2008年受賞部品

奨励賞

エレクリアMS100-AB500H

帝人化成、帝人

製品概要

帝人化成(東京都千代田区)・帝人の「エレクリアMS100-AB500H」は、抵抗膜方式タッチパネル用透明導電性フィルム。タッチパネルを薄く軽く、を実現する。可視光の波長の4分の1の位相差を持つ高耐熱性ポリカーボネートフィルムを使用し、同フィルム上に凹凸を形成した機能性コーティング層を設けた。ベースフィルムに耐熱性と可視光の波長の4分の1の位相差を持たせることで、屋外での視認性を向上し、高耐熱で基材変形の少ないタッチパネルを作成することを可能にした。

NEOコートT2

住友金属工業、朝日化学工業

製品概要

住友金属工業と朝日化学工業(大阪市中央区)は、クロムフリーの表面処理鋼板「NEOコートT2」を開発した。小型モーターのケースなどに使用する。電気亜鉛メッキ鋼板の上層に、無機系クロムフリーの硬質薄膜を形成した。耐食性を確保したことに加え、連続深絞り成形でも薄膜のはく離が起こりにくい。同鋼板を用いた部品製造は従来の製造設備をそのまま活用でき、低潤滑性、揮発性のプレス油で成形可能。洗浄工程の省略で、製品や金型洗浄に用いる有機溶剤も大幅に削減できる。

Voice
住友金属工業鋼板・建材 カンパニー薄板生産技術部 薄板商品開発室参事 安井 淳氏

有機被覆クロムフリー鋼板の商品化が広がる中、成形の厳しい深絞り用途は、軟質・厚膜の有機被膜でははく離が生じ、適用が困難であった。開発は、厳しいしゅう動に耐えうる被膜の探索から始まった。無機組成の適用により被膜が硬質・薄膜化できることは分かっていたが、亜鉛メッキとの密着性を確保するのに苦労した。数多くの組成を検討した結果、最終的に深絞り成形後の外観を飛躍的に向上することに成功した。今後もさらに機能的な商品を開発していきたい。

VR38DETT用NPSCボアシリンダーブロック

日産自動車

製品概要

日産自動車はエンジンのシリンダーブロック内壁に鉄被膜を形成する技術を確立した。スポーツカー「GT-R」向けに開発したV型6気筒エンジンに同技術を用いた「NPSCボアシリンダーブロック」を採用した。アルミニウム製シリンダーブロックの内壁は、厚さ2.6ミリメートルの鉄製ライナーで包む。溶射により内壁に金属薄膜を形成し、ライナー厚を0.2ミリメートルにした。これによりエンジンの熱効率を高め、2.3キログラムの軽量化も実現。エンジンの燃費低減の可能性を広げた。

超小型アブソリュートエンコーダー MA-10-256G

マイクロテック・ラボラトリー(神奈川県相模原市)

製品概要

マイクロテック・ラボラトリーの超小型アブソリュートエンコーダーは、電源バックアップ不要で、直径13ミリ×高さ15.5ミリメートル(本体部)業界最小級。小型発光ダイオード(LED)を採用し、外径10ミリメートルのスリット円板に超精密加工で8ビットのスリットパターンを作製。信号処理回路はチップ化した。電源が切れても位置情報を保持。放送用カメラのズームや絞り、ロボットや医療機器に組み込んで可動部関節部の精密位置制御などを可能にする。

Voice
マイクロテック・ラボラトリー社長 平 勉氏

弊社が国内で追求してきたロータリーエンコーダーの小型、高精度化への取り組みが評価されたものと、うれしく受けとめています。弊社では地域に根差したモノづくりを目指しており、社員も地元採用にこだわります。国内にしっかりと根を張ったモノづくりで、地域の発展を支えたい。現在は、数年先に花開くと見込んで「判断力を持つロータリーエンコーダーの開発」に取り組んでいます。国内にとどまり、「一歩先ゆく」製品開発を続ける所存です。

アモルファス圧粉コアトランス

沖パワーテック(福島市)

製品概要

沖パワーテックの開発した「アモルファス圧粉コアトランス」は、プリンターなどの電源に使うスイッチングトランス。磁気特性に優れており、フェライトコアとの置き換えが可能だ。従来のアモルファスではリング状のコアしか作成できなかったが、粉体化技術を確立してほかの形状にも成形できたことで、スイッチングトランスへの応用が実現した。高効率で電力変換を行う機能を備えており、消費電力を大幅に低減するほか、電源も小型化できる。

自動車ATプラネタリピニオンギヤ用超高速ニードルローラ軸受

日本精工

製品概要

自動車の自動変速機(AT)内で使われる複合式遊星減速機のギア用軸受。遊星減速機のギアは自転と公転が重なり複雑な動きをするが、この際公転の遠心力で軸受内部にさまざまな力が加わり劣化を早める。またATの多段化で遊星減速機の公転は高速化の傾向にある。この製品は二つの軸受間にスペーサーを挟んだ独自形状と、多様な金属表面処理技術を組み合わせて耐久性を向上した。遊星減速機の公転速度を60%アップさせるのに対応し、ATの高性能化に貢献した。

ハイブリッドTACミル「EPH形」

タンガロイ(川崎市幸区)

