ものづくり日本会議

2010年受賞部品

モノづくり部品大賞

『電流検出型DNAチップ』

東芝

製品概要

新型インフルエンザなど新しい感染症の高感度検査や、ゲノム情報によるテーラーメイド医療において、遺伝子(DNA)検査への期待が高まっている。それには正確で簡便なDNAの解析技術が必要になるが、従来の海外から導入した蛍光検出方式では、解析精度、検査価格など多くの課題があった。
東芝は新しい原理の検出技術を開発。具体的には遺伝子挿入剤(二重らせん構造に結合する分子量が数百の化合物)とプローブDNAを結合させた電極を使うことで、電気化学的に遺伝子検出が可能であることを見いだした。その結果、電流の大小から目的遺伝子を検出できる「電流検出型DNAチップ」を実用化できた。
このチップにはさまざまなメリットや特徴がある。まず遺伝子挿入剤を使うため、高額な蛍光色素による煩雑な標識工程が不要で、安価で簡単な検査が可能。また反応と信号検出を分離せずに行うため、検査工程の自動化とシステムが小型化できる。DNAチップと同時に検査に必要な試薬類を封入した全自動カセットも開発、専門性がなくても検査が可能になった。
また低コスト化への取り組みにも力を入れている。1チップで多検体の検査ができるようにするタグ配列技術を開発した。さらに電極に結合させるプローブDNAを変更するだけで、さまざまな項目を検査できるように工夫。子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型判別用、実験動物の微生物検査用、炭疽菌などの生物剤検知用を製品化した。
今回の電流検出型DNAチップは、バイオ分野では数少ない日本の独自技術。特にこの技術をベースに共同開発されたHPVタイピング用は、国産では初めて厚生労働省の薬事承認を取得した。今後、テーラーメードやベッドサイド医療を実現する検査技術として、グローバルスタンダードになる潜在力がある。

Voice
東芝社長 佐々木 則夫氏

栄誉ある「 モノづくり部品大賞」をいただきましたこと、誠に光栄に思います。
本技術は、電気信号で遺伝子を検出するという全く新しい原理を採用しており、高い感度と精度を持つ一方、従来の3分の1から10分の1の費用で、簡便に検査が可能などの特徴を持っています。日本発の数少ないバイオ技術であり、東芝方式として国内外から高い評価を得ており、国産初の子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスのタイピング、生物剤検知などのシステムを製品化しています。 当社はエネルギーや半導体に続く新たな事業領域の一つとして、ヘルスケア関連分野の事業拡大に努めており、中核となる技術の一つです。今後、がん・生活習慣病の疾病リスク、薬剤の効用や副作用の遺伝子検診に展開するとともに、食品検査や家畜防疫分野の開発、製品化を進め、DNAチップを通して安心安全社会の実現に貢献していきます。

モノづくり日本会議 共同議長賞

『部品内蔵配線板「EOMIN」』

太陽誘電

製品概要

太陽誘電が開発した部品内蔵配線板「EOMIN」は内部に銅のコアを持ち、掘り下げた部分にコンデンサーなどの受動部品や半導体を埋め込む構造だ。コアの上下にはビルドアッププロセスで配線を形成する。埋め込む部品の端子に銅メッキを施すことで、ビアホールを介してビルドアップ配線層に接続できる。
EOMINは一般的な樹脂製の基板に比べ、銅の特性を最大限に引き出すことで高い放熱性や剛性を持たせることにも成功した。銅コアは伝導ノイズを低減するため、高速動作する中央演算処理装置(CPU)の安定動作にも貢献できる可能性があるという。国内メーカーが業界最高水準の薄型携帯電話に採用を始めており、今後、搭載機種も増える見通しだ。
電子機器を構成する基板の内部に部品を埋め込む手法は、携帯電話の多機能・高性能化と筐体の小型・薄型化の両立を目指すセットメーカーにとって理想的な技術だ。ただ、従来品は信頼性やコスト、埋め込む方法や配線の制約など課題が山積。市場の要求には応え切れていなかった。

