2012年受賞部品

環境関連部品賞

カーボン電極 CNT-V

立山科学工業

製品概要

立山科学工業は、次世代太陽電池の一つである色素増感太陽電池や燃料電池などの蓄電池デバイス用電極、面状発熱体や配線などの電気伝導体として使われる「カーボン電極 CNT-V」を開発した。高価な白金電極と同等の性能を持ち、代替が可能になる。
伝導率は、市販の伝導ペーストに比べ約10倍の性能を持つ。価格は白金電極の約100分の1に低減できるとともに、白金蒸着という特殊加工も必要せず、印刷や塗布で電極が作成できるため、製造コストも大幅に削減できる。色素増感太陽電池の場合、それ自体の価格が約半分に抑えられる。
同製品は、カーボンナノチューブと結合材のバインダーを混ぜ合わせた。独自に製造したセルロース系バインダーを使用することで、高い導電性と多孔性を実現。電解液の浸透性や保液性も確保でき、白金同様に電極の腐食も防ぐ。
色素増感太陽電池は、朝夕や室内の弱い光でも発電し、発電力は照度100-300ルクスで、シリコン系太陽電池を上回る。今後は、導電性ペーストや二次電池市場などへの応用を図る。

Voice
立山科学工業 取締役 技術本部長 綿貫 摂 氏

このたびは、栄えある賞を授与いただき、開発に携わったメンバーと共に喜んでいます。
当社は、約10年前からナノテクノロジーを手掛け、今回受賞した「カーボン電極 CNT-V」は、その成果の一つです。使用しているバインダーは有害物質の調査を行い、基準をクリアしています。また、溶媒も水を利用して環境に配慮しています。
今回の受賞を励みに、今後さらに技術開発力に磨きをかける所存です。再生可能エネルギーの一つである太陽光発電の蓄電システムだけでなく、エネルギー・環境分野で総合的なシステムとして、さまざまな事業化を目指していきたいと思っています。

二輪車用インジェクター KN-7

ケーヒン

製品概要

燃料噴射用のインジェクターは、電子制御燃料噴射システムの中で、燃料と空気の混合割合が最適になるように噴射することで、排ガスの浄化効率を高める重要な役割を担う。ケーヒンの「二輪車用インジェクターKN-7」は、これが最も進化したものだ。
先端形状を改良した自社開発の工具で、超精密プレス加工することにより、インジェクターの性能を左右する燃料噴射孔の加工バラツキを低減。噴射した燃料の流量バラツキを従来の半分に抑えることで、空気と燃料を高精度に混合することが可能となり、燃費向上や低公害化に貢献できる。長さは同22%減、重さは同40%減で、世界最小・最軽量を実現。工具の使用期間も約1.5倍に延び、軽量化や使用資源の削減でも環境に配慮した。
KN-7搭載の燃料噴射システムは、世界シェア約12%(2011年)。排ガス規制や燃費向上ニーズを背景に、二輪車はキャブレターから燃料噴射システムへ移行が進むと見込まれる。これに伴い、KN-7搭載システムは国内外のメーカーでも拡大が期待される。

Voice
ケーヒン 執行役員 大町 信一 氏

燃料噴射用インジェクターは、エンジン出力性能はもちろんのこと、環境性能も大きく左右する部品の一つです。その性能を高めるためには、性能寄与度の高い構成部品を社内生産することで、ノウハウを蓄積することが重要と考えます。また、燃料噴射孔などの重要部位加工ツールは、自社開発することを基本方針としており、その結果、外部メーカー依存では難しかった高精度加工が実現できました。
この度の受賞は、携わった者にとって大変喜ばしいと同時に大きな励ましとなりました。これからも益々環境に貢献できるモノづくりを続けてまいります。

高効率・低振動ヘリウム循環装置

新領域技術研究所

製品概要

新領域技術研究所は、東京大学発のベンチャー企業。戦略物質ヘリウムを完全回収する「高効率・低振動ヘリウム循環装置」は、世界的に利用量が増え、枯渇が危惧されるヘリウムガスの再液化と循環をする。
ヘリウムガスは、脳機能の変化を読むために脳が発する微弱な磁場を測る「脳磁計」の冷却などに用いる。ヘリウムの臨界温度は-267℃で、この温度以下にならないと液化しない。液化ヘリウムの流路に空気が入ると固化してガスが流れなくなったり、絶えず蒸発したりする危険性にさらされる。
装置は、閉塞物をこし取る精製器や流体の圧力変化で閉塞を感知するソフトを開発し、流体経路には7重のトランスファーチューブを採用。チューブで脳磁計と装置を離して、装置の振動を伝えずに、正確な磁場の測定に寄与した。再利用を促進し、ガスの利用量で左右されることが多かった脳磁計の稼働コストの低減に貢献する。
すでに昨年、名古屋大学医学部に初号機を納入。他の大学病院や研究機関からの引き合いも相次いでいるという。

Voice
新領域技術研究所 会長 武田 常広 氏

「高効率・低振動ヘリウム循環装置」は、東大の研究室で十数年の期間を費やして開発しました。大学での研究成果が市場に出るのは大変困難なのが実情です。装置が他の大学や研究機関に受け入れるのは非常に感慨深く、このたびの受賞で装置への自信をより深めることができました。
超伝導用の素材として、ヘリウムガスは世界的に使用量が増えてきています。日本は、使うヘリウムの全量を輸入していますが、輸出国の環境戦略などで輸入量の先々の減少が予想されます。
受賞を機に、ヘリウムを用いる研究現場への循環装置の普及を加速させます。装置が研究活動の継続に貢献できれば、開発者として幸せです。