ものづくり日本会議

2013年受賞部品

モノづくり部品大賞

消せるLoopsトナーと低温定着器ユニット』

東芝テック

製品概要

東芝テックの「消せるLoopsトナーと低温定着器ユニット」は、コピーした印字文字の消色と用紙の再利用が可能かどうかの分別と、書類データを消去する前の電子化を同時に行う世界初の複合機システム。紙を5回再利用できることで用紙使用量と紙を製造する際に出る二酸化炭素(CO2)排出量、水の使用量の削減に貢献する、地球環境配慮のエコ・プリンティングシステムだ。
同社はまず、用紙を製造する時のCO2排出量や水資源の使用量にも着目し、ライフサイクルアセスメント(LCA)を事前に算出。複合機を製造するエネルギーや年間平均27万枚印字する稼働エネルギーなどの合計分よりも、用紙を製造するエネルギーのほうが、CO2排出換算では4倍も多いことが分かった。
そこで、消色後の用紙を5回再利用することで、紙を製造する際に使う水資源の削減やCO2排出量も大幅に削減できる同システムの開発に着手。消色速度は1分間に30枚、コピー速度も同30枚を実現する製品開発を進めた。その結果、用紙の購入費や廃棄費を約8割削減できる経済性をもつ同システムを実現した。
瞬時に印字を消すトナーの開発は、消色・発色ができる特殊な色材「ロイコ染料」を活用。すでに60℃の摩擦熱を加えると字が消せるボールペン「フリクションボール」を発売済みのパイロットコーポレーション、インクを開発生産するパイロットインキの協力を得て共同開発した。
消色する温度をより高温にするため、直径10μm(μは100万分の1)のマイクロカプセル色材の開発とトナーの色を消さずに用紙に定着できるよう、トナーでは低温でも定着可能な樹脂や構造の開発に苦労した。定着ユニットは、温度の低い熱を長時間かけることができる構造を新たに開発し、熱を繰り返しかけても用紙が痛まないようにする定着機の開発に工夫を凝らした。
消色分別機を複合機本体と分離させたことも特徴だ。消色分別機を会議室に設置しておけば、会議後の退室時に装置へ使用した文書を投入すれば、フリクションボールで書き込んだ文字も含めて電子化・保存、消色する。自分の席に戻るころには、データは各個人あてにパソコンやタブレット端末などのOA機器に送信されており、手ぶらで会議室を出て行けるのでとても便利だ。
現在、印字は青色(ブルー)を使用し、普通の黒色の印字と分別しやすく、リユースできる紙かどうか一目でわかるようになっている。今後は採用顧客の声を聞きながら黒色で印字できるよう技術工夫も進める。同システムの登場は、オフィスでの紙の使い方として紙は使い捨ての文化からリユースする文化に進むきっかけになりそうだ。

Voice
東芝テック 取締役社長 鈴木 護 氏

このたびは、栄えある「モノづくり部品大賞」をいただきまして、誠に光栄に存じます。
当社が「消せるLoopsトナーと低温定着器ユニット」を開発するにあたり着目したことは、オフィスにおける紙の有効活用です。紙は軽く読みやすいため情報の媒体としては非常に優れていますが、大量に印刷された紙は、オフィスで滞留し、情報の共有や活用を妨げる要因となっています。一方、紙の節約は紙の製造や廃棄までの工程で消費する大きなエネルギーの節約につながります。今回開発しました「消せるLoopsトナーと低温定着器」を複合機システムに組み込むことで、オフィスの業務効率を改善しながら紙を再利用し環境負荷の低減を図ることを実現しました。
モノづくりをする上でお客さまの課題解決は、当社にとって最大のテーマです。今回の受賞を励みとして、今後も様々な商品やサービスの提供を通じ、環境負荷の低減やお客さまの効率改善に取り組み、持続可能な未来の実現に向けて尽力してまいります。

