自動車部品賞
電池パックモジュール内蔵コンソールボックス
小島プレス工業
製品概要
ハイブリッド車(HV)用リチウムイオン電池を内蔵したコンソールボックス。これにより3列シート車でも十分な室内空間を確保することができた。
従来、ニッケル水素電池では、車両全幅によって運転席と助手席との間に十分な空間がない場合、リアシートの下や車両後方に設置されることが多かった。そのため3列シート車への乗車が不便になったり、頭上回りや荷物室の空間が減少したりする課題があった。
今回のコンソールボックスは、電池自体が小型化するリチウムイオン電池が、3列シート車に採用されるのに合わせて開発に取り組んだ。構造を工夫し車両全幅を変更することなくコンソールボックス内に納めることに成功した。
具体的には、電池スタックの冷却通路の形状を工夫し、冷却性能を維持しつつ電池スタックの全長を21.6mm短縮した。また電池パックの側面の一部のみを特殊ブラケットで補強する構造とし、電池パックのサイドパネルの板厚を厚くすることなく衝撃吸収性能を確保した。
Voice
小島プレス工業 取締役社長 小島 洋一郎 氏
このたびは、自動車部品賞を受賞することができ心から感謝申し上げます。今回の開発は、ハイブリッド車用リチウムイオン電池の衝撃保護と防水を目的として、コンソールボックス内の限られたスペース内で性能と居住空間を確保するという困難な課題への挑戦でした。実現のために部品間のモジュール設計を実施しました。
その結果、車両の全幅を変更することなく、電池パックを小型化し、質量の大幅な低減とコンソールの使いやすさを向上でき、エコカーにふさわしい製品を開発することができました。
今回の受賞を励みに、今後もお客さまや製造現場に喜ばれるモノづくりを継続していきます。
電気自動車用LEDヘッドランプ
市光工業
製品概要
市光工業の「電気自動車用LEDヘッドランプ」は、LED光源を使い、従来のハロゲン電球に比べ50%以下に消費電力を減らし、世界最高の省エネ性能を実現した。日産自動車の電気自動車(EV)「日産リーフ」に採用され、日本や北米、欧州で販売。今後は、従来の光源をLEDに置き換えたヘッドランプの採用拡大を目指す。
使用頻度の高い下向き前照灯(ロービーム)の光源にLEDを採用。従来と同等の明るさを出すには、最低3個必要とされてきたLED光源を2個に減らし、高い視認性を確保。ランプ1個当たりのロービームの消費電力は23kwを実現した。
さらに、2枚の反射板を組み合わせて光を制御する独自の光学ユニットを開発し、これまでLEDランプに必ず組み込まれていた凸レンズが不要とした。これにより、デザイン性を高める空間確保とともに、部品点数を削減による軽量化を図った。
同社では、伊勢原製作所(神奈川県伊勢原市)に年50万個の生産能力を持つ専用ラインを新設。今後は、ハイビームとロービームのLEDを一体化したユニット製品や、LEDを一つに絞り込んだヘッドランプの開発を進める方針。
Voice
市光工業 執行役員 開発本部長 中西 静雄 氏
今回の受賞を大変光栄に思います。LEDという新しい光源に対し、社内技術を結集して開発した成果が評価されたところに、受賞の意義があると考えています。
解決すべき課題は多くありましたが、世界最高の”省電力”ヘッドランプの達成は、開発部門、生産技術部門、購買部門など社内のすべての部署の協力の結果です。従来は規格化された電球を使用していたため、消費電力は性能項目ではありませんでしたが、LED光源により省電力という新たな性能項目が発生しました。
今後は社会のさらなる省電力化ニーズに対応するため、この受賞を弾みとして開発を推進し、社会に貢献したいと考えています。
大型商用車用高性能コンパクトな排出ガス浄化システム
日野自動車
製品概要
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少なく環境に優しい。一方で窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)を含む排気ガスをいかに抑えるかが課題となっている。
これに対し、日野自動車はPMを低減するDPRに、NOxを効率よく除去する尿素SCR(選択的触媒還元法)を組み合わせた「大型商用車用高性能コンパクトな排気ガス浄化システム」を開発した。
排気ガスの流れを解析し、パンチングパイプなどの機構を最適化してコンパクトにしたのが特徴。商用車の設計では、積載スペースを確保し、輸送効率を高めることが重要であり、コンパクト化の意義は大きい。
また、浄化システムとエンジンの協調を図るための制御にも先端技術も盛り込んだ。PM、NOxの制御のみならず、フィルターに堆積した媒の再生、各種センサーを使用してのアンモニア排出といった部分の制御技術が研究開発の成果だ。
同社は、この排気ガス浄化システムを装着した大型商用車「プロフィア」は、2010年に発売し、12年4月末までに2万台を販売した。
Voice
日野自動車 専務取締役 遠藤 真 氏
今回の受賞を大変うれしく思っています。当社は、常に環境技術のフロントランナーとして、地球に優しいクルマ作りを進めてきました。
今回、自動車部品賞を受賞した「排出ガス浄化システム」は、商用車用として求められるコンパクト化と高性能化を両立するため、従来にはない独創的なアイデアを多数盛込み、きめ細やかな制御技術により高い浄化性能を常に引き出すことを可能にしました。
今後も環境技術に一層の磨きをかけ、地球環境に優しく、お客さまに喜んでもらえる商用車を提供していきます。
燃料向上2槽式オイルパン
太平洋工業
製品概要
エンジンオイルは、低温だと粘性が高く、低燃費を妨げる。量を減らし、エンジン始動後の温度上昇を早めたい。一方、少量では劣化しやすく、オイル切れが心配だ。「燃費向上2槽式オイルパン」は、このジレンマを解決。トヨタ自動車の新型車「アベンシス」に採用され、0.78%の燃費改善に貢献した。
エンジンオイルを貯めるオイルパンを内外2槽に分けた。内槽のオイルのみエンジンに供給する。外槽は内槽を器のように包み、上部の通油口で内槽とつながる。エンジン始動後、内槽からオイルがエンジンへ送られると通油口の高さまでオイルが外槽から補充される。停止後エンジンから内槽にオイルが戻ると余剰分が外槽に流出する。内外槽のオイルがエンジンの始動・停止ごとに入れ替わり劣化を防ぐ。
外槽のオイルを抜くと内槽底部の浮き栓が開く仕組みでオイル交換も容易。弁やヒーターなどの動力・熱源なしで燃費を向上した点が評価され、共同開発相手のトヨタ自動車から2011年度の技術開発賞も受賞した。
Voice
太平洋工業 代表取締役社長 小川 信也 氏
燃費を向上させるオイルパンの開発には、10年かかりました。開発過程では、オイルの温度上昇を早めるため、オイル流量を電磁弁で調整したり、サーモスタットで温めたりというアイデアもありました。しかし、いずれも動力や熱源が必要でした。「もっと簡潔なものを」と開発陣を叱咤激励しました。試行錯誤の末、2008年に2槽式のアイデアが生まれました。
開発の成功は、トヨタ自動車と良いコミュニケーションがとれたことも大きいです。生産シェアだけでなく、シンプルな構造で重要課題の燃費向上に貢献でき、名実ともにオイルパンメーカーとしての自信が持てました。他車種にも採用されるよう、さらに頑張りたいと思います。