2018年受賞部品

モノづくり部品大賞

体内の浅部から深部まで鮮明な画像を撮像できる超音波探触子

株式会社日立製作所

製品概要

 医療用画像診断装置で商品の比較優位性を失うコモディティー化が進む中、装置の付加価値を高める取り組みが加速している。高画質化はその一つ。超音波診断では装置そのものだけではなく、探触子(プローブ)の性能向上も欠かせない。日立製作所は半導体技術を応用、高分解能な撮像が可能な探触子を実用化。体内の浅部から深部まで、従来より1.5倍鮮明な画像を撮像できるようにした。
 探触子は超音波の発信と受信を行うセンサーで、その材料はさまざま。時代とともに圧電セラミックスや複合圧電材、単結晶といった素材を用いて、超音波の帯域を広げてきた。日立が受賞した探触子は今までの素材とは異なり、シリコン基板上に厚さ数百ナノメートルの隙間を設けるCMUTという半導体技術の活用が大きな特徴だ。
 シリコンウエハーのセルに空洞と空洞上の薄膜があり、その膜を揺らすことで超音波を送受信する。人体への超音波の伝搬効率を高めて画像分解能を向上させる。2009年にこの原理を使って製品化したが、高い圧力の超音波を出すことができず、人体の深い部分までは届かなかった。高い音圧では強い電荷がかかり、膜が壊れてしまうためだ。
 この技術的課題を解決するため、膜の材料から構造、生産プロセスに至るまで工夫を凝らし、高い音圧でも膜が壊れない仕組みを構築。17年に第四世代となる今回の探触子「4G CMUT」を製品化した。高い音圧が必要な血流のカラー画像や造影剤の観察などすべての検査モードに対応し、検査によって探触子を持ち替えたりせず1本で済む。
 この探触子は上位機種の超音波装置に搭載され、今後は中位機種の装置へのラインアップを予定。河野敏彦ヘルスケアビジネスユニットチーフエグゼクティブは「乳腺や甲状腺、血管系の診断に利用されており、より早期の病変発見や質的診断に役立つ」とみている。

Voice
日立製作所 へルススケアビジネスユニット チーフエグゼクティブ 河野 敏彦氏

 長年研究開発してきた超音波探触子が、このような名誉ある賞をいただくことができ、誠に光栄に存じます。
 超音波診断装置は患者の身体への負担が少なく、特別な場所を必要としないことから、現代の医療に欠かせない診断装置となっています。今回受賞した探触子は、今までになかった半導体技術を用いて開発し、身体の浅部から深部まで高画質が得られるため、病気の早期発見や質的診断に役立ちます。また従来、複数本の探触子で行っていた検査を1本の探触子で行うことができ、検査者のワークフローの改善にもつながります。これらの特徴は世界の医師から高い評価を得ています。
 今後も「優れた自主技術・製品の開発を通じて、社会に貢献する」という日立の企業理念を実現すべく、さらなる高画質化や新しい臨床価値を提供できるよう技術開発を行い、医療の発展に貢献していきます。

モノづくり日本会議 共同議長賞

超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」搭載 電源IC

ローム株式会社

製品概要

 ロームの電源ICに搭載された超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」は、2メガヘルツで動作するスイッチングのパルス幅を、業界最小まで短くした。そのパルス幅は、ロームの従来品と比べて10分の1以下の9ナノ秒。今回の技術をDC(直流)/DCコンバーターに搭載すると、従来は複数必要だった電源ICを一つに構成できる。実装面積は従来品と比べ約70%減の小型化を達成した。
 高い入力電圧に対して出力電圧を維持するには、スイッチング電圧のパルス幅を短くしなければならない。ただスイッチング時のノイズの問題から、従来はパルス幅を長くする必要があった。
 今回の技術ではノイズ発生前の情報を、あらかじめ検知。短いパルス幅でも、ノイズに邪魔されず電圧制御できる。これにより60ボルトの高電圧から、一気に2.5ボルトの低電圧まで降圧が可能になった。外付け部品の小型化が実現し、電装化が進む車載向けからの引き合いが高まっている。

Voice
ローム 取締役 市場・商品戦略、LSI開発担当 末永 良明氏

 このたびは「モノづくり日本会議 共同議長賞」という栄えある賞を頂きまして、誠に光栄に存じます。
 機器の高機能化に伴い電気回路も複雑化し、より高精度な電源管理技術が求められます。当社は得意のアナログ技術を生かし、高効率・高精度に電源制御を行う電源ICを数多く提供してきました。
 当社が誇る最先端アナログ技術を結集して誕生したのが、超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」です。垂直統合生産体制により、回路設計やレイアウトだけでなく、プロセス技術まで追求したことで、業界最小のパルス幅を実現しました。
 この技術を核に、今後も高効率かつ高信頼性、高精度の電源ICの開発に取り組みます。

