2020年受賞部品

モノづくり部品大賞

正確で高感度な血液検査を実現する画像処理モジュール

日立製作所/日立ハイテク

AI分析で正確性と効率 大幅に向上

 エイズウイルス(HIV)やB型肝炎をはじめとする血液による抗原・抗体検査では、免疫分析装置に高い正確性と処理速度が求められている。
 日立製作所と日立ハイテクが開発した画像処理モジュールは、免疫分析装置による血液検査の正確性と効率が大幅に向上した。血液検体の表面に泡が含まれていると正確な検査ができないため、泡が含まれていないかを人工知能(AI)が分析し、検査の実施可否を自動で判定する。画像処理モジュールによる検査の可否判定機能を搭載した免疫分析装置は、世界初という。泡が原因で生じる検査のやり直しを防止することで、正確な診断や安全な血液製剤の提供などに貢献する。
 免疫分析装置は、検体を分注ノズルで吸った後、検査部に検体を送り、検体と試薬を混ぜて検査する。その際、泡(空気)を含んだ検体を送ってしまうと検体の量が減り、検査のやり直しにつながることがあった。
 同モジュールは、血液検体の表面に発生する泡の状況を、約100万件の教師データを基にAIが画像分析し、検査実施の可否の判定を自動で行う。
 最初に、撮影した画像内の泡と泡以外の特徴を抽出し、泡の位置と大きさの情報をAIが算出。この情報を用いて、検査に影響を与えるかを判定する「暫定版の画像判定器」を生成する。
 次に、生成した画像判定器の判定根拠の可視化を行う。画像内の全ての泡の位置に判定根拠が可視化されるまで画像判定器の生成を繰り返す。最終的に検査に影響を与える泡のみを高精度に判定する「確定版の画像判定器」を生成し、検査実施の可否判定を自動で行う。
 これらの画像処理技術を使用することで、従来の圧力センサーによる判定に比べ、誤って検体を検査受け入れにする確率は10分の1に、また、誤って検体を検査拒否にする確率は100分の1に判定精度が向上した。検体検査の処理能力も高まり、これまで1時間に170件行っていた検査を、同300件行えるようになった。
 同モジュールを組み込んだ免疫分析装置は、2019年に1700台の受注があった。今後、10年間で3万5000台の受注を目指す。

Voice
  日立ハイテク アナリティカルソリューション事業統括本部 医用システム製品本部 本部長 坂詰 卓 氏

 このたびは、“超”モノづくり部品大賞において「大賞」を頂戴し、誠に光栄に存じます。
 私たちの事業領域の体外診断は、「血液検査」が大きな柱です。今日、多くの医療機関では当日検査・当日診断を行っています。患者さまから採血後、「検査結果が出たらすぐ診察」という流れは当たり前になりました。この背景には、臨床検査技師の皆さまの多大な努力があります。そして、日立グループは50年前から体外診断の自動化に取り組み、今日に至るまで多くの製品を通じて迅速かつ正確な診断に貢献してきました。
 今回受賞した「画像処理モジュール」は、臨床検査技師による目視確認作業の一部を、AI技術(100万件以上の大量データの活用)により自動化しました。今後も体外診断の領域でさらなる自動化を通じて検査業務を効率化し、人々のQOL(生活の質)の向上に貢献してまいります。

モノづくり日本会議 共同議長賞

RO(逆浸透)膜浄水システム用「高造水・高回収率RO膜エレメント」

東レ

排水量を半減 処理水量は1.5倍

 RO膜エレメントは、イオンなどを分離するRO膜を供給側流路材と透過側流路材とで挟む形で構成され、飲料水製造、工業用超純水の製造、廃水回収などの用途で使われている。深刻化する世界の水問題の解決のため、東レは大幅に効率よく処理が可能な小型RO膜エレメントを開発した。
 従来の小型RO膜エレメントが搭載された家庭用RO浄水器は、処理水量に対して大量の排水が必要であり、さらに処理水を貯蔵するためのタンクでの汚染の懸念があった。
 同社は排水量を減少させても塩分の結晶化を抑制できる流路材技術、処理水の流動抵抗を大幅に低減する省エネルギー流路材技術を開発することで、排水量を従来の2分の1に抑え、また処理水量を1.5倍に向上させることに成功した。
 新商品は2019年11月に発売され、節水、省エネルギー、タンクレスで省スペースの環境配慮型製品としての普及拡大が見込まれている。

Voice
東レ 水処理事業部門長 兼 水処理システム部長 獅山 卓朗 氏

 このたびは、「モノづくり日本会議 共同議長賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
 「RO(逆浸透)膜浄水システム用『高造水・高回収率RO膜エレメント』」には、高性能RO膜、流体解析・構造解析技術、高分子精密加工技術を駆使して創出された革新流路材が搭載されています。これによりRO膜エレメントの造水量と回収率を飛躍的に高め、省エネや排水量低減を実現いたします。
 当社は「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」「TORAY VISION 2030」で、水処理膜によるグローバルな水問題解決を取り組むべき課題に掲げています。
 今後も先端材料の研究・技術開発に取り組み、世界の水問題解決と持続可能な社会に貢献してまいります。