Voice
太陽誘電社長 神崎 芳郎氏

このたびは「モノづくり部品大賞」の「モノづくり推進会議 共同議長賞」に選ばれ、たいへん光栄です。
EOMINは銅コアによる薄型化を実現し、耐ノイズ性、剛性、放熱性を併せ持った優れた部品内蔵配線板です。電子部品実装技術の歴史の中で、プリント基板の中に部品を入れるという発想は既に30-40年前からありました。その間さまざまな試みがありながら実現しなかったものです。当社が培ってきた技術力を結集し、その夢をようやく実現することができました。
誰にもできないと思われている先端分野に挑戦し、突き当たった壁を突き抜けていく力が日本企業の強みであり、求められている役割であると考えています。今後このビジネスをさらに育て、エレクトロニクス技術の発展に貢献していきます。

ものづくり生命文明機構 理事長賞

『ARバグバンパー (ARINIXⅡシリーズ)』

竹中工務店/ニックス

製品概要

竹中工務店とニックスが共同開発した「ARバグバンパー(ARINIXⅡシリーズ)」は、アリなど歩いて移動する「歩行性昆虫」の食品工場などへの侵入を食い止めるナイロン樹脂製建材の隔壁。本体に虫が嫌う忌避成分を練り込み、虫の寄り付きを防ぐ。形状を逆U字型にして「虫返し」の機能も持たせ、忌避成分との相乗効果で虫を排除する。企業経営に生物多様性の視点が求められる時代を意識し、殺虫せずに建物と生物の環境を分ける発想で開発した。
ARバグバンパーは忌避成分にペルメトリンを採用した旧製品をベースに、人や環境への安全性が一段と高いエトフェンプロックスに変更して改良した。人と虫の「住み分け」が目的のシンプルな防虫建材で、一般的に行われている薬剤散布による駆除方法と比べ費用も約4分の1程度に抑えられる。
ニックスが保有する技術によって、本体に含有する忌避成分は表面に長期間に渡りにじみ出る仕組み。薬剤効果は屋外で3年と長期持続するため、薬剤散布の駆除に不可欠な運用コストが不要。

Voice
竹中工務店技術研究所長 谷口 元氏

建物は地震や太陽熱、光などさまざまな自然環境の影響を受け、これらは学術的な研究で位置付けられています。ただ、外部から工場などへの昆虫侵入対策は従来、建築の学問領域にありませんでした。しかし、虫対策はユーザー(施主)にとって地震などと同等に厄介なもの。「ARバグバンパー」で、こうした世の中のニーズに応えられて大変うれしく思います。
ARバグバンパーは殺虫しない防虫技術。生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で自然との共生が指摘された一方で「虫の建物侵入は困る」という人の本音があります。自然との共生と防虫ニーズの両立を目指しました。生物多様性保全で虫は増える。殺虫に頼らない技術と建築計画がなければ、ゼネコンとして解決策を示せません。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

『積層ギガスパイラビーズ 「MMZ1005‐Eシリーズ」』

TDK

製品概要

TDKは独自の積層構造技術とフェライト素材技術を用い、「積層ギガスパイラビーズ『MMZ1005‐Eシリーズ』」を開発した。インピーダンス(交流抵抗)を高め、1チップで幅広い周波数帯域のノイズ除去を可能にした。帯域ごとに複数個を必要とする従来のチップビーズに比べ、実装部品の削減や筐体の省スペース化に貢献する。スマートフォンなど高機能携帯電話において、高機能化と小型・薄型化を両立する技術だ。
例えば1.0mm×0.5mmサイズのチップビーズを2個搭載する用途であれば、同サイズのギガスパイラビーズ1個への置き換えが可能だ。コイルを端子電極面と垂直に巻き上げることで浮遊容量を抑制。また従来のチップビーズより巻き数が増えるため、より高い周波数帯域でも高いインピーダンスを発揮する。
携帯電話では地上デジタル放送やFM放送、全地球測位システム(GPS)など多機能化が著しい。1端末で利用する周波数は数十MHz(Mは100万)-数GHz(Gは10億)に拡大しており、筐体を小型・薄型化したい顧客ニーズとの両立が課題になっていた。

