2019年受賞部品

奨励賞

0.6×0.3㎜のセラミックコンデンサで動作可能 超小型降圧DC/DCコンバータ「XC9281/XC9282シリーズ」

トレックス・セミコンダクター

電源回路 省スペース化

 IoTやAIが普及し電子機器は、小型化や長時間駆動が求められている。
 トレックス・セミコンダクターの降圧DC/DCコンバーター「XC9281/9282シリーズ」は、そうしたニーズに適した製品。
 同製品の発振周波数は6メガヘルツ。通常、高周波化すると変換効率は悪くなるが、消費電力などを削減できる。変換効率は従来品に比べ、全負荷領域で5%以上の高効率化を実現した。
 同社は、外付け部品の小型化も図り、電源回路の面積を従来品の10分の1にしたことで省スペース化に成功した。IoT機器やヒアラブル・ウエアラブル機器など幅広い用途での採用が検討されている。

Voice
トレックス・セミコンダクター 社長 芝宮 孝司 氏

 このたびは栄えある賞をいただき、誠にありがとうございます。
 昨年の「プッシュボタンロードスイッチIC」に続き、2年連続の受賞もまた大変光栄に存じます。
 近年の電子機器の小型化、搭載電池の高寿命化に貢献するのが、今回受賞した「超小型降圧DC/DCコンバータXC9281/XC9282シリーズ」になります。0.6×0.3ミリメートルのセラミックコンデンサーでの動作を可能にしたことにより、実装面積の省スペース化を実現しました。
 今後も環境に優しい超低消費の電源IC作りで社会に貢献できる企業を目指してまいります。



配電工事用ロボット アシストアーム

スギノマシン/北陸電力

電線離隔器の設置支援

 北陸電力とスギノマシンが共同開発した配電工事用ロボット「アシストアーム」は、高所作業車に設置し、配電工事の中でも最も頻度の高い電線離隔器の設置工事を支援する。電線離隔器は電線や電柱の交換時に取り付けるもので、その際に空中で電線を切断したり、接続したりする。通常は高所作業車のカゴに2人の作業員が乗り、1人が主作業をし、もう1人が電線を支えるなどの補助をする。この補助作業をロボットがすることで作業者を1人減らせる。
 ロボットの中核となるアーム部分は伸縮、前後の傾斜、横への平行移動の機能を持ち、操作盤のレバーで操れる。最適な可動範囲や可搬質量を確保しつつ、簡便な操作を実現した。

Voice
スギノマシン 執行役員 プラント機器事業本部 生産統括部長 酒井 英明 氏

 この度は、名誉ある奨励賞をいただき、誠にありがとうございます。
 配電工事の現場作業者の方々は熱い夏や寒い冬も大変な作業をしておられます。本配電工事用ロボットを北陸電力殿では既に実戦配備され、作業者の方々の負担を軽減でき、大変うれしく思っております。北陸電力殿をはじめ、工具メーカーや大学機関とも連携し開発しました。チームワークは大変良好で、難しい課題を皆さんの協力を得て開発を完遂できました。チームの皆さんには心より感謝申し上げます。
 今後も現場の声を聞いて改良を加えながら貢献していきたいと考えています。



アークタイムウオッチャー

住電通信エンジニアリング

溶接時間を計測・管理

 「アークタイムウオッチャー」は、溶接機の溶接時間を計測・管理し、溶接現場作業の効率性や生産性を向上する製品。溶接機に後付けできるセンサーで電流値を取得し、親機に無線送信する。1台の無線受信機で半径約70メートル範囲内のセンサー最大50台のデータを受信可能。データは、グラフやリポートの形式で出力できる。
 ネットワーク環境内にあるすべてのパソコン端末から稼働状況をリアルタイムに確認可能。また、計測した溶接時間を作業工程や作業員、溶接機のデータとひも付けることができる。
 同型部品・同作業の比較やチーム・個人ごとの溶接稼働実績を算出して工場全体を「見える化」し、作業員のモチベーションアップにも活用できる。

Voice
住電通信エンジニアリング ITエンジニアリング事業部 主事 秋元 英男 氏

 この度は、モノづくり部品大賞の「奨励賞」をいただき、誠に光栄に存じます。
 「アークタイムウオッチャー」は、定量化や一元管理が難しかった溶接作業でアークを出している時間を把握し、効率化や生産性向上に取り組みたいというお客さまの声をきっかけに生まれたシステムです。レポートなどを通じて運用を意識したデータ活用まで提案させていただくところが弊社の特長であり、ソリューションであると考えております。
 今回の受賞を励みに、これからもお客さまの改善を支援できるソリューションを通じてモノづくり貢献して行きたいと考えております。       



ロボットハンド用グローブ型センサモジュール

日本航空電子工業

対象物距離・把持力検出

 日本航空電子工業が開発した「ロボットハンド用グローブ型センサモジュール」は、対象物を検出する機能を容易に付加できる。工場などで既に使われているロボットハンドに把持対象物を検出するセンサーが実装されていなくても、指先に対応する位置にセンサーを配置することで死角が生じることなく、指と対象物間の距離を近接センサーで、把持力を圧力センサーで検出できる。
 独自開発の薄型で屈曲性に優れたフィルム型電気接続技術を適用。センサー、配線、電気接続の各部を一体化したグローブ形状にすることで電気接続部が屈曲し、配線の巻き込まれを抑制した。熱レスによる配線接続・部品実装で耐熱性の低い基材にも実装できる。

