2019年受賞部品

電気・電子部品賞

自動車のノイズ対策を大幅に軽減する高EMI耐量オペアンプ「EMARMOUR(イーエムアーマー)シリーズ」

ローム

外付け対策部品 不要に

 ノイズ耐量を業界最高に高めた車載機器向けの演算増幅器(オペアンプ)。微少な電気信号を増幅する部品で、一般的なオペアンプは外付けフィルター回路などにノイズ対策をするが、受賞品はノイズ耐量に優れ、外付けのノイズ対策部品を不要にできる。多様な車載機器で大幅な小型化と設計期間の短縮、設計負荷の軽減が図られるのが特徴だ。
 オペアンプは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの基幹システム、センサーなどの車載電装機器全般で数十から数百個使われ、今後の搭載数増加も予想される。従来、設計段階でのノイズ検証が難しく、最終評価段階でノイズ対策が不十分だと再設計を余儀なくされる課題があった。
 受賞部品は、回路設計、素子配置などのレイアウト技術や独自工程を活用してノイズ耐量を高め、顧客ニーズに応える。

Voice
ローム 取締役 上席執行役員 LSI開発本部長 立石 哲夫 氏

 このたびは、栄えある賞をいただきまして、誠に光栄に存じます。
 自動車の電装化や産業機器の高機能化に伴い課題となっているのが、回路の誤動作を引き起こす可能性のあるノイズへの対策です。
 受賞製品「高EMI耐量オペアンプEMAROURシリーズ」は、こうしたノイズ対策の設計工数を大幅に軽減するICで、高い技術力と豊富な経験を積んだアナログエンジニアが回路設計、レイアウト、プロセスを駆使した職人技によって生み出しました。
 今後も新発想とそれを実現する匠の技によって、技術革新に貢献するアナログICを開発してまいります。



小形ギヤモータ 「IoT対応自己遮断仕様」

椿本チエイン

装置を高精度に遠隔監視

 ギアモーターにIoT通信機能を搭載して、遠隔からのリアルタイム監視を実現した。高精度センサーを内蔵し電力、温度、振動の状態をデータとして取得。装置の異常を検知すると自動停止し、トラブルの発生を未然に防ぐ。異常発生時のデータを自動保存する機能により、トラブルの要因分析も進めやすくしている。
 椿本チエインが蓄積してきたモーターや減速機の挙動に関する知見を生かした。遠隔監視や予知保全を手軽に始められる点を訴求し、生産ラインや物流搬送ラインなどの自動化ニーズを取り込む。
 パソコン用無償ソフトウエアによる操作画面から各種データの保存やパラメーターの変更などを設定できる。それぞれの負荷状況を波形表示で確認可能。幅広い業界から大きな反響があり、引き合いが増えている。

Voice
椿本チエイン 専務執行役員 精機事業統括 川口 博正 氏

 モノづくりの現場において、トラブルによるダウンタイム低減を図るため、IoT市場は急速に拡大していくと考えられます。
 当社は単なるセンサーの組み合わせではなく、駆動機器と融合したIoT対応商品の開発を進めてきました。受賞製品はIoTに対応した業界初のギヤモータです。労働人口の減少による設備の自動化を促進し、スマート工場への取り組みに貢献できると確信しています。
 今後も引き続き、変化し続ける市場ニーズにタイムリーにお応えして、モノづくりの枠を超えて最適なソリューションを提供していきます。



トルクセンサ内蔵軸継ぎ手(カップリング)「SENSINGFLEX」

三木プーリ

トルクを即時確認

 トルクをリアルタイムに確認できるセンサー内蔵型の軸継ぎ手(カップリング)。検出したトルクは、無線通信によりパソコン画面などで数値や波形データを表示。ワイヤレス給電によりセンサーと無線通信の電力を常時供給可能。減速機や変速機を介して負荷されるトルクも正確に把握する。
 センサー付きカップリングは国内初の製品。IoT対応デバイスとして、製造現場の課題を解決する。
 工作機械やロボットに組み込み、常時状態監視や異常検知が可能になる。カップリング本体脇に送電ユニットを設置し、ワイヤレス給電する。
 検出結果はアナログ電圧としても出力でき、データロガーやプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)に対応。従来、カップリングのトルクを測定する場合、カップリング2個と測定機器が必要だった。

Voice
三木プーリ 技術本部 開発部長 廣澤 雅晴 氏

 おかげさまを持ちまして栄えある「モノづくり部品大賞」の「電気・電子部品賞」の受賞にあずかり、大変光栄に存じます。
 本製品は、知能化が進む機械に必要な機械要素部品という自問のもと、私どもがたどり着いた回答の一つです。過去何度か「機械部品賞」など受賞の栄誉にあずかりましたが、第4次産業革命といわれる中で新たなコンセプトのもと取り組んだ本製品が「電気・電子部品賞」の受賞に至ったことは、望外の喜びです。
 私ども三木プーリでは、今回の受賞を励みとして、AI・IoT社会に貢献できる製品開発に引き続き取り組んでまいります。



昇降圧DC/DCコンバーターIC「RP604シリーズ」

リコー電子デバイス

消費電流90分の1

 消費電流が同社従来品と比べて約90分の1となる0.3マイクロアンペアまで抑えた昇降圧DC/DCコンバーター「RP604シリーズ」を開発した。
 センサーや通信用ICなどを搭載するIoT端末は、間欠動作制御で駆動することが多く、バッテリーの長時間駆動や小型化といった需要が高まっている。超低消費電流により、同コンバーターを使った場合の電池寿命を従来品より3倍強に伸ばした。
 電源モジュールとして構成する際は、超低消費電流の特性により、電池の充放電時間をあまり変化させずに電池出力電圧をフラット化することができる。これにより、後段のシステム設計が容易になる。
 今後はますますIoT化が進むと見られる中、広がりを見せる太陽電池などエナジーハーベスト(環境発電)駆動のIoT端末にも対応できる。

Voice
リコー電子デバイス 設計センター事業推進課 シニアスペシャリスト 志和屋 陽一 氏

 受賞できた喜びと同時に、IoT機器の長寿命化に関して、これからも世の中に貢献していきたいと考えております。
 「環境」や「省エネルギー」といったことは、将来に向けて大切なキーワードとなっています。「エナジーハーベスト」といった自然エネルギーで駆動する機器など、社会全体で役立つアイテムがこれからも多く出てくると思います。当社だけでなく同業他社も続々と同様の取り組みを進めています。
 今回の受賞を機に、「RP604シリーズ」を使ってみたい、という声が広がって頂くとうれしいです。