2017年受賞部品

奨励賞

SR加工用超硬ドリル

三菱日立ツール

製品概要

 ダイカスト金型は高速・高圧で、溶湯を充填する。その冷却穴は加熱と冷却が繰り返されるため、穴底の角の部分や穴壁面の傷から応力腐食割れを起こすことで金型寿命が短くなることが問題となっていた。三菱日立ツールのSR加工用超硬ドリルは、ダイカストやプラスチック金型の冷却穴の底を丸く、なめらかに加工するために使用される。
 従来のガンドリルによる加工では、穴の壁面がうねり、面粗さを悪化させていたが、同ドリルでは先端を特殊チゼル形状にすることにより、切りくず排出性を向上させ、この問題を改善した。このドリルを使用することにより従来の加工時間に比べ5分の1以下に短縮し、金型寿命も2倍に延ばす効果もあった。

Voice
代表取締役社長 増田 照彦氏

 このたびは「SR加工用超硬ドリル」が「奨励賞」受賞の栄誉を賜り誠に光栄に存じます。
 同部品はダイカストやプラスチック金型の冷却穴の壁面と穴底を仕上げることで、金型の応力腐食割れの起点を減らし、金型の寿命を飛躍的に延ばすことができる工具です。
 MOLDINO、新しいブランドに込めた思い、すなわちお客さまと手を携え加工イノベーションを実現する三菱日立ツールならではのプライドある製品・ご提案の一つの形です。 
 今後ともお客さまの課題に真摯に向き合い、お客さまと私たちの笑顔のために果敢に挑戦し、日本のモノづくりに貢献してまいります。

NSK高負荷駆動用ボールねじ「S-HTFシリーズ」

日本精工

製品概要

 NSK高負荷駆動用ボールねじ「S-HTFシリーズ」は、独自の熱処理法「TF処理」を適用。同社従来製品と比べ寿命を2.2倍に延ばし、耐荷重を最大1.2倍に向上した。ボールネジを搭載する電動射出成形機やサーボプレス機などの生産性向上に寄与する。
 同シリーズは軸受用鋼材を新たに採用。鉄鋼設備向け軸受などで用いているTF処理を、ボールネジの製造に世界で初めて転用し、長寿命と耐荷重性を両立した。
 樹脂製品は自動車向け大型部品から電子小型部品まで大きさや形状が多様化し、電動射出成形機の需要拡大が見込まれる。同シリーズは射出成形機のハイサイクル化や推力の拡大などに貢献し、市場ニーズに対応する。

Voice
直動技術センター所長 宮口 和男氏

 このたびは、モノづくり部品大賞の「奨励賞」をいただき、誠にありがとうございます。今回開発したボールねじは、主に射出成形機やプレス機などの力の伝達用途に使用されるものです。
 生産性の向上や成形部品の多様化へのお客さまの要望に対応して、ボールねじの長寿命化と耐荷重性能アップを実現することができました。
 近年拡大しつつある油圧から電動化の流れの中で、従来よりも過酷な使用条件下での信頼性が求められます。今後もさらにお客さまに喜ばれる製品を開発し、社会に貢献してまいります。

刃先交換式小径エンドミル「TungForceRec」

タンガロイ

製品概要

 タンガロイの刃先交換式小径エンドミル「TungForceRec」は、特徴のあるインサート形状と高剛性なボディー設計によって、さまざまな材料や加工において安定した、高能率な加工を実現できる。
 インサートの底面をV字形状とし、配置を最適化することで切削抵抗を受けるインサート切れ刃の肉厚を、最大化し高剛性な構造とした。またインサートの切れ刃の逃げ面を切れ刃より外に膨らませた設計としたことで、切れ刃の直下のインサート断面積を大きくし、刃先を強化した。
 これらにより、工具剛性不足で加工できなかった炭素鋼の深溝加工ができる。また壁面での段差の少ない加工や底面加工でビビリなく、面粗さも良好となる。

Voice
社長 木下 聡氏

 このたびは、栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。
受賞製品の刃先交換式小径エンドミル「TungForceRec」が目指したのは世界No.1の高能率加工であり、独自のV字形状と刃先切刃強度、低抵抗刃型を全て両立させることにより高い加工能率を実現した、画期的なエンドミルです。
 本製品は高能率加工だけではなく、高い切削条件で安定切削が可能であり、製品の加工時間短縮にも寄与すると考えております。
 今後もお客さまの生産性向上を追究した製品開発に取り組み、日本のモノづくりに貢献したいと存じます。

