ものづくり日本会議

2015年受賞部品

モノづくり部品大賞

ファイバ結合型高輝度青色ダイレクトダイオードレーザ BLUE IMPACT

島津製作所

製品概要

 島津製作所は、今後の拡大が見込まれている加工用レーザのグローバルな展開を見据えて、次世代高機能レーザ加工向け光源事業に力を入れている。そこで、戦略製品として開発したのが「ファイバ結合型高輝度青色ダイレクトダイオードレーザ BLUE IMPACT」。2013年の技術発表後、サンプル供給を実施して、14年10月に国内で開催された先端光技術の国際総合展「インターオプト2014」で展示し、全世界での販売を開始している。
 加工用レーザの光源は従来、半導体レーザやファイバレーザなどが使われている。ただ半導体レーザは大量生産による低コスト対応が可能というメリットがあるが、発光面積の拡大に伴い輝度が低下するため高輝度化が難しくなる。また赤外波長のため、銅など赤外で高反射を示す材料への適用が困難だった。
 これまでレーザ加工用途で使われることのなかった窒化ガリウム(GaN)系青色半導体レーザに着目して、複数のレーザ素子を独自の技術で多重合成することで、光のレーザを束ねたような状態を実現した。直径100μmの細径ファイバに集約したのが、青色レーザによる加工用光源「ファイバ結合型高輝度青色ダイレクトダイオードレーザ BLUE IMPACT」となる。
 ファイバ結合型高輝度青色ダイレクトダイオードレーザは、銅や金などで吸収率が高い405nmから450nm帯の波長を有し、GaN系青色半導体レーザの特徴となる高い光密度を細径ファイバでそのまま伝送することができる。
 金属への吸収率が高い450nmの短波長で従来の10倍以上の輝度を実現しつつ、スポットサイズが極小のため、加工材料の多様化への対応やスマートフォンに代表される電子部品の小型化に伴って需要が伸びている高反射、高熱伝導率材料の微細加工、3Dプリンターなどにも用いることが可能となる。
 加えて次世代照明として研究が進むレーザ励起白色蛍光体の励起用光源などにも適している。さらにフレキシブルに伝送可能なファイバ結合型を採用しているため、自由度の高い取り回しが可能で、プロジェクターやディスプレー用途での展開も見込まれている。

 汎用性にも優れているBLUE IMPACTについて、島津製作所では今後、高出力化、高輝度化でのさらなる上積みを目指す。ここで培った技術を生かして赤色や緑色の高輝度レーザモジュールの開発も視野に入れている。

Voice
島津製作所 取締役上席専務執行役員 鈴木 悟氏

 このたびは、栄えある「“超”モノづくり部品大賞」を頂戴し、誠に光栄に存じます。「BLUE IMPACT」は、世界で初めてとなる“青い光”による本格的なレーザ加工を目指して開発した、ファイバ出力型の高輝度青色レーザ光源モジュールです。
 2014年のノーベル物理学賞でも取り上げられたGaN(窒化ガリウム)青色半導体レーザ素子を十から数十個使用し、各素子からの光を独自技術により髪の毛の太さほどの光ファイバに集めることで高出力・高輝度な光源を実現しています。
 青色レーザ光は物質への吸収が相対的に高く、従来よりも少ないエネルギで高品質な加工を可能にしますので、環境にやさしいこれからのモノづくりに貢献できると期待しています。
 「科学技術で社会に貢献する」を社是とする当社では、今回の受賞を励みとして今後も既成概念にとらわれない斬新な発想で、環境負荷を低減した持続可能な社会の実現に向けて貢献していく所存です。

モノづくり日本会議 共同議長賞

高効率・大減速比を実現する小型アクチュエータ

アイシン精機

製品概要

 アイシン精機が開発した「高効率・大減速比を実現する小型アクチュエータ」は、自動車のパワーシート用として実用化された。技術のポイントは構成部品の歯車。新たに開発した転造技術を用いて歯数が二つしかない「はすば(斜歯)歯車」を成形し、高効率アクチュエーター(動力伝達装置)の量産に成功した。
 車用電動アクチュエーターは減速機やモーターで構成される。車の電動化が進み、搭載箇所が増えているため消費電力が少ない小型・軽量なアクチュエーターが求められている。要望に応えるには大きな減速比と高い動力伝達効率を持つ減速機と、小型モーターを使えるようにすればよい。
 ただ、アクチュエーターで一般的に使われるウォーム歯車は大きな減速比を生み出すが、動力伝達効率が低いため、組み合わせるモーターが大きくなる課題があった。そこで、同社は新たな歯車の加工に乗り出した。
 原理では動力伝達効率が高い減速機構の小歯車の歯数を少なくすれば、課題が解決する。歯数が二つしかないはすば歯車を成形するため、すべてのメカニズムが明らかにされているわけではない転造の運動モデルを作り、転造過程のダイスと素材の動きを予測した。V  これを基にダイスを開発し、量産に適した材料や成形条件も見いだした。完成した小型アクチュエーターは設置自由度も高まり、応用範囲の拡大も期待できる。

