生活関連部品賞
YKK「SOFLEX」(ソフレックス)
YKK
製品概要
世界初の縦方向に伸びるファスナーで、1kgの荷重で縦方向に10-12%伸びる。ファスナーチェーン全体に伸縮性を与えるため、テープ部分やかみ合わせ部分に伸縮素材のポリウレタン糸を使用した。かみ合わせ部分の形状を工夫し、伸縮時にチェーンが外れないようにしている。 スポーツアパレル業界では薄くて柔らかい生地の採用が増えているが、従来の硬いファスナーでは機能性が十分に発揮できなかった。「ソフレックス」はストレッチ生地と一体化した伸縮が可能で、着用感や着脱性が向上した。また生地との縫製時にファスナーが伸縮することで縫いシワが減り、仕上がりもきれいになった。水着やスポーツ下着、自転車用ウエアなどでの採用が進んでいる。今後は介護福祉分野などへの採用も期待される。
Voice
YKKファスニング事業本部商品開発センターマーケットイン開発室GA商品開発グループ商品開発チーム長 中山 栄治氏
受賞は大変光栄です。縦方向に伸びるファスナーは世界的に類を見ない製品で、企画段階から量産化まで数多くの壁にぶつかりました。そのたびに製造現場やファスナー技術に詳しいベテラン社員、共同開発先のスポーツ衣類メーカーなどと協力し課題を乗り越えました。苦労が多かった分、優秀な製品と認められた喜びは大きいです。
「ソフレックス」は若手技術者チームが中心となり開発しました。今回の経験は今後の新製品開発に向けた大きな糧になるはずです。ソフレックスの量産ではまだまだ課題は多いですが、受賞を励みに量産コスト削減をさらに進め、全世界に製品を普及させたいと思います。
後施工プレート定着型せん断補強鉄筋(Post-Head-bar)
大成建設/成和リニューアルワークス(東京都新宿区)
製品概要
後施工プレート定着型せん断補強鉄筋「Post-Head-bar(ポストヘッドバー)」は、トンネルなど既存のコンクリート構造物が地震で受けるせん断被害の耐震補修を低コストで実現する補強建材。対策が難しかった土中のトンネルなどを、内側の施工だけで実現する。外側施工のため行う地盤掘削が必要ないため、工事コストを約36%減らせる。
せん断は地震により平行方向の力がコンクリートに複数加わり起こる。補強は構造物外側の施工が必要で、地盤で覆われたトンネルなどは工事が難しかった。ポストヘッドバーは新築用補強鉄筋がベース。バー先端に鋼製プレートを摩擦圧接で一体化。これにより定着性が高まり耐力が増す。内側からコンクリートに一定間隔で穴をあけバーを挿入。すき間に充填材を注入し仕上げる。
Voice
大成建設執行役員技術センター長 辻田 修氏
その技術が良いと認められることの証明は、適用物件が多いことが一つ。もうひとつは第三者の評価です。「ポストヘッドバー」による耐震補強の適用物件が増える中で受賞できたことにより、この技術の裏付けや社会的な認知度が高まることを大変期待しています。
阪神・淡路大震災以降、せん断対策が重要視されて地上の構造物は耐震補強が進んでいますが、地中の構造物は(補強の)方法論がありませんでした。高度成長期に建設したインフラは老朽化が進んでいます。ポストヘッドバーによる耐震補強に限らず、例えば高速道路の床板などを早く安く上手に補強する技術が求められています。
IHジャー炊飯器用内釜
三菱電機ホーム機器(埼玉県深谷市)
製品概要
「極上のおいしさ」を求めたジャー炊飯器の内釜は炭素材で構成。従来、ステンレスやアルミニウムでは加熱コイルのない内釜中心部や、加熱コイルから離れた釜側面からの加熱が弱いなどの課題があった。これらを克服するため、固有電気抵抗が大きく、熱伝導性に優れた炭素材に着目したのがポイントだ。 粉体状の炭素材を円柱形状のブロックに圧縮成形し、3000℃で焼成する。これを切削加工で荒削り、本削り工程を経て内釜形状にし、最後は表面をコーティングして完成する。 炭素材から削り出すため、釜底外面を平たんに、釜底内面を中央に向けて厚くなるテーパ状の凸形状にし、釜底中央部にも十分な加熱を導く「激沸騰」を実現した。高級ジャー炊飯器市場でこうした特徴が大きな差別化につながっている。
Voice
三菱電機ホーム機器家電製品技術部長 長田 正史氏
開発に携わったメンバーと共に受賞をうれしく思います。「おいしい炊飯器をつくりたい」との思いで新技術や釜の新素材を探している時に「炭(カーボン)」という素材に出会いました。炭素材はIH(電磁誘導加熱)と相性が良く、プロトタイプの炭釜で水を沸かすと炭釜全体が均一に加熱し、水は激しく沸騰します。その時「炭素材で釜を作れば、おいしいごはんが炊ける」と確信しました。
現在は、炭釜の素材と蒸気レスという技術を合わせた“連続激沸騰”ができる、蒸気レスIH「本炭釜」の販売が好調です。これからも「本炭釜」のような、国内の家電製品には珍しい“ロングセラー”商品の開発に努力していきます。