2024年受賞部品

モビリティー関連部品賞

薄肉切削加工技術を用いたふっ素樹脂(PTFE)製ダイヤフラム

中興化成工業

超大型・薄肉の分離膜

 中興化成工業の「薄肉切削加工技術を用いたふっ素樹脂(PTFE)製ダイヤフラム」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」の酸化剤タンク内に搭載された気液分離膜だ。月への着陸に不可欠な大型タンクの実現と重心保持性向上などの課題を克服、ミッション成功に貢献した。
 材料適合性を持つPTFEを切削加工、直径約800ミリメートル、厚さ1ミリメートル以下の超大型かつ薄肉の一体成形品として仕上げた。従来の金属製に代わり、軽量性と柔軟性、繰り返し作動性能を兼ね備え、類を見ない大きさながら最適な形状を持つ製品を実現した。製造にあたり、素材特有の温度による寸法変化を蓄積してきた加工技術と治具開発により乗り越えた。今後、他の宇宙機への展開を期待するほか、ふっ素樹脂成形品の品質向上への応用を目指す。

Voice
中興化成工業 執行役員 末石 将之 氏

 このたびは「モビリティー関連部品賞」を賜り、誠にありがとうございます。
 当社は、“世界のふっ素屋”の掛け声のもと、ふっ素樹脂PTFEやPFAの加工技術の向上に努めてまいりました。
 「薄肉切削加工技術を用いたPTFE製ダイヤフラム」は、多くの技術者の知恵と工夫と熱意により作り上げることができました。小型月面着陸実証機(SLIM)に搭載されたことや今回の受賞は非常に励みになります。
 今後も、ふっ素樹脂加工技術を活用し、お客さまの課題解決を通じて社会の発展に貢献してまいります。

モビリティー関連部品賞

高硬度鋼加工用高送り小径複合ラジアスエンドミルEHHRE-TH3 mini

MOLDINO

加工効率15倍 工具寿命2倍

 MOLDINOの「EHHRE-TH3 mini」は、高硬度鋼の高送り加工に対応した外径1ミリメートル未満の小径エンドミル。独自の複合ラジアス形状を採用し、高硬度鋼を使用した精密な樹脂金型やプレス金型の荒加工で、従来のラジアスエンドミルと比べ15倍の加工能率や2倍以上の工具寿命を実現した。
 例えば、水素エネルギーで注目される燃料電池では、溝幅1ミリメートル未満の微細な溝が多数形成されたセパレーターが採用され、セパレーターを精密にプレスする金型も同様に高精度な加工が求められる。同部品は、従来のラジアスエンドミルやボールエンドミルと比べ、燃料電池セパレーター向け金型加工において削り残し量が少なく高能率な加工が可能で、工具使用本数や製造コストを低減できる。
 燃料電池セパレーター向け金型をはじめとする高硬度鋼金型の生産性を大幅に向上し、自動化や環境負荷低減に貢献する。

Voice
MOLDINO 取締役 池永 幸一 氏

 このたびは、「モビリティー関連部品賞」を賜り、ありがとうございました。大変光栄でうれしく思います。
 今回の開発では、多数の細かな溝で構成される燃料電池セパレーターを、良好な仕上げ面を維持しつつ高能率に加工できる最適な工具形状を見いだしました。開発を進める上で、本製品をテストいただき、また採用くださいましたすべてのお客さまに感謝申し上げます。
 今回の受賞を励みにして、今後ますます、お客さまの課題に真摯に向き合いながら、困りごとを解決できる工具開発を行い、社会に貢献してまいりたいと思います。

モビリティー関連部品賞

高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy」

ジェイテクト

マイナス40度C~プラス85度Cで動作

 ジェイテクトの「高耐熱リチウムイオンキャパシタ『Libuddy(リバディー)』」は、高耐熱・高出力・長寿命を特徴とした製品。同社によると、独自技術によりマイナス40度C~プラス85度Cの動作温度範囲を世界で初めて実現した。自動車などの過酷な温度環境でも冷却装置や加温装置が不要となり、電源製品の小型化やエネルギー効率の向上に貢献する。
 放電・充電が非常に早く出力密度に優れる。また、繰り返しの充放電による性能劣化が少なく、電池寿命が長いことも特徴。正極には活性炭を用いており、リチウムイオン二次電池で懸念される、熱暴走反応を誘発する酸素を含有せず、発火リスクも極めて低い。
 自動車をはじめ、工作機械や建設機械、鉄道、交通インフラといった領域で電力補助、電源バックアップ、電源回生、電源安定化、主電源など向けに提案する。

Voice
ジェイテクト 取締役 経営役員CTO 松本 巧 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠にありがとうございます。
 「Libuddy」は、自動車などの過酷な温度環境への対応という、顧客ニーズに応えるため、当社が持つ電池製造設備ノウハウや自動車用材料技術などのコンピテンシーを組み合わせて開発した製品です。従来は不可能とされてきた温度域において大電力が供給でき、電源性能の向上に寄与します。
 本受賞を励みに、当社はこれからも持続的に社会へ貢献できる企業として、ジェイテクトグループの強みを最大限に活用した価値創造を行い、お客さまの期待を超えるソリューションを提供できるよう、たゆまぬ挑戦をしてまいります。