や仕様を吟味。硬すぎても軟らかくてもダメで、砥石の粒度や径などこれまで蓄積してきたデータや経験をベースに選んだ。また、加工する時の回転力や角度、速度などの要素を組み合わせ、試行錯誤を繰り返し研削盤の開発を進めた。
 ソフトウエアの開発も重視した。技能工が加工する場合は15~16工程を要する。それを研削盤で行うには、加工内容をマニュアル化してソフトウエアに落とし込む必要がある。ソフト事業者と取り組み、微妙なニュアンスをやりとりした。専用研削盤の開発には「技能工の実力と経験が重要」(鈴木社長)だった。

今後の展開

 7月から発売したが「年内の受注は埋まっている」(同)と好調な滑り出し。だが、どんなにいい工具でも市場に広める努力が必要となる。
 このため、会社全体の取り組みとして4月にマーケティング部を設置し、販売力の強化に乗り出している。「モノを開発する発想と同様にマーケットを開発していく」(同)。欧州中心に工具類を海外に売り込む。海外販売比率は現在10%だが、5年後には30%までに引き上げる計画だ。