2022年受賞部品

モノづくり部品大賞

高効率固定式等速ジョイント「CFJ」

NTN

トルク損失率50%以上低減
自動車の省燃費―環境負荷を軽減

 ドライブシャフトは、自動車のエンジンやモーターの動力をタイヤに伝える駆動部品。ドライブシャフトを構成する固定式等速ジョイント(CVJ)は、タイヤ側に取り付け、作動角を大きくとれる。しかし、エンジン側に取り付け、軸方向にスライドできる摺動(しゅうどう)式CVJに比べ、トルク(動力)の損失率が大きい。
 高効率固定式CVJ(CFJ)はその弱点を克服し、自社の従来品比でトルク損失率を50%以上低減した。CFJは転動溝(トラック)を備える内輪と外輪、回転トルクを伝達するボール8個、ボールを保持するケージからなる。CVJがトルクを伝えると、ボールがケージを押す力は一方向に片寄り、部品間に摩擦が起きトルクを損失する。CVJの取り付け角度が大きくなるほど、ボールがケージを押す力は大きくなり、トルクの損失が増える。
 CFJは、隣のトラックが互いに傾斜した独自構造により、隣り合うボールがケージを押す力の方向を交互にして力の片寄りを抑え、トルク損失率を50%以上減らした。その構造のため、CVJの取り付け角度が大きくなっても、トルク損失率の増加を大幅に抑える。
 業界最高水準となる高効率性や大きな取り付け角度でのトルク損失低減が評価され、まず国内外の自動車メーカー数社から、スポーツ多目的車(SUV)用に受注した。CFJは世界で市場が拡大するSUVやハイブリッド車(HV)、急速に普及する電気自動車(EV)に特に適する。車高が高いSUVや動力源を車両端に配置する傾向のあるEVほど、大きな取り付け角度にできるCFJの優位性は強い。
 トルク損失の大きな低減によるCO2削減も見込め、自動車の省燃費・省電費化による環境負荷の軽減に寄与する。

Voice
  NTN 取締役 代表執行役 執行役社長 CEO 鵜飼 英一 氏

 このたびは、「モノづくり部品大賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
 当社は、1918年の創業以来、機械の回転をなめらかにするベアリング(軸受)の開発・提供を通じて、省エネルギー化に貢献してまいりました。現在、自動車分野においては、EV・電動化ニーズに対応した基盤商品の高機能化やコア技術を活用した電動モジュール商品の開発に取り組んでいます。
 今回受賞した「高効率固定式等速ジョイント『CFJ』」は、当社の独自構造を採用し、トルク損失率を従来品比で50%以上低減した世界最高水準の伝達効率を持つ商品で、自動車の省燃費・省電費化に貢献します。
 本賞を一層の励みとし、モノづくり企業として市場ニーズに対応する商品の提供を通じて市場の成長を支えるとともに、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)などの社会課題解決にも貢献してまいります。



モノづくり日本会議 共同議長賞

オープナーロボット MOTOMAN-MPO40

安川電機

塗装ロボットの塗装効率向上

 安川電機の「オープナーロボット MOTOMAN-MPO40」は、自動車製造現場のコンベヤー連続搬送塗装ラインに組み込んで利用する。
 塗装工程において、塗装ロボットと協働しながらエンジンフードやテールゲートなどの開閉を行う。塗装ロボットの塗装効率向上だけでなく、設備レイアウトの最適化にも貢献する部品として大きな役割が期待できる。
 従来は、塗装ロボットの先端部に塗装用ガンと、エンジンフードなどを開閉するハンドの両方を装備して対応してきたが、開閉中は塗装作業ができなくなる、塗装範囲が制限される、などの課題があった。
 MOTOMAN-MPO40は、天井部に設置が可能で、塗装ロボットとの干渉を避けながら製品にアクセスできる。最大リーチは4550ミリメートルと長く、走行機構なしでコンベヤー搬送される自動車ボディーへの追従が可能。また、可搬質量も40キログラムを確保したことで、大型化するテールゲートにも対応する。

Voice
安川電機 代表取締役 専務執行役員 ロボット事業部長 小川 昌寛 氏

 栄えある受賞は、この上ない喜びであり、心より感謝申し上げます。
 近年はカーボンニュートラルを背景に、塗装工程の効率化と塗装ブースの省エネ、コンパクト化の要求が増しています。車体の塗装工程の自動化において、ロボットを含む各機能の高度化に加え、全体を俯瞰(ふかん)したソリューション目線からの機器のあり方を追求し開発したのが、今回のオープナーロボットです。これにより、塗装工程全体のコンパクト化を実現し、省力・省エネに大きく貢献するとともに、設備の簡素化による変種変量に対するロバスト(頑強)なシステムを構築することができました。
 今後も、コトの目線での追求による、価値ある製品を提供してまいります。