Aドリル(超硬ドリルシリーズAD/ADO)

オーエスジー

製品概要

 多様な部品加工に対応するには、切削工具も多くの種類が必要になり、コストが増える。一つの切削工具で多様な加工に対応できれば、コストは抑えられる。「Aドリル」は加工径、深さ別に豊富なラインアップをそろえつつ、深さ別では刃形も設定した。
 浅めから中間の穴加工用のドリルには、ウェーブ刃形を採用し、切れ味を重視した。深穴加工用のロングドリルには直線刃形を採用し、切れ刃強度と加工の安定性を実現した。
 耐摩耗性、耐熱性に優れた、新開発の表面処理の採用も特徴だ。耐摩耗層とナノ周期積層を多層で組み合わせ、加工時に発生しやすい割れの伝播を抑える。工具の長寿命化につながるほか、高速加工時の安定性を高めた。

Voice
代表取締役社長 石川 則男氏

 モノづくり部品大賞の「奨励賞」ありがとうございます。
穴加工用ドリルは穴の径と深さにより最適なドリルの種類が一品一葉です。そのニーズに答えたドリルが「超硬Aドリル(AD/ADO)です。
 2~8D深さのドリルにはウェーブ刃型形状を採用し、切れ味を重視しました。10~30D深さのロングドリルには直線刃形を採用し、切れ刃強度と加工の安定性を実現しました。
 耐久性能を向上させるため、新開発のEgiAsコーティングを採用しております。今後もさらにお客さまに喜ばれる製品を開発していきたいと思います。ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

内部給油式バイトホルダ「JT(ジェットテック)シリーズ」

三菱マテリアル

製品概要

 旋盤用の刃先交換工具。市場で要求が高まっている高能率加工、工具の長寿命化に応える。機械部品などでの使用が増え、切れ刃の摩耗進行を早める耐熱合金の加工に向く。
 長寿命化をかなえる特徴の一つが独自形状で高い冷却効果を発揮するノズルだ。耐熱合金は切削点の温度が高温になり、刃先の摩耗が早い。切れ刃を冷却する切削油(クーラント)の供給に、専用の高圧クーラント装置を使ってきたが、同製品では工作機械に標準の通常クーラント圧力で冷却効果を高める。
 寿命は条件によって、クーラント供給の一方式である外部給油に比べ約40%の延長効果がある。これによる工具費の削減、高能率加工による加工時間の削減といった経済的な利点を期待できる。

Voice
常務執行役員加工事業カンパニープレジデント 鶴巻 二三男氏

 このたびは、このような栄誉ある賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。弊社は、モノづくりに携わるお客さま一人一人に合わせたベストなソリューションとサービスを提供する“総合工具工房”となり、お客さまの身近にいる感覚を抱いていただける存在になることを目指しております。
 受賞した製品は、最先端のテクノロジーを、お客さまの声をいただきながら製品に具現化したもので、必ずやお客さまの生産性向上に寄与できると考えております。今後も皆さまにワクワクする製品をお届けできるよう努力してまいります。

KT吸音材

栗田煙草苗育布製造

製品概要

 栗田煙草苗育布製造の「KT吸音材」は、工場や一戸建てなどの騒音を抑える。これにより、騒音が発生する場所で会話など必要な音を聞きやすくするほか、近隣などへの迷惑防止につながる。
 同製品は裏面の高収縮生地を熱処理で縦横方向に収縮させ、キルティングしている表面の糸を内側に押し込むことで、表面の凸凹を実現した。表面の3次元化で吸音効果を向上したほか、赤や緑など16種類の色をラインアップしたため、審美性にも優れる。
 同社織布工場内で行った実証実験では、施工前に発生していた91dBの騒音を6dB減の85dBまで抑えた。工場だけでなく一戸建てのピアノルームなどの防音にも効果を発揮する。

Voice
社長 栗田昌幸

 栄誉ある「奨励賞」を2年連続で頂き、誠に光栄に存じます。当社は紗織物を専門に産業資材向けの織布加工を手がけており、伝統ある繊維産業での受賞を大変うれしく感じております。
 「KT吸音材」は当社の基幹技術を基に長期間かけて完成させました。有機繊維が材料で柔らかく、工場やピアノルームなどの内壁に設置することで吸音効果を発揮するほか、カラフルさと3次元化による審美性でこれまでにない吸音材を実現しました。
 設置も面ファスナーやタッカーを使うため簡単です。受賞を機に「KT吸音材」の良さをより広めていく所存です。

