2013年受賞部品

健康・医療機器分野

極最小型白金抵抗素子「NES-OV45」

ネツシン

製品概要

ネツシンの「極最小型白金抵抗素子『NES-OV45』」は、業界最小クラスの白金測温抵抗体温度センサーで、産業技術総合研究所との共同開発。感温部の寸法を0.5mmと同社最小品比で5分の1に小型化した。アンプルを用いたDNA増幅やiPS細胞(万能細胞)の培養に用いるサーマルサイクラ装置向けなどに用いる。数十μ(μは100万分の1)程度の微量培養液内へ、感温部の完全な含浸を可能にすることで高精度の温度測定を可能にした。
センサー構造を従来の口出し白金導線2線式から、リード線をセラミックス筐体内に直接引き込む4線式に変え、感温部寸法を大幅に縮めた。リード線に溶着した太さ13μmの極細白金線を、筐体外周に巻き精密コイル化。これをガラスや樹脂で封止し、電気抵抗10Ωの感温部を製造する。2線式と異なり、外にはみ出た導線部分の抵抗の影響を受けないため、測定温度誤差で±0.1℃以内の高精度判定を可能にした。
従来、サーマルサイクラ装置によるDNA複製装置などには、微細化が容易な熱電対温度センサーが使われていたが、精度誤差が±0.5℃程度にとどまっていた。

Voice
ネツシン 専務取締役 今村 友亮 氏

当社では、創業以来の企業方針として「温度センサーを限りなく点に近づける」という目標の下、製品開発にまい進してきました。今回、賞を頂いた「NES-OV45」は、本体外径0.4mm×長さ0.5mmと、肉眼では点にしか見えません。創業から40年ほどかかりましたが、当初の目的に到達できたことで喜びもひとしおです。
同センサーは、共同開発先の産業技術総合研究所が、DNA解析や細胞増殖などを行う過程において、高精度な温度計測を実現するために役立てて頂いております。
今後、さらなる小型化を目指し、先端分野の研究開発に微力ながらも貢献してまいる所存です。

小動物血漿・血球分離用遠心ディスク「CD-Well」

島津製作所

製品概要

島津製作所の「小動物血漿・血球分離用遠心ディスク『CD-Well』」は、マウスでの血漿中放射能濃度の時間曲線を正確に得ることが可能となったのが特徴。放射性元素を含む薬剤を体内に導入するPET(ポジトロン断層撮影法)診断が早期がん発見では有用で、マウスによる研究開発を効率化することで、それぞれのターゲットに特化した診断薬開発を促進することができる。
同製品は内容量4μ(μは100万分の1)のU字形状の流路を36本備えた円盤形デバイス。各流路に採取した1μ-4μの血液を遠心分離で血球と血漿に分離。光学スキャナーによる画像データと、放射線量の画像データを取得し、血漿中の放射線濃度変化データを得る。従来は数十μの採血が必要だったが、同製品を使った方法では最小必要量は1μとなり、血液量が少ないマウスでも最短5秒間隔で採血、解析が可能となる。
開発では、MEMS(微小電気機械システム)技術や内面修飾、シミュレーション技術を駆使し、透明性や放射線の透過特性を確保。遠心分離を維持する素材や表面処理方法も最適化した。

Voice
島津製作所 デバイス部 部長 井上 光二 氏

MEMS技術を利用してマウスの微量な採血と解析を世界で初めて可能としました。簡便な操作で診断・薬品の開発に幅広く役立つと考えます。病態モデルの多いマウスの経時的変化を研究でき、高度医療分野へ大きなインパクトを与え、PET診断薬の開発を加速するものと期待しております。常にお客さまの立場での商品作りと基盤となるモノづくりを磨いてきた成果と考えております。
7期連続で表彰いただいたことは大変光栄ですし、モノづくり推進の一翼を担えたことをうれしく思います。これを励みに今後も常に新しいことに挑戦し、世界ナンバーワンでオンリーワン商品を創出するために努力していく所存です。

内視鏡用洗浄吸引カテーテル「エンドシャワー」

山科精器

製品概要

工機事業部、熱交事業部、油機事業部の機械部門の3事業部に続いて、2009年に立ち上げたのがメディカル事業部。そして、13年春、山科精器が満を持して投入したのが、「内視鏡用洗浄吸引カテーテル『エンドシャワー』」だ。大阪大学の中島清一教授の監修を得て手掛けている。 「エンドシャワー」は、臓器の洗浄と、血液、体液などの吸引を目的とする内視鏡用の医療製品。先端部は側面に0.4mmの微細口径の穴が24個あけられている。体内の消化器や組織などに吸い付かないために傷つけない。 産学連携で研究開発を進め、効率の良い洗浄と吸引処置を可能にした。大きな特徴として、洗浄、吸引、薬液散布が1本のエンドシャワーでできる点がある。しかも微細孔が多くあるために、狙った部位に的確な噴射で洗浄ができる。しかも患者の負担にならない愛護的吸引も実現した。 粘液洗浄は、現場の医師からの要望をくみ取ったもので、従来のカテーテルだと的確な洗浄が難しかったという。吸引も視界を確保し、医師の視野を維持しながらできるようにしている。

Voice
山科精器 代表取締役 大日 常男 氏

当社の開発した「内視鏡用洗浄吸引カテーテル『エンドシャワー』」が、「健康・医療機器部品賞」をいただき、大変光栄に思っております。
工作機械などを手掛けている当社は現在、医療機器の製造を本格的に始めています。
大阪大学の中島清一教授らのご協力を得て開発することができた「エンドシャワー」は、狙った部位を的確に洗浄できるため、医療現場の最前線に立つ医師の方の手助けになるとともに、愛護的な吸引で患者さんの負担を抑えることができる画期的な製品です。
これからも「日本の技術を、いのちのために。」という思いを胸にモノづくりに取り組んでまいります。