ものづくり生命文明機構 理事長賞

省エネパッケージ「JCC-eSmart」

スギノマシン

電力56%削減―コスト・CO2低減

 スギノマシンの「省エネパッケージ『JCC-eSmart』」は、同社の高圧水部品洗浄機「JCCシリーズ」の高圧水発生ポンプに組み込むことで消費電力を大幅に削減。生産コストとCO2の低減に貢献できる。
 同パッケージは、サーボモーター制御により洗浄箇所ごとに最適な水圧で洗浄できる。
 低圧洗浄を行う際は、ポンプからの噴射圧力をインバーターで調整。最適な圧力・流量で噴射できるため圧力の損失がない。ポンプの運転・停止も瞬時に切り替えることが可能で、非洗浄時は稼働を停止する。これらの機能で無駄な消費電力を削減し、従来比56.7%減の省エネを実現した。
 従来のポンプは、一定の圧力でしか水を噴射できず、必要以上の高圧水で洗浄していた。低圧洗浄を行う際は、噴射した水を最適な流量に絞るため、圧力を損失していた。ポンプの運転・停止も頻繁に切り替えできず、非洗浄時も常に稼働していた。こうした無駄を同パッケージが解消した。

Voice
スギノマシン 代表取締役社長 杉野 良暁 氏

 このたびは、「ものづくり生命文明機構 理事長賞」という栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。
 当社の高圧水部品洗浄機「JCCシリーズ」は、自動車産業を中心に国内外で数多くのご採用をいただき、認知度も高く、すでに1つのブランドとして確立しています。そこに「JCC-eSmart」を組み込み、CO2削減という時代の要請に対応したことで、同シリーズがあらためて評価されたと感じています。
 当社は、経営方針に「脱炭素社会へ技術で貢献」を掲げています。今後も、「切る・削る・洗う・磨く・砕く・解す」の6つの「超技術」を核に、CO2削減やカーボンニュートラルの実現に貢献していきたいと思います。



日本力(にっぽんぶらんど)賞

熱処理工程用 2色式サーモビュアー Thermera(サーメラ)

三井フォトニクス

センサー応用、厳密に温度計測

 鉄鋼メーカーにおいて、製鉄ライン向け真空誘導加熱炉などでの溶解・製錬工程の温度管理は、作業者が熱電対を用いる場合が多いが作業工数の増加や作業者の安全性が課題となっていた。
 三井フォトニクスが開発した「熱処理工程用 2色サーモビュアー Thermera(サーメラ)」は、イメージセンサーを応用した面計測(2次元センサー)。取得した画像から2色式温度計測ソフト(2色法アルゴリズムを開発)により温度を算出する。これで300~2500度Cでの厳密な温度計測が可能になった。
 また、計測対象に応じて波長の選択が可能な専用カメラとして2センサーカメラも開発した。結果として、「鉄の品質の向上になった」「温度計測時の危険から解放された」「製造ラインの自動化(アラート出力)に役立つ」などの声が寄せられた。温度管理ができることで、品質の向上と不良品の低減につながり、廃棄コストが大幅に削減できる点は、大きな経済性向上になる。

Voice
三井フォトニクス 代表取締役社長 臼井 寛之 氏

 このたびは栄誉あるモノづくり部品大賞の「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を賜り、大変感謝しています。
 今回受賞したのは、温度を計測するサーモビューアーですが、鉄鋼メーカーや自動車部品メーカーなどで、省エネ化や省人化、それからCO2排出を減らすなどといった効果がある点や、加熱工程における製品温度のエビデンスを残すという観点が評価いただいたポイントかと考えています。
 従来のサーモビューアーでは、放射率の問題で正確に温度を測るのは困難だった課題を克服しました。この製品を使い、日本の製造業での代名詞である高品質化を実現しながら、CO2削減などの課題に役立ててもらい、海外勢との差別化や品質向上につなげてほしいです。



日本力(にっぽんぶらんど)賞

椅子の体格感知部品

オカムラ

体格に合わせ変形・フィット

 「椅子の体格感知部品」を搭載したオフィスチェア「Spher(スフィア)」は、座る人の体格に合わせて背もたれと座面が変形する。調整なしであらゆる人にフィットした座り心地を実現する。
 背もたれと座面の「シェル構造体」には、基本の座り姿勢を維持する「縦断面センターカーブ」が固定され、左右に複数ある独自形状のスリットで作られた帯状部分が個別に変形する。縦断面のカーブを保ちながら横断面の形状を変えることで、適切な姿勢を保ちながら、初期状態の小柄な人の体格に合った形状から、大柄な人の体格に合った形状まで変形しフィットする。
 多様な働き方の中では、事務用椅子は1人が終日使用することもあれば、1日で複数人が使用することもある。単純な椅子は、椅子と体格の相性によっては長時間の利用に適さない。一方で、複雑な調整ができる椅子は、使用者ごとの調整が必要になり、やがて調整機能が使われなくなるという問題があった。

