2022年受賞部品

電気・電子部品賞

MW3827

ミツミ電機

高温高湿でも誤差が小さい

 ミネベアミツミグループのミツミ電機が開発した同社初の温湿度センサー「MW3827」は、高温高湿の環境で使用しても誤差が小さく、耐久性に優れるのが特徴だ。
 独自の配合で開発した感湿膜で上部電極を保護することで、水滴やホコリへの耐久性を高めつつ、高温高湿下でも検知誤差を抑えることに成功した。幅・奥行きともに2ミリメートル、高さ0.8ミリメートルと小型ながら、湿度変化を他社の既存製品より3~4倍詳しく見ることができるようにした。
 空気を通す上部電極の穴の設計にも工夫。湿度が急速に変化した際に反応するまでの時間(応答性)を6秒と、他社製品の最大3割程度に短縮できた。
 エアコンや冷蔵庫などの家電や農業のビニールハウス、医療機器への利用を見込む。グループが手がけるスマートシティー向け道路灯にも導入を進める。

Voice
ミツミ電機 取締役 常務執行役員 半導体事業部門 副部門長 兼 半導体事業部長 矢野 功次 氏

 このたびは栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 ミネベアミツミグループのミツミ電機は、60年以上の歴史を背景に、さまざまな電子部品、精密部品を手がけています。
 このたび、「電気・電子部品賞」をいただいた当社の温湿度センサーは、正確で応答性の高い温度・湿度のモニタリングが可能なため、使用されるエネルギーを常により適正に保つことができ、消費電力の削減に寄与します。
 ミツミ電機では、今後も高品質で、世界になくてはならない半導体を供給することで、持続可能かつ地球にやさしく豊かな社会の実現に貢献してまいります。



電気・電子部品賞

AGV/AMR用ドライブソリューションsmartris(スマートリス)

住友重機械工業

滑らかな接触・優れた耐衝撃性

 住友重機械工業の「smartris(スマートリス)」は、無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)の駆動に必要なギア、サーボモーター、ドライバーを1つのパッケージにした製品だ。グループ内で別々に培ってきたギアの技術とサーボ制御技術を融合させた。
 ギアには、サイクロ減速機を採用。歯車のかみ合い数が多く、衝撃荷重が発生しても多くの歯で分散して吸収する。歯の折損がない滑らかな接触と優れた耐衝撃性により、長寿命を実現する。
 ホイール内部にギアが潜り込むインホイール型構造も特徴だ。PROタイプでは、回転するギアの外枠に直接タイヤ・ホイールが接続する構造で、AGVやAMRの駆動部をコンパクトに設計できる。
 発売後は、工場内の工程間搬送用AMRを製造する国内の顧客や、ワイン用ブドウ畑の害虫駆除用AMRを製造するイタリアの顧客に採用された。

Voice
住友重機械工業 専務執行役員 パワートランスミッション・コントロール事業部長 土屋 泰次 氏

 このたびは、「電気・電子部品賞」を賜り、大変光栄に存じます。
 当社が長年培ってきた減速機技術と、2018年に当社グループに加わったイタリアのLafert(ラファート)社の持つサーボ制御技術を融合させて誕生した製品です。さまざまなタイプのAGVやAMRの走行性能や可搬性能を実現し、安全でコンパクトなドライブソリューションを提供します。世の中がサステナブル社会の実現に向け自動化、高効率化、高精度化を進めていく中、顧客のニーズも変わっていきます。
 今後も、社会課題に貢献できる製品の開発を進めてまいります。



電気・電子部品賞

次世代自動車の低消費電力化、小型化、高信頼化に貢献するSerDes IC

ローム

搭載機器―小型・低消費電力化

 ロームが開発した映像信号の伝送などで使用する「SerDes IC」は、搭載機器の小型化や低消費電力化を実現する。ADAS(先進運転支援システム)の車載カメラとカーインフォテインメントをつなぐのに適したICとして提案中だ。
 SerDes ICは、通信方式の変換を行うため対で使う2つのICの総称。カメラとSoC(System on Chip)をつなぐ際、カメラ側とSoC側にICを搭載する。同社のSerDes ICは、伝送レートの最適設定が可能で高効率動作を実現。カメラを4つ使用する機器へ搭載した場合、一般品と比べて約27%消費電力を削減する。同ICには、周辺部品点数を削減する機能も搭載した。
 現在、車載SoCメーカーの評価基板に採用されるなど、次世代自動車の開発向けで、引き合いが増えている。

Voice
ローム 執行役員 LSI事業本部長 藤川 昭夫 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 自動車のADASは、システムの高度化・高機能化に伴い、映像伝送経路の複雑化や消費電力の増加などが課題になっていました。
 当社が開発した「SerDes IC」は、これら課題を解決する製品です。車載カメラや電子ミラー、液晶パネルなど次世代自動車の映像伝送システムにおいて、低消費電力化や小型化、高信頼化に貢献します。
 当社は、得意とするアナログ技術を駆使し、今後も社会課題の解決に貢献する製品開発に取り組んでまいります。



電気・電子部品賞

理想ダイオード機能搭載 ロードスイッチIC XC8110/XC8111シリーズ

トレックス・セミコンダクター

順方向電圧 20分の1に抑える

 トレックス・セミコンダクターの「ロードスイッチIC XC8110/XC8111シリーズ」は、理想的なダイオードの性能と、超小型・超低消費電流のスイッチIC機能をあわせ持つ製品。一般的なショットキーバリアダイオード(SBD)の順方向電圧(VF)が0.4ボルト程度なのに対し、VFを20ミリボルトと約20分の1に抑えた。付加価値の高いIoT分野を中心に累計約150万台を出荷している。
 VOUT端子電圧が20ミリボルトになるよう制御。通常のダイオードに比べ発熱も低い。消費電力はSBDの6分の1で「産業用機器のバックアップ電池などに適している」(製品企画部 製品企画拡販マーケティンググループの西川裕リーダー)。
 開発にあたり、「理想ダイオードは初の取り組みで、小型化などに苦労した」(開発本部 製品開発1部 開発第2グループの山本友稀副主任)という。
 今後は、対応電圧をさらに高めることも検討している。

Voice
トレックス・セミコンダクター 代表取締役社長 芝宮 孝司 氏

 このたびは、「電気・電子部品賞」を賜り、感激しております。誠にありがとうございます。
 設立当初から電源ICと呼ばれる分野を専業で扱ってきた当社は、低消費電力かつ小型の製品を強みとしています。
 今回受賞した“理想ダイオード”「XC8110/XC8111シリーズ」は、電流帯や電圧帯によって多岐にわたる用途が想定されるものです。今後も製品ラインアップを拡充させ、さまざまな電子機器にお使いいただける理想ダイオードを開発・提供し、脱炭素社会の実現に少しでも貢献できるように励んでまいります。