モノづくり日本会議 共同議長賞

『ADB(配光可変ヘッドランプ)』

小糸製作所

製品概要

小糸製作所は、対向車や前走車の位置に応じ、まぶしくないようにヘッドランプのハイビームの配光パターンを自動で制御するランプシステム「ADB(Adaptive Driving Beam=配光可変ヘッドランプ)」を開発した。運転中の情報の多くは視覚に基づいており、視覚情報が制限される夜間は、交通事故が多発している。ADBの導入で歩行者や道路標識、遠方の道路形状などが見やすくなり、安全運転に貢献する。
ADBは、車載カメラやECU( 電子制御装置)、ヘッドランプで構成。
ハイビームで走行中に対向車や前走車が出てきた場合、車載カメラで前方車両の位置を検知する。ECUで遮光すべき範囲と配光パターンを判断し、前方車両が位置する部分の光は遮り、その他の部分はハイビームを照射。前方車両にまぶしさを与えることなく、運転手にはハイビーム走行に近い視界を提供する。
同社は、2002年に開発を本格化し、10年に国土交通省からADB搭載試験車の認定を取得。延べ4万kmに及ぶ走行評価を行い、ランプの制御システムを確立した。11年の法規改正によりADBが許可され、12年にトヨタ自動車のレクサスブランド「LS」などに採用された。今後は小型・軽自動車への導入拡大を目指す。
また、ランプの光を制御する「2枚可動シェード機構」を独自開発し、5種類の配光パターンを実現。ECUで判断した情報を連続して表現し、実質的に無数の配光を演出する。新開発の発光ダイオード(LED)を採用することなどにより消費電力を同25%減らし、車の燃費向上にも寄与する。

Voice
小糸製作所 代表取締役副社長 横矢 雄二 氏

今回の「モノづくり日本会議 共同議長賞」受賞、大変光栄であります。常にお客さまの立場で考え、ご満足いただける製品をいち早く提供するという基本姿勢をご評価していただいた結果だと考えております。
ADBは、配光パターンを自動制御することにより、前方の車両にまぶしさを与えることなく、ハイビームと同等の視界を提供する先進照明システムで、歩行者や道路標識を見やすくすることにより交通事故の低減を図るものであります。光源からランプシステム制御までを一貫して開発、生産する当社の技術力を結集して開発してまいりました。
今回の受賞を励みに、今後も企業メッセージ「安全を光に託して」のもと、お客さまの安全を守る製品の開発に取り組んでいきます。

ものづくり生命文明機構 理事長賞

『AIDR 3D』

東芝メディカルシステムズ

製品概要

東芝メディカルシステムズの「AIDR 3D」は、コンピューター断層撮影装置(CT)に搭載する画像再構成技術で、CT検査時における患者の被ばく量を従来に比べ最大75%低減できるのが特徴だ。医療の現場ではX線CT検査時の被ばくが大きな課題になっている。CTは、早期発見・診断につながる医療機器として世界中に普及し、その使用頻度も高い。低侵襲化技術に対するニーズはグローバルで高まっており、同社は「AIDR 3D」を同社製の4列から320列マルチスライスCTまで全ラインアップに標準搭載している。
CT検査は、X線量を単純に減らすだけでは画像上にノイズ成分が増え、診断に使える画像が得られなくなる。「AIDR 3D」は、逐次近似画像再構成の原理を応用。X線撮影後に画像を再構成するプロセスの中で統計学的ノイズモデル、スキャナーモデル、アナトミカルモデルを活用し、画像のノイズ成分を抽出して繰り返し除去する。これにより撮影時のX線量を減らしても「AIDR 3D」による画像処理を行うことで、従来と同様の画像を得ることができる。使用するX線出力の低減によって撮影時の消費電力を削減できる効果もある。画像再構成にかかる時間は従来とほとんど変わらない。心電同期撮影や動態撮影にも適用可能で、日常のCT検査において医療現場に負荷を与えることなく利用できる。
同社は、CTの国内トップメーカーで、国内シェア50%超と過半数を握る。「AIDR 3D」を標準搭載した効果で世界市場でもCT販売が拡大しており、グローバルシェア30%超と世界首位を目指している。
これからも高性能かつ、患者さんにもやさしい医療機器の提供を目指してまいりたいと存じます。

Voice
東芝メディカルシステムズ 代表取締役社長 綱川 智 氏

このたびは栄誉ある「ものづくり生命文明機構 理事長賞」をいただき、関係者一同大変光栄に感じております。
受賞したコンピューター断層撮影装置(CT)の被ばく低減技術「AIDR 3D」により、最大で被ばくを75%削減することが可能となりました。国内の医療被ばくを半減させたいとの強い思いから、すべてのCTに最新被ばく低減技術を標準搭載することとし、2012年中には7機種すべてのCTへの搭載を完了しました。医療被ばくへの関心が高まる昨今、多くのお客様に評価され、お陰様で2013年11月には、CTの生産累計3万台を達成しました。
これからも高性能かつ、患者さんにもやさしい医療機器の提供を目指してまいりたいと存じます。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