Voice
アイシン精機 常務役員 坂本 由夫氏

 このたび、栄えある「モノづくり日本会議 共同議長賞」をいただき、誠に光栄に存じます。
 今回の受賞対象品は、当社が長年培ってきた「歯車」の生産技術の知識を生かし、実現が難しかった「小歯数はすば歯車」という機構を、新たに開発した技術を用いて生産性が高く環境に優しい塑性加工である転造で具現化した部品です。
 「歯車」は動力の基本となる部品であり、その「歯車」の新たな生産技術が認められ、開発に携わったスタッフ一同も感激しております。今回の受賞を励みに、今後もより良いクルマ社会づくりに貢献していきます。

ものづくり生命文明機構 理事長賞

微細操作用「マニピュレーションシステム」

日本精工

製品概要

 分子生物学の研究現場などで微小な試料を扱うためのシステム。手作業だった操作を自動化し、効率化、作業者負担の軽減、品質向上などを可能にする。ボールネジ、直動案内機器などで培った精密位置決め技術を生かし実験動物中央研究所と共同で開発。2014年に市場投入した。
 核膜内にDNA溶液を注入する作業や、卵子へ精子を注入する作業などでの活用を想定する。従来、作業者は顕微鏡を覗きながらハンドルを操作し、対象物に接するマニピュレーターを動かしていたが、同システムでは一部動作の自動化が可能。「スキルフリー化、負担軽減につながる」(同社技術開発本部未来技術開発センター)という。
 手動の場合は、パソコンやタブレット端末などの画面を見ながら、2本のジョイスティックで操作する仕様。離れた場所から操作できるため、システム本体だけをクリーンルーム内に設置することもできる。極小半導体の検査工程など、産業領域での利用も見込んでいる。
 15年1月には米国の製品安全規格「UL認証」を取得。その後、海外展開を本格的に始めた。既に同国の研究機関に数台を納入。「ほかにも引き合いを受けている」(同)とさらなる拡販を視野に入れる。
 12月には日本分子生物学会のイベントに参加し、同システムをPRする予定。「今後も現場のニーズを拾いながら、付加価値を付けていきたい」(同)としている。

Voice
日本精工 執行役 技術開発本部未来技術開発センター所長 
伊藤 裕之氏

 このたびは、栄誉ある賞を頂き大変光栄に存じます。本開発品は、軸受やボールネジ等の機械要素部品に電子技術を組み合わせることで、バイオ産業への新規参入を可能にしたものです。当社が知見を有していない分野故、開発に加えて、商流の整備、認証取得など、多くの困難に直面しましたが、開発陣の情熱と創意工夫で課題を克服しました。今回の受賞を励みとし、未来技術の開発を加速させて参ります。今後とも、開発を通して微力ながら産業の発展に貢献すべく、一層の努力を尽くして参りたいと存じます。また、受賞にあたり、多大なご指導、ご支援をいただいた共同研究パートナーの実験動物中央研究所および諸先生方に深く感謝申し上げます。

日刊工業新聞創刊100周年記念賞

燃料電池電極触媒

キャタラー

製品概要

キャタラーが開発した燃料電池電極触媒は、トヨタ自動車が世界に先駆けて発売した燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に搭載された。心臓部の燃料電池(FC)スタックのセル内でタンク中の水素と空気中の酸素を反応させて発電させる重要部品。ミライの飛躍的な性能向上と大幅なコスト低減を実現し、量産販売に大きく貢献した。
 FCスタックの性能を高めるには、化学反応の精密な制御が必要。開発品は長年蓄積した排ガス浄化触媒技術や環境ケミカル技術を応用し、「貴金属薬液技術」など四つの新技術を織り込んだ。その結果、反応への寄与が大きい貴金属ナノ粒子の白金コバルト合金粒子をナノメートルサイズで、カーボン最表面に高密度に均一担持させることに成功した。
 白金コバルト合金粒子の均一化により、水素と酸素の反応効率は同社従来比で約3倍に向上した。スタック性能が大幅に高まったことで、高価な希少金属である白金の使用量が同社の従来触媒比で半減できた。
 同技術はトヨタからも「モノづくりで最も大切な独創性、経済性、地球環境への配慮が十分考慮されている」(材料技術設計部)と高く評価された。特許はトヨタ自動車と共同で18件、単独で3件出願している。

 今後はFCVの普及動向を見ながら、他社への拡販も検討する。定置式の燃料電池にも横展開が可能なことから、バスや家庭用燃料電池にも用途が広がっていきそうだ。

Voice
キャタラー 執行役員第5研究開発部長兼研究開発本部副本部長 
近藤 栄作氏

 このたびは、このような栄えある賞を受賞でき大変うれしく思います。当社は「触媒で地球とクルマをつなぐ」をテーマとして、自動車排ガス浄化触媒をはじめとして環境に貢献する製品を開発しています。
 その一つとして将来、想定される水素社会に備えて2000年以前から燃料電池電極触媒の開発に取り組んできました。従来よりも触媒の反応効率を向上させ、白金使用量を大幅に低減できたことで、トヨタ自動車から市販された燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に採用され、念願の実用化にいたりました。