ものづくり生命文明機構 理事長賞

マイクロナノバブル発生器

株式会社ノリタケカンパニーリミテド

製品概要

 直径1マイクロメートル以下の気泡(ナノバブル)を含め、直径100マイクロメートル以下の気泡(マイクロバブル)を液中で発生させる。ノリタケカンパニーリミテドは得意のセラミックス成形技術により、アルミナを原料に、筒状の多孔質セラミックス製マイクロナノバブル発生器を開発した。
 ナノバブルは液中の滞留時間が長く、総表面積が大きいため、液体との反応性が高い。汚れの吸着、化学反応の促進などでの有効性が確認されている。従来のバブル発生法には加圧溶解や超音波、旋回流があるが、バブル発生量が少ないことや、装置が大がかりであること、バブルの大きさにバラつきがあるなどの課題があった。
 ノリタケのマイクロナノバブル発生器は、工場内の機器駆動用エアを吹き込むだけで、マイクロナノバブルを発生できる。電源が不要で、発生ユニットも小型にできる。小型コンプレッサーのエアを使う場合も、消費電力は加圧溶解式の3分の1程度。液中へのストレスが少なく、菌類や藻類の培養にも有効。食品・化学業界を中心に、20社以上の納入実績がある。

Voice
執行役員 開発・技術本部長 永田 滉氏

 当社の開発いたしました「マイクロナノバブル発生器」が、栄えある「ものづくり生命文明機構 理事長賞」を頂戴し、大変光栄に存じます。
 これは当社が創業以来培ってきた、食器製造技術に端を発するセラミックス加工技術を応用したものです。精密に制御されたセラミックス部材中の微細な穴にガスを通すことで、0.1~1マイクロメートル程度の泡(マイクロナノバブル)を、液体に強い力を加えることなく発生することができます。また泡の発生のために高いガス圧を必要とせず、コンパクトであるため簡単に装置に取り付けることが可能です。そのため将来的には食品・バイオ・医療・化学・機械など、幅広い分野でお客さまのお役に立てると考えております。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

100kW超級 高周波電力変換器用アモルファスブロックコア「AMBC」

日立金属株式会社

製品概要

 日立金属の「100kW超級高周波電力変換器用アモルファスブロックコア『AMBC』」は、高周波で駆動する大容量電力変換器のコイル部品用に開発したブロック型の磁心(コア)だ。材料に従来使われてきた電磁鋼板より鉄損(コアロス)が小さく発熱が少ないアモルファス(非結晶)合金を使うため、コイル部品を小型・軽量化できる。鉄道車両や太陽光発電などの分野での活用が見込まれる。
 パワー半導体が普及し、電力変換器も高周波環境で駆動する必要性が高まる中で、コイルを小型化しようとした場合、電磁鋼板のコアだと発熱による温度上昇が大きな問題になる。一方、発熱が少ないアモルファス合金を使おうとしても加工が難しく、できる形状には限りがあった。
 AMBCは日立金属独自の製法で、電磁鋼板を使う場合と同じ直方体の形状に整えることができ、電磁鋼板のコアを使う場合と同じ製造ラインで、生産性を落とさずにコイル部品を小型化できる。

Voice
日立金属 執行役 パワーエレクトロニクスマテリアルズ事業推進室長 植村 典夫氏

 栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 AMBCは「高周波環境で使う電力変換器などの機器を小型化したい」との期待を実現したアモルファスブロックコアで、アモルファスが使いにくいとされる分野にも展開できます。環境性能が高い素材であるアモルファス合金の特性を最大限に生かせる製法を探ることに、努力をつぎ込みました。
 日立金属は事業の裾野が広く、多くの分野の技術の融合により、社会の幅広いニーズに応えてきました。今後も素材の特性を生かした新製品の開発を進め、産業部材のさらなる高性能化、産業分野の省エネルギー化、二酸化炭素(CO₂)の排出削減に、これまで以上に貢献できるよう精進して参ります。

超小形電磁ブレーキ「SBR」

シンフォニアテクノロジー株式会社

製品概要

 シンフォニアテクノロジーは業界最小・最薄で省エネタイプの超小形電磁ブレーキを開発した。電磁ブレーキはコイルに通電して発生する電磁力で回転運動を止める装置。中でも無励磁作動型ブレーキは、サーボモーターで動く関節部分を保持・制動するもので、産業用ロボットや工作機械の安全を支える。
 開発品は絶縁方法の工夫や巻線の占積率を向上し、従来品と比べて体積比45%減の小型化を実現。消費電力も低減した。また社内のトライボロジー(摩擦学)の知見を摩擦面構成に生かし、摩擦材のコスト上昇を抑えた。ネジを使用しない構造で、自動組み立てが可能。従来タイプに比べて20%の製造コスト削減を実現する。
 小型の人協働ロボットに採用され、量産が始まっている。人間の手のように繊細に動く医療支援ロボットをはじめ、卓上ロボや医療用ロボ、サービスロボ、義手、ドローン、遊技機械など幅広い用途が期待できる。