『バイオマスナノファイバー「BiNFi-s」』

スギノマシン

製品概要

スギノマシンの「バイオマスナノファイバー『BiNFi-s(ビンフィス)』」は、セルロースなどを原料とした直径が約20nm(nは10億分の1)、長さは約2000nmの超極細繊維である。独自の超高圧ウオータージェット技術で加工した。水に分散したバイオマスを超高圧で噴射して生産する。
繊維の種類は、木材パルプからとれるセルロースやカニの甲羅などから得られるキチン、キトサンの3種類ある。原料と水だけで加工するため、薬品やボールミルなどの製造法に比べ環境負荷が低い。連続して大量に生産できる。
セルロースは、水に不溶性のため水に分散させるとすぐに沈殿するが、ビンフィスは均一に分散し高粘性のスラリー状態を保つ。1年以上経過しても分散状態や粘度は維持される。濃度を上げると固形物に近い状態を示すが、ナノファイバー化により比表面積が増大したセルロース表面の水酸基と水分子が水素結合することでネットワークを形成し安定化するためだ。キチンやキトサンのナノファイバーでも同様のことがみられる。
特徴が多くあり、使用される分野も多岐にわたる。化学品業界では高強度・低熱膨張・透明性・ガスバリアー性などによりフィラーや透明材料基板への応用を検討、目的や用途でグレードや濃度を選択できる。大きな比表面積のため酵素の加水分解を高効率化ものぞめる。分散安定性や保水性向上、ゼロカロリーなどの特性で食品の機能性添加剤の機能が見込める。その他、抗菌・消臭・保水性を生かし化粧品業界での活用、生体適合性や製膜性などで医薬品業界への展開も可能となる。

Voice
スギノマシン 執行役員 新規事業開発本部長 杉野 岳 氏

今回、新たに開発した「バイオマスナノファイバー『BiNFi-s』の「日本力(にっぽんぶらんど)賞」受賞を大変うれしく思っています。開発担当者たちのモチベーション向上につながります。
当初から性能には自信がありました。セルロースやキチン、キトサンという自然界に数多くあっても、これまで使われることが少なかった材料と水だけからなっているところに意義があります。それらを当社独自の超高圧ウオータージェット技術で加工しました。材料や加工方法とも環境にやさしく、時代に合った製品です。用途としては、化学業界や食品・化粧品業界、医薬品業界など裾野は非常に広く、さらにもっと多くの分野で使用いただけるものと確信しています。
今後の展開に責任を重く受け止め、量産化を含めてさらに研究を進めていく考えです。

『パラレルリンク型高速角度制御装置』

NTN

製品概要

NTNの「パラレルリンク型高速角度制御装置」は、小型で広い可動角度範囲を備えた、高速・高精度な2自由度の角度位置決め装置である。2つの球面リンクを組み合わせた独特のパラレルリンク構造で、小型で広い可動角度範囲を確保するとともに、新開発の駆動機構を用いて3つの静止側アーム部の角度を制御することで、高速な位置決め動作を可能にした。その際、3つのアーム部を軽微に相互干渉させて予圧を加える制御手法により、駆動機構のバックラッシュを打ち消し、可動部先端の繰り返し位置決め精度を±0.064°以下(±0.05mm以下に相当)まで向上させた。
本製品の専用ティーチングコンソールは、生産ラインへの導入を想定し、作業平面上のXY座標値を指定することで、指令角度を設定できるため、ティーチング入力作業が容易である。
本装置のエンドエフェクターに非接触塗布が可能なディスペンサーを取り付けてグリース塗布装置とした場合、従来方式に比べ高速塗布(1秒あたり約10点)が可能で、かつ斜め方向からの塗布により、複雑な形状にも対応できる。また、グリース塗布量を管理できるためグリース消費量の低減を図ることができ、量産部品用の生産設備に適した特長を持つ。
エンドエフェクターや他のアクチュエーターとの組み合わせによって、産業分野だけでなく医療・福祉分野、生活分野(サービス、エンターテインメント)などさまざまな用途へ展開し、日本の得意分野である自動化・ロボット化の競争力強化に貢献していく。

Voice
NTN 常務執行役員 萩本 幸好 氏

このたびは「日本力(にっぽんぶらんど)賞」という栄誉ある賞を賜り誠に光栄に存じます。
「パラレルリンク型高速角度制御装置」に採用した独特なリンク構造は、もともと、最大折れ角90°の広作動角が可能な自動車用等速ジョイント向けに検討していた構造ですが、車両以外への適用を目指し、改良を続けてきました。回転対偶部に転がり軸受を使用したパラレルリンク構造により回転2自由度のスムーズな動きと高速動作を実現します。
この高速性と優れた操作性が評価され、自動車部品の製造ラインなど、タクトタイム短縮と高い信頼性が求められる用途に利用されています。今後も新たな用途を提案し、積極的に市場展開してまいります。
今回の受賞を励みに、お客さまにご満足いただける商品の提供にまい進し、日本のモノづくりに貢献してまいりたいと存じます。