Voice
オカムラ 上席執行役員 オフィス環境事業本部 マーケティング本部長 荒川 和巳 氏

 このたびは、「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を賜り、誠に光栄に存じます。
 当社は創業以来、お客さまのニーズを的確にとらえた質の高い製品とサービスを社会に提供することに努めてまいりました。
 「Spher」は、さまざまな体格にフィットするオフィスチェアです。独自の「3Dフィジカルフィットシェル」により、座る人の体格に合わせて背もたれと座面が身体を包み込むように変形し、自然と身体にフィットします。
  当社のミッションである「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」のもと、製品を通してより良い環境の実現に貢献し、企業価値のさらなる向上と社会課題の解決を目指します。



日本力(にっぽんぶらんど)賞

高耐久二軸押出機部材「MAZELLOY」

日本タングステン

厳密な温度設定で環境に配慮

 日本タングステンは、チタン系硬質粒子とコバルトを主原料とする独自の複合材「MZ01」を用いた、「高耐久二軸押出機部材『MAZELLOY』」を開発した。
 リチウムイオン電池(LiB)の電極材や強化プラスチックの生産工程において、素材の混合・混練用スクリューなど、生産設備部材として採用を見込む。合金工具鋼の4倍以上の耐摩耗性により、部材のライフサイクルを長期化。生産品のコスト減につなげる。
 開発には、90年以上にわたり培った粉末冶金技術を反映した。摩耗、腐食、衝撃への高い耐久性により、生産品に付加される強化材や、腐食性の高い添加剤に侵されることなく長期間使い続けることができる。さらに、超硬合金に比べて低比重で軽量にしたことで、設備に与える負荷を極小化した。
 次世代の自動車や蓄電池、再生可能エネルギー分野に用いる製品の低価格化に資することで、社会のカーボンニュートラル推進に貢献する。

Voice
日本タングステン 執行役員 機械部品事業本部長 味冨 晋三 氏

 栄えある賞であり、日本から世界に広く貢献したいとの当社の思いに合致する「日本力(にっぽんぶらんど)賞」をいただき、感謝しております。課題や気付きを与えてくださり、また評価や採用をいただいたお客さまにも深く感謝します。
 「MAZELLOY」の製品化は、90年以上の歴史を有する当社の粉末冶金技術に、若手を中心とする開発メンバーの熱い気持ちが加わり実現しました。環境性能の高い繊維強化プラスチックなどの製造に採用されることで生産効率を飛躍的に高め、サステナブルな社会価値づくりに貢献できます。
 当社は、理念に「世界の人々の明るい未来を実現すること」を掲げています。今回の受賞を自信と励みに、さらに努力してまいります。



日本力(にっぽんぶらんど)賞

マルチセンシングロガー「e-WAVES」

太平洋工業

1分間隔で計測・送信―高い信頼性

 マルチセンシングロガーは、複数のデータを計測・送信する機器。1台で扱えるのは温度、湿度、位置情報までが一般的だった。「e-WAVES」は、医薬品の適正流通基準(GDP)や食品衛生管理基準(HACCP)も想定した輸送・保管の品質管理用。従来品同様の小型だが、未開封を証明する照度、衝撃や振動を示す加速度、空輸を想定した気圧を含め6種のデータが扱える。
 計測・送信は、最短1分間隔の高頻度で信頼性が高い。1回の充電で7日以上稼働し、トラックの立ち往生などのトラブル時や長期の輸送時も管理が途切れない。通信は携帯電話規格のLTEで、運転手とも連動しやすい。不通時は内蔵メモリーにも記録ができる。
 マイナス40度C~プラス80度Cで稼働する常温タイプとマイナス80度C~プラス40度Cで稼働する超低温タイプがあり、新型コロナウイルス感染症のワクチン輸送にも採用されている。クラウドでのデータ管理やグラフ化などの機能も提供する。

Voice
太平洋工業 代表取締役社長 小川 信也 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 当社は、1930年にタイヤのバルブコアを国産化し、プレス・樹脂部品、カーエアコン・産業用バルブなど、さまざまな自動車部品を開発、生産してまいりました。
 「e-WAVES」は特に、当社独自のタイヤ空気圧監視システム「TPMS」のセンシング・無線送信のコア技術を生かし、ハード・ソフトを一貫開発しました。温度・湿度・照度・衝撃・位置・気圧のデータをリアルタイムに計測・送信し、製品の小型化と電池の長寿命化も両立しました。
 今後も、お客さまのご期待にお応えする開発を続け、社会課題解決に貢献できる商品・サービスを提供してまいります。