超耐熱合金加工用セラミックエンドミル「CERAMATIC」

日本特殊陶業

製品概要

 日本特殊陶業の超耐熱合金は熱伝導性が低く、高温強度・加工硬化性が高く、工具材料と溶着しやすい難削材料だ。エンドミル「セラマティック」はその超耐熱合金を高効率に切削できる。
 母材は窒化ケイ素が主成分のサイアロン系セラミックス「SX9」。1000℃超の高温域でも坑折強度の低下が緩やかで切削熱で被削材を軟化させて加工できる。独自の刃形状で食い付き時の衝撃を緩和し切れ味を向上、溶着や欠損も防ぐ。耐欠損性は従来品エンドミルの1.8倍。
 超硬合金「インコネル718」の社内切削試験では、超硬エンドミルの15倍の加工速度を確認した。航空機エンジンや発電用ガスタービン、自動車用特殊部品などの加工に採用されている。

Voice
常務執行役員 自動車営業本部担当、機械工具事業部担当 天野 孝三氏

 このような賞を頂き、感謝と喜びの気持ちで一杯です。
 航空機やガスタービンの需要増に伴う短納期化や増産に対応するため『高能率加工を実現する工具』をコンセプトに開発を進めて参りました。「CERAMATIC」はセラミック材料の特性を最大限に活かしたエンドミルです。難削材である耐熱合金を従来比10倍以上の速さで加工でき、生産性が飛躍的に向上し投資や作業コストを抑制できる点でご好評頂いております。
 これからも「お客さまのこうしたいに応えたい」をコンセプトに、常にお客さま視点に立った商品を提供できるよう邁進してまいります。

ワイヤレス押しボタンスイッチ「セレアーキ」

文化シャッター

製品概要

 文化シャッターが開発した軽量・中量シャッター用のワイヤレス押しボタンスイッチ「セレアーキ」は、リモコンで開閉を操作するガレージシャッターなどの電動シャッターに標準装備している。高齢化の進展で工事士が減っていく中、工事の簡略化が求められるようになってきたことを受け、開発に着手した。これまでの有線式から無線式に変更したことで配管・配線工事の必要がなくなったため、新築時に限らずリフォームの際も工事費用の削減と工期の短縮が可能になる。屋内・屋外兼用型。
 安全に配慮したコンパクトデザインで押しボタンは「開」「停」「閉」で縦並びに配置した。建物の意匠にマッチする、カラーバリエーションもそろえた。

Voice
商品開発部 次長 高井 邦治氏

 高齢化が進み、工事士が減少する中、工事の簡略化や安全性の向上が求められています。従来の押しボタンスイッチは無機質なシャッターの一部という感覚でしたが、今回受賞した「セレアーキ」は時代にマッチしたモノづくりを進めてきました。受賞を大変うれしく思います。開発に当たってはガタつきの少ないちょう番の開発や、屋外設置のため防水性能の確認など安全性と意匠性の両立などに苦労しました。今後も「開ける」、「閉める」だけのシャッターから、お客さまに快適で楽しい生活を提供できる製品を開発していきたいと思います。

可搬式太陽光発電設備の折り畳み太陽光パネルモジュール

ナベル

製品概要

 ナベルの「ナノグリッド」は、縦50cm×横42cmのシート状の太陽光パネルを9枚つなぎ合わせたモジュール。バッテリーと組み合わせ、可搬式太陽光発電設備を構成する。出力は72Wで、総重量は3kg。折り畳んで、専用のリュックサックで運ぶこともできる。
 軽量化を図るため、セルにはフィルム型のアモルファス太陽電池を採用。またセルの裏表両面をフッ素樹脂(ETFE)フィルムで保護し、耐候性・耐久性を高めた。モジュールの一部が破損した場合でも、可搬式太陽光発電設備は使用可能。
 防災や事業継続計画(BCP)の対策用として普及を目指しており、台湾企業と連携し、電動スクーターの電源などに応用する開発を進めている。

Voice
代表取締役社長 永井 規夫氏

 2011年に発生した東日本大震災の後、私は現地の友人から、多くの被災者が電気のない不自由な暮らしを強いられていることを知りました。今や携帯電話やスマートフォンは現代人の必需品となっています。当社のジャバラ技術で、誰もがどこでも容易に電源を得ることができる製品を作りたい―。そんな志で「ナノグリッド」の開発を始めました。
 開発については、蓄電池やシステムの信頼性実験などを坂内正明三重大大学院特任教授に全面協力していただきました。今回の受賞を国内だけでなく、海外展開への弾みにしていきたいと思います。