Voice
TDK常務執行役員 植村 博之氏

TDKは、原点であるフェライト素材の技術と独自の積層構造技術を生かしたインダクター製品をこれまで数多く開発・生産してきました。
「積層ギガスパイラビーズ『MMZ1005-Eシリーズ』」はその二つの技術を活用し、新開発の素材をベースに新たな積層構造を立案した製品です。ギガヘルツ帯域でのEMC・ノイズ対策という市場ニーズに対応した、業界最高の特性を達成することができました。当社が得意とする材料技術、要素技術、生産技術にかかわる各技術者の粘り強い開発と、製造現場でかかわる技術者の熱意がこの製品を生むことにつながったと考えています。
受賞を励みとし、さらなる技術開発、製品開発を進め、お客さまにご満足いただける製品を提供していきたいと思います。

『高輝度蓄光・蛍光高意匠建材「ルナウェア」』

コドモエナジー(大阪市旭区)

製品概要

「ルナウェア」は400年の伝統を持つ佐賀県・有田焼の上絵付け技術に、蓄光顔料などを組み合わせて意匠性の高い磁器製建材に仕上げた。暗所で緑、青の蓄光が光り、白を含む7色の蛍光を発するタイルやさまざまな形のドロップ片、さらに暗闇の誘導標識といったさまざま製品を提案し実用化している。
1000℃以上で焼成した有田焼(磁器)の上から、厚さ約2mmの蓄光釉薬層などをコーティングし再度焼き上げている。表面はガラス層で覆われているため丈夫で耐摩耗性が高く酸やアルカリにも侵されにくい。無機顔料を使っているので最高800℃の高温に耐え、通常の加水分解性顔料を使った蓄光材と違い、耐水性も高い。暗所で約8時間の発光を持続させる材料配合や製品設計、製造技術の開発には有田焼の有力窯元が協力。販売はインテリア用品などの取り扱い大手である大伍貿易(大阪市天王寺区)が行う。
タイル、誘導標識など建材分野での展開と合わせ、工業分野の品質管理や安全管理といった分野への応用も考えている。

Voice
コドモエナジー社長 岩本 泰典氏

コドモエナジーの“コドモ”は、文字通りの子供。ますます厳しさを増す地球環境をこれ以上壊さず、次代を担う子供を守るための商品づくりを目指して設立しました。大手建材メーカーなどにも賛同してもらいました。省エネルギー関連機器や微生物応用製品の製造、販売、卸などやりたいことはたくさんありますが、今回の蓄光・蛍光磁器製建材も省エネ建材といった点から製品化に取り組みました。もちろん無機材料なので安全。有田焼の窯元さんなどの協力もうまく得られ、蓄光・蛍光という新たな機能と、伝統の焼き物技術のドッキングに成功しました。日本力賞の名に恥じない製品開発ができたと思います。アルファユニットを通じ製造現場との付き合いもあり、今回の技術を建材以外の分野にも広げられたらと思います。

『マイクロ精密位置決めテーブルTM』

日本トムソン

製品概要

位置決めテーブルとして業界最小の断面高さ20mm、幅17mmの大きさに抑えた。超小型ながら位置決め精度は0.0015mm、最高速度は従来比2倍の毎秒150mmを達成した。高精度、高速の要求に応える位置決め機構として、電子部品実装機、測定機器、ロボット、医療機器に採用が見込まれる。
テーブル案内部にトラックレール幅2mmの直動案内機器、送り機構に軸径2mmの精密研削ボールネジを組み込んだ。これにより、滑らかで安定した直線運動と高精度な位置決めを実現。交流小型サーボモーターを組み合わせれば、テーブル最高速度は従来タイプの2倍以上となる毎秒150mmで運転が可能だ。
位置検出センサーをテーブル内部に組み込むためのスペース確保が課題となるが、本部品は超小型センサーを開発し、外径寸法を変えずに内部に四つのセンサーを搭載することに成功した。小型端末に部品を実装する装置は、本部品の使用により設置スペースを大幅に縮小できる。

Voice
日本トムソン社長 山下 皓氏

このたびの賞をいただいたことは大変に光栄であり、大きな励みになると思います。位置決め機構はより高精度、高速、小型化が求められており、こうした要求にこたえる部品として評価され、半導体や電子部品の実装機のほか、医療や計測機器などの分野にも用途が広がるなど、着実に実績を上げています。
当社は直動案内機器で小型サイズに強みを持っており、小型情報端末の普及など世界的なダウンサイジングの流れを見通し、製造装置の小型化に貢献すべく、精度保証と超小型を両立する位置決めテーブルの開発に挑戦しました。今後も市場ニーズを的確にとらえた製品開発にまい進します。