ものづくり生命文明機構 理事長賞

農作物を病害虫から守る!黄色粘着捕虫シート「ラスボスRタイプ」

大協技研工業

害虫捕獲力1.6倍

 大協技研工業が開発した「ラスボスRタイプ」は、捕獲力を同社従来品より1.6倍に高めた粘着式捕虫シート。ビニールハウスなどの施設園芸で作る農作物を対象に、農薬など他の害虫対策技術と組み合わせ、システムとして使うことを想定する。
同シートは紙製で、長さ260ミリメートル×幅115ミリメートル。黄色の粘着シートに植物の葉を模したひし形の模様を最適に配置した。色や光のコントラストを工夫し、シート中央部でも効率的に捕虫できるよう捕獲性能を高めた。半 年強の期間利用できる粘着力を持ち、複数をハウス内に吊り下げて使う。
 葉や花から養分を吸引して農作物に被害を及ぼすコナジラミ類やアザミウマ類といった小さな害虫を捕獲する。一方、益虫であるマルハナバチなどの受粉昆虫については脱出できるようにしている。
 兵庫県立農林水産技術総合センター、浜松医科大学と共同開発した。

Voice
大協技研工業 代表取締役社長 大山 純平 氏

このたびは、当社の粘着式捕虫シート「ラスボスRタイプ」に、「ものづくり生命文明機構 理事長賞」を賜り、誠にありがとうございます。受賞は開発にご協力いただいた諸氏並びにお客さま、そして従業員の奮起によるものです。
ラスボスRタイプは、当社が得意とする粘着製品の技術を多くの業界に広げようという用途開発の中で生み出したものです。シートの色やコントラストを試行錯誤によって工夫し、ラスボスRタイプは従来品より多くの虫を引きつける捕虫性能を得ることができました。
今後もこうした地道な努力を欠かさず、新製品を数多く開発していきたいと思っています。

日本力(にっぽんぶらんど)賞

低燃費タイヤDUNLOP「エナセーブ NEXTⅢ」

住友ゴム工業

新ポリマーとCNF採用

 「エナセーブ NEXTⅢ」は、ダンロップブランドの旗艦低燃費タイヤ。新ポリマーの採用で従来製品に比べ、2万キロメートル走行後のウエットグリップ低下を10%から5%まで半減した。同社調べで植物由来の繊維状素材の「セルロースナノファイバー(CNF)」を世界で初めてタイヤに採用し、環境負荷低減に寄与する。素材は他社との協業で開発し、タイヤの課題に適応しながら新しい機能性を追加した。
 トレッドゴムに新しく採用した水素添加ポリマーは、素材メーカーのJSRと共同で開発。分子の強い結合力と、切れても元に戻る結合を持つ水素添加ポリマーを使いこなすことができた。CNFをタイヤに応用できる技術を日本製紙、三菱ケミカルと開発した。石油由来のタイヤ補強材の一部をCNFに置き換え環境負荷を低減。CNFの繊維をタイヤの回転方向に配列することで、タイヤの周方向は堅く強度を高め、径方向は柔らかさを兼ね備えた。

Voice
住友ゴム工業 常務執行役員 研究開発本部長 兼 材料開発本部長 村岡 清繁 氏

このたびは、名誉ある「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を頂き、誠にありがとうございます。
 当社では、自動車産業に改革をもたらすCASEやMaaSに対応すべく、タイヤ開発コンセプト“SMART TYRE CONCEPT”を掲げています。選出いただきました「エナセーブ NEXTⅢ」は、同開発コンセプトの主要技術である「性能持続技術」と「ライフサイクルアセスメント」を採り入れた第1弾商品です。
 性能向上に寄与した新材料の採用には困難を伴いましたが、材料メーカーさまをはじめ、多くの方々のご協力によって、さまざまな課題をクリアし製品化することができました。
 今後も本製品の開発で培った技術を新商品へ展開していくとともに、次世代のモビリティー社会の課題解決に向けたモノづくりに努めてまいります。

