2021年受賞部品

生活・社会課題ソリューション関連部品賞

アテックミスト

株式会社アテック

浴槽不要、被介護者の洗浄手軽に

 身体洗浄器「アテックミスト」は、浴槽不要でベッドに寝ている被介護者の身体を手軽に洗える。手持ちのノズルからミストシャワーを噴霧し、タオルで拭う。全身を洗う場合は、200ミリリットルの洗浄水を使い、約10分で完了する。装置は直径165ミリ×高さ250ミリメートルの円柱で、重さは3キログラムと持ち運びが容易だ。
 被介護者から約20センチメートルの距離をとり、手持ちのノズルで直径30マイクロ~50マイクロメートルのミストシャワーを噴霧する。洗浄したい箇所を3往復ほど噴霧すると、ミストが100マイクロメートルの毛穴に入り込み、汚れや皮脂を浮き上がらせる。最後にタオルで拭い、洗浄は完了。被介護者は入浴後のような爽快感を体感できるという。
 ミストのサイズが小さく、ベッドやシーツがぬれない。被介護者を浴室まで連れて行かずに洗浄できるため、老老介護の現場などでも活用を期待する。

Voice
アテック 会長 芦田 拓也 氏

 このたびは、「生活・社会課題ソリューション関連部品賞」を賜り、大変光栄に存じます。
 高齢社会に向かっている日本において、老老介護の問題は避けて通れない課題です。同製品は、私自身が寝たきりになった時に、妻が介護を楽にできるようにとの思いから開発しました。浴槽まで行かずとも、布団に寝たままで簡単に被介護者の身体を洗えます。
 同製品により、皆さまがより快適で爽快な介護生活を送れるようになれば幸いです。
 今回の受賞を機に、在宅介護に資する新製品開発と現行製品の改善・改良を進めてまいります。

オールラウンド免震

株式会社奥村組

微振動を4分の1に抑制

 「オールラウンド免震」は、交通機関や空調機器などから建物に伝わる微振動を抑制する免震システム。一般的な免震建物は微小な振動に対して耐震建物より揺れやすい。
 超精密機器が設置される施設では、少しの振動で生産性や測定精度を低下させる恐れがある。同システムは、通常の免震建物と比較して微振動を4分の1に抑えられる。微小な揺れを抑えつつ、大地震時の揺れにも対応する。
 天然ゴム系積層ゴム支承やダンパーなどの一般的に用いられる免震装置と併せ、独自に開発した「微振動対策ダンパー」を導入した。同ダンパーは、粘性体の中に複数の抵抗板を積層状に配置することで、微小な振動に対して高い減衰性能を発揮する。
 大地震時にはダンパーが切り離され、免震装置が作動する仕組みとした。

Voice
奥村組 執行役員 技術研究所 所長 川井 伸泰氏

 このたびは、「生活・社会課題ソリューション関連部品賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
 この結果はひとえに、技術的なご指導を頂いた東京大学藤田名誉教授、共同開発したオイレス工業さま、そして何より自社施設への採用を決断し、新しい「モノづくり」に大きな推進力を与えていただいた日進工具さまのご支援の賜物だと考えています。
 当社は、免震技術の研究・実用化にいち早く取り組み、さまざまな問題に挑戦することで培ってきた技術力が強みです。
 今回の受賞を励みに、今後も社会のニーズに応え、持続的な発展に貢献できるよう、安心・安全なソリューション技術を開発、提供していく所存です。

快適なデスクワークをサポートする上下昇降天板傾斜デスク「REGAS」

株式会社オカムラ

部品小型化で大ガラス面を実現

 オカムラは、ユーザーの身長や姿勢に合わせて上下・斜めに天板を動かせる上下昇降天板傾斜デスク「REGAS(リーガス)」を開発した。天板に傾斜機構を持つデスクは他にもあるが、傾斜機構部品が大きくなり過ぎて姿勢が仰々しくなったり、天板を使う際にガタつきが発生するなどの課題があった。
 同社は、天板傾斜機構の5つの構成部品を従来の金属から樹脂に変更した。従来、それぞれの部品同士にはクリアランス(隙間)が発生していたが、樹脂の採用で主要な構成部品の「天板支持部品」と「回転軸」を一体化でき、ガタつきの原因である隙間を削減した。
 機構部品の大幅な小型化を図り、見た目も向上し、コストも低減した。傾斜角度は従来の0~12度程度から0~15度で調整できる。ユーザーの姿勢に合わせられる傾斜角度を実現した。

Voice
オカムラ プロダクトデザイン部 田中 敦 氏

 このたびは、栄えある賞を賜り、誠にありがとうございます。
 「REGAS(リーガス)」は、天板がワンタッチで上下昇降・傾斜する機能を有し、さまざまな人に合った身体負荷の少ない快適な作業姿勢へと導くデスクです。開発にあたり、従来品の傾斜構造を大幅に見直し、構成部品を少なくしつつサイズダウンしたことにより、デザイン性と操作性の両立を実現しました。
 受賞を励みに、当社のミッションである「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」のもと、真摯にモノづくりに取り組んでまいります。

建物における防鳥技術「TORINIX」

株式会社竹中工務店/NIPエンジニアリング株式会社

屋上外周部に設置、高い忌避効果

 竹中工務店とNIPエンジニアリングが共同開発した「TORINIX(トリニックス)」は、ハトやカラスなどの鳥害(建物へのふん害やシール材の破壊行為など)を防ぐ技術。鳥害を防止する上で最も重要な屋上外周部に機器を設置し、外周部に止まった鳥をセンサーで検知する。検知すると管からのエア吹き出しによる刺激や音で驚かし、忌避させる。
 主な特徴は、①薬剤や鋭利な刺激物などを使用せず鳥を傷つける恐れがない、②同じ屋上外周部に設置される避雷導体と兼用できるため投資コストを抑える、③地上から見上げた際に装置が見えず、建物の意匠性を損なわない-などが挙げられる。
 プロジェクトに適用した検証結果では、極めて高い忌避効果を確認した。今後は屋上外周部だけでなく、駅舎内や建物併設の駐車場内部など半屋外スペースへの鳥の止まり対策として導入する。

Voice
竹中工務店 技術研究所 副所長 奥田 信康 氏

 このたびは、建物における防鳥技術「TORINIX」に対し、「生活・社会課題ソリューション関連部品賞」をNIPエンジニアリングと共同で賜り、心より感謝申し上げます。
 都市生活環境における鳥害は年々深刻化していますが、これまで決定的な解決方法が存在していませんでした。当社で開発したTORINIXは、エア吹き出しで追い払う、従来にない方式であり、薬剤を使用せず、繰り返し使用しても効果も継続するものです。鳥を傷付けることなく、建物の美観を合理的に保つ新たなソリューションとして、広く活用いただけると幸いです。