 しかしFCVの普及にはさらなる白金使用量の削減などの課題も多く、開発推進が必須です。この受賞を励みに、来るべき水素社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

マルチバンドデバイス用極小・低挿入損失積層ダイプレクサ DPX10シリーズ

TDK

製品概要

 積層ダイプレクサは1本のアンテナが受信した電波を、スイッチを使わずに別々の周波数帯に分けたり、混合したりできる通信デバイス。スマートフォンの通信機能を支える中核部品一つだ。
 TDKが開発した無線LAN用のダイプレクサは、無線LANで使用する周波数2.4GHz帯と5GHz帯に対応する。サイズが「1005」と呼ぶ縦1.0mm×横0.5mmの業界最小品で、従来品比で体積を6割削減した。スマホの大画面・薄型化といった高機能化に役立つ。
 小型化の最大のカギとなったのが新材料の開発と、異なる特性を持つ材料を同時に焼成する技術の活用だ。積層ダイプレクサはセラミック材にコンデンサー素子とインダクター素子を積層した構造で、これまではコンデンサー部、インダンクター部にいずれも低誘電率のセラミック材を採用していた。
 これに対し、今回開発した製品はコンデンサー部に独自開発した高誘電率のセラミック材を採用。独自の材料技術や焼成技術を融合させ、異なる特性を持つ材料を積層しても、部品にヒビや反りが入らず量産することに成功。従来の誘電率が低い材料を使用する場合と比較し、厚みを大幅に抑え、製品の小型化につながった。

 同製品はすでに大手スマホメーカーの高級機種に搭載され、端末の進化を後押ししている。今後は他の電子部品にも同様の技術を採用するなどして小型化を進める考えだ。

Voice
TDK 取締役 専務執行役員 植村 博之氏

 このたびは日本力(にっぽんぶらんど)賞を賜り、誠にありがとうございます。スマートフォンの普及に代表される、高度情報化社会を支える本製品に対して、同賞を授与されたこと、開発・製造部門一同大変喜んでおります。
 本製品は誘電率の異なる異材質の層を組み合わせて同時焼成するLTCCと呼ばれる技術の適用や、TDKが長年培ったセラミック薄層化及び導電体のファインセラミックス化といった材料の最適化技術を適用し、大幅な小型化及び高減衰、低挿入損失を達成することができました。
 このたびの受賞を励みとして、引き続きお客さまや社会に貢献できるモノづくりを目指して取り組んで参ります。

自動車排ガス浄化用白金族触媒低減型セリアジルコニア助触媒

ノリタケカンパニーリミテド

製品概要

 自動車には排ガス中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)といった有害物質を軽減するため、浄化用の触媒が取り付けられている。触媒には白金族などが使われ、その働きを助ける「助触媒」との相乗効果で有害物質を水(H2O)など無害なものに変える。しかし、白金族は希少金属(レアメタル)であり、使用量の削減が課題になっていた。
 ノリタケカンパニーリミテドの開発した助触媒は「アイランドコアシェル」と呼ぶ独自の構造を持つ。排ガス浄化性能は維持しながら、白金族の使用量を従来比30%低減できる。
 助触媒のセリアジルコニアを、大海に浮かぶ島のように材料表面に散りばめ、酸素の吸放出性能を向上。これにより触媒の高性能化につなげた。また酸化セリウムの濃度を高め、白金族の凝集を起こりにくくした。有機溶剤を使わずに製造できるため、安価で大量生産にも向く。
 世界各国で排ガス規制が強化される中、浄化装置市場も拡大が見込まれる。現在のセリアジルコニア助触媒の世界市場は年間約300億円だが、今後は拡大する見通しだ。

 世界の白金需要のうち約4割は自動車向けで、宝飾品向けの約3割を上回るという。レアメタルの需給がひっ迫する中、同社は顧客とともに新型助触媒の実車テストを進めており、2018年以降をめどにハイブリッド車(HV)などへの本格採用を見込んでいる。

Voice
ノリタケカンパニーリミテド 取締役専務執行役員開発・技術本部長
中川 正弘氏

「日本力(にっぽんぶらんど)賞」という名誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。  当社は食器の加飾技術を110年以上にわたり培ってきました。今回、その加飾技術とジルコニア微粒子の合成技術を組み合わせ、独自の「アイランドコアシェル構造」を持つセリアジルコニア助触媒を開発しました。
 この部品を自動車排ガス浄化システムに適用することで、レアメタルである白金族触媒の使用量を大幅に低減できます。
 自動車産業において白金族触媒の使用量低減は急務であり、地球環境問題、資源問題に大きく寄与すると考えています。今後もお客さまに喜んでいただける部材を開発し、社会に貢献するモノづくりに取り組んでまいります。