Voice
日本航空電子工業 商品開発センター エグゼクティブマネージャー 富岡 昭浩 氏

 奨励賞を頂戴し光栄に存じます。
 今回受賞したロボットハンド用グローブ型センサーモジュールは、これまでに開発してきたフレキシブルな電気接続技術を「動きのあるモノ」に展開させたセンサー、配線、コネクターを一体化したモジュールです。ロボットハンドへの感覚付与を容易にし、人とロボットとの調和に貢献することを目指しております。
 今後も、独創的な材料・プロセス研究とセンシング技術の両輪で未開拓であった領域の製品群を創出し、お客さまの独創的な商品開発に寄与できるよう引き続き開発に取り組んでまいります。



銅電極加工用エンドミルシリーズ

日進工具

長時間の安定加工実現

 ロングネックタイプのエンドミルで形彫り放電加工による金型製作に使う銅電極の加工に特化。長時間安定した加工を実現する。
 銅電極の加工では深彫り形状が多い。刃部形状を最大限鋭利にし、高アスペクト比がゆえの物理的なたわみを抑制した。切り損じによる切削バリの発生を極力抑える「切れ味の良い工具」となり、切れ刃の耐久性も向上。
 著しい工具摩耗を解決するため、工具表面には銅と親和性が低く、平滑性の高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を被覆した。摩耗を抑制することで長時間の加工が可能。銅に対し剝離しやすいDLC膜を刃部形状の鋭利化との相乗効果で欠点を回避し、膜の効果を引き出すことに成功した。

Voice
日進工具 社長 後藤 弘治 氏

 受賞製品を評価していただき、非常にうれしく思います。
 銅合金の加工に最適なロングネックタイプのボール、スクエアおよびラジアスエンドミルであり、長時間安定して高精度な加工が可能となりました。刃部を極限まで鋭利化した新発想の工具デザインを採用し、切削性を高めることで工具のたわみや切削バリの発生を抑えることに成功しました。さらに、厳選したDLC膜を採用し、圧倒的な長寿命を実現しました。
 今後も当社ならではの時代の先を行く工具を創造し、製造業の発展に貢献してまいります。       



高速・静音コンパクトナットボールねじ

日本精工

送り許容速度1.3倍に

 サイクルタイムの短縮に貢献する工作機械向けボールネジ「高速・静音コンパクトナットボールねじ」を開発した。
 独自技術で送り許容速度が同社従来製品と比べ1.3倍の毎分100メートルに向上。走行音も同4デシベル低減し、高速静音を実現した。ボールネジのナット外径を小さくできる循環機構を採用し「DIN」(ドイツ規格協会)にも対応する。
 循環機構(鋼球を循環してナットを送る機構)に「こま式」を採用。独自の解析技術で鋼球がスムーズに循環する最適なこま形状を実現した。リードや軸径に応じて大型から小型機、高精度から高速機まで幅広い機種に対応できる製品を展開。加工品質や加工効率の向上に貢献する。

Voice
日本精工 産業機械技術総合センター 直動技術センター 所長 宮口 和男 氏

 この度は、奨励賞を授与頂き、誠にありがとうございます。
 受賞した「高速・静音コンパクトナットボールねじ」は、高速性、静音性に加えて、工作機械の加工品質や加工効率の向上に貢献する製品であり、日本のみならず欧州をはじめとしたグローバルにモノづくりに貢献できる製品です。
 本製品を開発する上では、コンパクトなこま式ナットを実現する上での寸法制約などの課題に独自の解析技術を用いて克服し、世の中に送り出すことができました。
 今後も世界トップクラスの技術力を活かして、社会の期待に応え、産業の発展に貢献していく所存です。        



アクアREVOドリル

不二越

使用寿命 2倍以上

 使用寿命を従来比2倍以上にした。新開発の素材とコーティング、新設計の刃形形状で長寿命化と高精度を実現。生材から高硬度材までさまざまな材料に対応する。高い靱性(じんせい)を保ったまま耐摩耗性も高めた超硬素材とともに、膜硬度と耐酸化性に優れた超平滑化処理で、摩擦係数を低減したコーティング方法を開発した。
 直線切れ刃の形状を採用し、切削時の応力を分散。あらゆる加工条件で切りくずの形状を安定化させ、排出性を高めた。
 従来ドリルの切れ刃は中凹みのフック刃形で、応力が刃先コーナー部に集中するため、同部位が欠損しやすかった。また、外周のネガ切れ刃の影響で切りくずの一部の伸びが生じることがあった。

Voice
不二越 工具事業部 関口 徹 氏

 奨励賞を賜りありがとうございます。お客さまからのご支持のおかげと感謝申し上げます。
 受賞した超硬ドリルは、材料・形状・コーティングという工具の基本要素のすべてを一新しました。寿命は他社従来品に比べ2倍以上、一般鋼から高硬度鋼までの幅広い材料で高品位な穴加工を実現し、長寿命・高能率・多用途といった穴あけ加工に求められる全機能を飛躍的に向上させました。
 今後も製品構成を拡充し、モノづくりの世界に革命(Revolution)を起こしたいと思います。