Voice
シンフォニアテクノロジー 執行役員 成久 雅章 氏

 このたびは大変名誉ある「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を賜り、誠にありがとうございます。
 弊社は昨年創業100年を迎えることができました。「電磁クラッチ・ブレーキ」におきましても、創業当初からわが国で初めて生産を開始するなど、長年モノづくりに取り組んで参りました。
 近年、人件費の高騰や少子高齢化により、需要が旺盛な産業用ロボット業界では、ロボット用アクチュエーターの小型化に伴い、無励磁作動型電磁ブレーキも安全性に加え、より小型・薄型・軽量化が求められています。
 今回開発した「超小形電磁ブレーキ『SBR』」は、限られた空間内で消費電力を抑えつつ、大きなトルクを発生する課題に挑戦した成果と考えております。
 今回の受賞を励みとし、企業理念の「一歩先を行く技術」の研さんにまい進し、さらなる開発に取り組んで参ります。

産業用ロボット「MOTOMAN-MLT1700」

株式会社安川電機

製品概要

 安川電機の「MOTOMANーMLT1700」は、自動車のエンジンやサスペンションなどの組み立て時に、重量物搬送や位置決めとして利用する産業用ロボット。1000キログラムを超える重量物を搬送する一方で小型化を実現したため、自動化システムの小型化に貢献する。
 自動車製造現場で活躍するロボットは、一般的に6軸多関節を採用する。六つの駆動軸を持つ多関節ロボットは汎用性が高いが、高さ3.6メートル、質量9500キログラムと大型で取り扱いが難しい。
 MLT1700は、上下方向動作に特化した3軸構造を採用することで、可搬重量は1500キログラムながら高さ0.6メートル、質量2200キログラムと大幅な小型化を実現した。
 一方で、部品点数の削減や部品の小型化も実現。従来の6軸ロボットと比べて製品コストで50%、使用電力量は85%削減した。また電源容量も85%削減するなど設備の小型化にも貢献する。

Voice
安川電機 執行役員 ロボット事業部長 小川 昌寛氏

 このたびは「日本力(にっぽんぶらんど)賞」をいただき、誠に光栄です。
 自動車組み立て工程において重量物の車体への取り付けは、人への負担などから課題の一つでした。ロボット化が期待される中で、重量物を可搬できる超大型ロボットの使用は、スペース上の課題や工程の大幅改造が必要となるなど、最適なソリューションではないと考えました。そこで機能性と小型化の双方を実現することを目的にし、製品開発に着手しました。
 長きにわたって蓄積してきた機構技術を駆使することで目標を達成でき、実際の生産ラインへの導入にもつながりました。今後もお客さま目線を第一に、ソリューション全体を見据えたロボット開発に精進して参ります。

鉄道車両向け動揺防止アクチュエータ

日本精工株式会社

製品概要

 日本精工が開発した鉄道車両の横揺れを抑制するボールネジ式の制振アクチュエーター「動揺防止アクチュエータ」は、既存の空圧式制振アクチュエーターと比べ、揺れへの応答性を向上した。装置も小型化し、台車と車体の限られた空間にも設置できる。車両の乗り心地の向上と高速化の両立に貢献する。
 開発した制振アクチュエーターは台車に設置し、センサーで横揺れの振動を検知。揺れを抑える方向にボールネジで力を加えて、車体の揺れを防ぐ。ボールネジの駆動にはモーターを活用。空圧式と比べて応答性が高く、効率的に振動を抑えられる。
 鉄道車両の高速化が進む中、線路のうねりやトンネルでの空気圧による車体の揺れなどを原因とする乗り心地の悪化が課題となっていた。回転運動を直線運動に効率的に変換するボールネジの特性を活用することでこの課題を克服した。
 2017年にJR東日本の特急「スーパーあずさ」の新型車両で採用された。

Voice
日本精工 執行役 産業機械事業本部副本部長 阿知波 博也氏

 このたびは、栄えある超モノづくり部品大賞の「日本力(にっぽんぶらんど)賞」をいただき、誠にありがとうございます。
 今回受賞した「動揺防止アクチュエータ」は、鉄道車両に搭載されるフルアクティブサスペンションの高性能化に向け、高精度なボールネジを用いて開発した電動式のアクチュエーターです。川崎重工業の動揺防止制御装置の駆動源として採用いただいており、JR東日本の「スーパーあずさ」やクルーズトレイン「TRAIN SUITE四季島」に装備されております。
 今後はこのアクチュエーター開発で培った技術をさまざまな用途に展開し、安全・安心・快適の実現に微力ながら貢献して参ります。