10周年記念賞

『シェルターバッグ』

エコホールディングス

製品概要

 エコホールディングスの「シェルターバッグ」は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故によって飛散した放射能物質の除去作業用に開発した除染廃棄物専用のフレキシブルなコンテナだ。除染廃棄物の運搬で気をつけなければならないのは、運ぶ時や保管中に収納した汚染物質を漏えいなどで2次汚染の拡大を防ぐこと。そのために、収納物には放射能物質を含む土壌やがれき、水分などが漏れ出さないことが求められる。そのうえで、紫外線に長時間さらされることや引き揚げ作業などで強度劣化を起こさない耐久性が必要となる。
 開発した「シェルターバッグ」は、内圧調整バルブを備える。廃棄物には水分を含んだ草や有機物が収納容器内で腐敗すると、メタンガスなどの発生を誘発する。「シェルターバッグ」は、バルブがガスを外部に放出するための役目を果たし、バッグが破裂する危険性がほとんどないという。
 ガス放出ができる一方で、放射性物資が飛散しないように気を配った。内圧調整バルブには、セシウム吸着フィルターを付けた。バッグ内で発生したガスは、すべてフィルターを通るため、放射性物質の外部飛散は大幅回避を実現する。
 こうした汚染廃棄物専用となる収納バッグを開発したのも、被災地での状況を何度も目で確かめて、把握したからに他ならない。既存のバッグなどでは開口部はしばりづらいために開き、袋自体も強度不足で破れているところもあったからだ。
 「シェルターバッグ」は、1t用の大型と、山の斜面など持ち運びが困難な場所でも取り扱いが容易な20kgのキャリー型をそろえている。除染での幅広い活用を促進する。

Voice
エコホールディングス 代表取締役 藤林 久士 氏

 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故による放射能物質の除染が進んでいないのが現状です。しかも除染作業は非常に難しく手間がかかります。農業ハウスに太陽光発電を設置して作物と電気のハイブリッド化を提案していた福島県の農家を訪ねた際、目の当たりにしたのは農家の方が風評被害を避けるためにシイタケの菌床を入れ替えている作業でした。
 このようなことから何とか農家を含めた被災地でのお役に立ちたいと、劣化や化学変化に耐え、ガスの充満による袋の破裂を防ぐ収納袋を開発できないかと思いました。除染作業が困難な現場でも、民間レベルで身近な汚染物質の収納として簡易に使用できるシェルターバッグはキャリー型もそろえ2種類あり、2次的被害を未然に防ぐ対策製品だと考えております。

『胎児シャント』

八光

製品概要

 八光が開発した「胎児シャント」は、胎児の胸腔に管を通して、たまった水を母親の羊水腔に出す医療機器だ。発売を望む医師らの熱い要望に応えて開発した。胎児治療専用の医療機器は、世界で初めてという。
 「胎児シャント」は、胎児の胸腔と羊水腔の間に留置するため、胸水を持続的に排出できる。イントロデューサ針を胎児胸腔まで刺し、デリバリーシステムを使ってシャントチューブの両端が胎児胸腔と羊水腔に入るように留置する仕組みだ。
 従来は黄疸の治療などに使う胆管用のステントチューブが使われていた。ところが薬事法などの改正により、目的外の胎児治療には使えなくなった。だが、胎児治療を専門とする医師や行政などから、製品供給を継続してほしい、胎児治療用として薬事法の承認を取得してほしい、という強い要望が寄せられ、承認に向けて取り組んだ。
 胆管用ステントは、管が外れないように両端がコイル状だったが、胎児シャントチューブは、バスケット鉗子と呼ばれる医療機器の先端と同じような「バスケット形状」にした。チューブの長さも留置スペースに合わせて50mm、60mm、70mmの3種類をそろえた。
 薬事法承認に向けた作業にも尽力した。国内で年間約80件程度という少ない症例の中で、いかに安全性と有効性を評価するデータを集めるかに苦心したという。
 2010年には希少疾病用医療機器の指定を受け、11年12月に薬事法の承認を取得。12年6月に保険適用され、同年8月に販売を始めた。

Voice
八光 代表取締役社長 丸山 勝 氏

 当社の開発した「胎児シャント」が「10周年記念賞」という名誉ある賞をいただき、大変光栄に思っております。
 「胎児シャント」は、胎児胸腔と母体羊水腔をシャントチューブでつなぎ、胎児胸水を母体羊水腔へ排出する医療機器です。胎児治療の必要性を訴える医療機関や行政の方々の熱意に応えるために開発しました。
 今回の製品の開発を医師の先生方に喜んでいただき、行政からも感謝され、お褒めの言葉もいただきました。大変うれしく思っています。受賞を通じて「われらは社会のためにあり」という当社の社訓を実行に移せたことを社員一同喜んでおります。
 今後も「二番煎じ、三番煎じはしない」という基本姿勢を守りながら、医療の最先端に近いところで勝負をしていきたいと考えております。