研磨剤スラリーを使用しない半固定砥粒研磨工具「LHAパッド」

ノリタケカンパニーリミテド

環境に優しい

 半固定砥粒研磨工具「LHAパッド」は、電気自動車(EV)などの進展で需要増が見込まれるパワー半導体材料のシリコンカーバイド(SiC)などを削ったり、磨いたりする工具。ダイヤモンドやセラミックスを混ぜた特殊な研磨剤スラリーを使用しないため環境に優しい。加工コストはスラリーを使用した場合と比べて約45%低減することが可能だ。SiCは加工が難しく、スラリーは使用後に産業廃棄物として処理が必要となるなど、大きなコストがかかっていた。
 LHAパッドは研磨剤が適度に動く形でパッドの気孔中で砥粒が回転できるように位置のみを固定している。半導体の基板に傷をつけることなく研磨ができる。砥粒が一定位置にとどまることで研磨加工を1.6倍速くできるほか、加工面の平たん性も1.8倍向上する。従来は研磨機械の回転でパッドや加工物の外周にスラリーが流れ、加工精度上の課題があった。

Voice
ノリタケカンパニーリミテド 常務執行役員 永田 滉 氏

 このたびは、「日本力(にっぽんぶらんど)賞」をいただき、光栄です。誠にありがとうございます。
 当社は、研削・研磨工具の総合メーカーとしてモノづくり産業を支えています。私は長年、研削・研磨工具に携わってきました。今回開発した研磨剤スラリーを使用しない半固定砥粒研磨工具「LHAパッド」は、今後進んでいくEVや第5世代通信(5G)向けなどの新しい工具として提案いたしました。世の中の環境面やコスト面などで、お客さまのお役に立てる製品であると考えております。
 今回の受賞を励みにさらに上を目指した研削・研磨工具や、加工システムの開発を含めて取り組んでいく所存です。

ブレードスキャン

小糸製作所

ハイビーム制御にスキャン方式採用

 「ブレードスキャン」は、世界で初めてスキャン方式を採用した自動のハイビーム可変ヘッドランプシステム。発光ダイオード(LED)数は、従来品と同じ12個でありながら、LED300個と同等の細かな配光を実現した。対向車や先行車に配慮しながら、歩行者を早く照射することで交通安全、事故防止に寄与する。トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」の「RX」に採用されている。
 2012年に商品化したハイビームの一部を遮光して前方車両以外の領域でハイビーム同等の視界を実現する「ハイビーム可変ヘッドランプシステム」に新開発のスキャン方式を採用した。同システムは、高速回転する2枚のブレードミラー(反射鏡)にLEDの光を照射し、光の残像効果を使って前方を照らす仕組み。
 同社は、初めて取り組んだスキャン技術やミラーを回転させる専用モーターの開発など、10年以上の開発期間を経て実用化した。

Voice
小糸製作所 代表取締役副社長 有馬 健司 氏

 このたびは、「“超”モノづくり部品大賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を賜り、誠に光栄に存じます。  「ブレードスキャン」は、ハイビームの配光を自動制御するシステムで、回転式ブレードミラーと光の残像効果を用いることで、片側12個のLEDで数百個のLEDに相当する細かな遮光制御を可能としました。このユニークな技術は光源からメカトロニクス、ランプシステム制御までを一貫して開発、生産する当社の技術力を結集した成果であり、歩行者の早期発見、夜間の交通事故低減に貢献できるものと考えています。
 今回の受賞を励みに、今後も企業メッセージ「安全を光に託して」のもと、お客さまの安全を守る製品の開発に取り組んでいきます。

省エネ・常時補正制御型電動油圧アクチュエータ「e-Zero」

南武

消費電力90%削減、配管不要 高い施工

 「e-Zero」は、モーター、ポンプ、シリンダーが一体となった電動油圧アクチュエーター。一般的な油圧システムは、中央部にあるポンプをモーターで回し、複数の油圧シリンダーを駆動する。複数のシリンダーの内、一部を動かす場合でも油圧ポンプを回し続ける必要があるが、「e-Zero」は各シリンダーを動かす時のみオンデマンドで各ポンプを駆動するため、エネルギー効率が良い。自動車でいうアイドリングストップのような性能で消費電力を従来比90%削減でき、騒音が少ない。
 配管が必要なく電源一つで設置できる施工性の高さも特徴だ。サーボモーターとボールネジを組み合わせた場合と同レベルの位置制御と、それ以上の荷重制御ができる。
 ロボットや介護機器など、従来油圧システムの利用が少なかった分野でも活用が期待される。

Voice
南武 代表取締役 野村 伯英 氏

 このたびは、「“超”モノづくり部品大賞 日本力(にっぽんぶらんど)賞」を頂き、誠に光栄に存じます。
 受賞部品である「e-Zero」は、電動モーター、油圧ポンプ、電動シリンダーが一体となった電動油圧アクチュエーターで、従来システムに比べ約90%の省エネルギーが期待できる製品です。新たな事業の柱となることを目指して開発した製品であり、受賞は全社員が喜んでおります。審査員の先生をはじめ、関係者の皆さまに深くお礼申し上げます。
 全世界的に“脱炭素”の動きが進む中、現在、「e-Zero」に多くの引き合いが寄せられています。当社は本業である「e-Zero」の拡販を通じ、社会課題の解決に貢献していく所存です。