製品概要

刃先交換式のエンドミル。最大の特徴は替え刃を固定するネジ穴をチップ本体ではなくボディー側に付けたこと。これによりチップの剛性を大幅に高めたほか、刃先径は10ミリ-16ミリメートルと小径化。縦方向の刃の切れ込みを長く取るなど従来の刃先交換式エンドミルでは難しかった形状を実現した。 一つのボディーで多様な加工に対応し工具の管理コストが低減できるという刃先交換式の利点と、高剛性で高精度加工が可能というソリッド式の利点を兼ね備えた工具となっている。

Voice
タンガロイ切削工具開発部工具開発科主務 佐治 龍一氏

開発過程では、どうやってチップをボディーに固定するかいろいろなアイデアを出し、最終的にこうした形に落ち着いた。刃先径10ミリ‐16ミリメートルの品は、エンドミルの中でも最もボリュームが多い製品。幸い市場からの反応もよく、開発の苦労が報われたのはうれしい。切削工具は、ベースとなるアイデアさえ良ければ市場から認められ、生産現場の加工方法を一新させてしまう可能性を持っている。これからも画期的な工具の開発に取り組んでいきたい。

光学ローパスフィルター基板のニオブ酸リチウム単結晶材化における超薄物研磨部品

斉藤光学製作所秋田工場(秋田県美郷町)

製品概要

光学ローパスフィルターの基板部品に、ニオブ酸リチウム単結晶材を超薄物研磨技術で利用できるようにした。ニオブ酸リチウム単結晶材は、従来使われている人工水晶材の研磨基板部品に比べ複屈折が10倍あり、光学ローパスフィルターを薄くできる。研磨加重を軽めにし低速回転を制御するなど、独自の超薄物研磨技術により平行度2マイクロメートルを実現した。光学ローパスフィルターはデジタルカメラの映像品質向上に使われており、薄型化により需要拡大が見込める。

縅錣 Odoshi-Shikoro

アウラ(京都市下京区)

製品概要

アウラの「縅錣 Odoshi-Shikoro」は西陣織の技術を応用した革の織物。分子レベルでフッ素と融合し薄くスライスした天然皮革と、抗菌性や放電作用を持つ高機能糸を撚った新素材。織機を使って、職人が織物に仕上げる。
抗菌やみず撥水などの機能だけにとどまらず、従来の天然皮革では難しかったエンドレスタイプの織物ができる。デザイン・意匠性が高く、自動車内装材や家具などさまざまな用途開拓が期待できる。

イグアス‐Ex(浄化槽用機能調整剤)

静内衛生社(北海道新ひだか町)

製品概要

牛ふんなどの家畜排せつ物を、汚水処理分野に活用した浄化槽用の固形シーディング剤。家畜ふん尿の処理方法は、堆肥化が主だったが、シーディング剤への展開を可能にした。発酵過程で蓄積される有効成分や、発酵中に生育する有機物分解にかかわる複数種の有用バクテリア群を有している。このため、浄化槽に投入するだけで浄化機能の立ち上げ期間を短縮できる。市販品は粉体の場合が多く浄化槽外に流出しやすいが、固形としたことで一定期間の滞留を可能にしている。

低誘電率・低誘電正接薄膜フィルム「ADFLEMA」

ナミックス(新潟市北区)

製品概要

低誘電率、低誘電正接の薄膜樹脂フィルムで、電子機器などの基板材料や接着用フィルムとして使用する。低誘電率、低誘電正接という特性のため、通信機器などの高周波回路においてエネルギー損失を低減できる。厚さ5マイクロ-30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)という薄い膜で、小型、薄型が進む電子部品に対応した。
未反応状態で柔らかな熱硬化性樹脂のため、凹凸面への埋め込み性や接着強度に優れる。また、部材へは低圧(1メガパスカル)で接着できる。

Voice
ナミックス技術開発本部 シニアグループマネージャー 飯田 英典氏

今回、私どもの狙いが認められて大変ありがたい。「ADFLEMA」は薄膜で誘電特性に優れる未反応の樹脂フィルム。このようなものは今まで世の中になかった。開発にあたっては、既存の材料だけではつくれないため、材料メーカーとタイアップすることで実現できた。また、製造する機械に関しても独自の改良を重ねた。実際、世に普及するのはこれからだが、より多くの人に知ってもらい、電子部品メーカーなどに採用を働きかけ拡販に努めていきたい。

新世代高性能カプリコンlimXシリーズ「XGT」「XGS」

鍋屋バイテック(岐阜県関市)

製品概要

鍋屋バイテックのカップリング「XGT」「XGS」は、同社が拡販に力を入れている「新世代高性能カプリコン limX」シリーズの製品。防振ゴムを採用したことで、高い振動吸収性を実現した。従来の金属製カップリングは、連結したモーター側と特定の周波数で共振が起きるという問題があった。XGT、XGSはこの問題を解決し、高応答性も達成。半導体製造装置など高速・高精度な位置決めが求められる機械に適している。

薄型液冷システム用圧電ポンプ

アルプス電気

製品概要

圧電素子を採用した液冷システム用の小型ポンプ。液冷システムはセット製品の熱対策と静音対策の両立に貢献する。その中で小型化が難しかったポンプを、圧電素子の採用でノートパソコンなど部品スペースが限定される製品に搭載可能なサイズとした。独自の構造と駆動回路により、携帯機器に組み込み可能な厚さ8ミリメートルを実現した。連続動作寿命は4万4000時間で圧電素子構造や電極形成などを工夫し信頼性を確保。圧電ポンプとして唯一、安全規格「UL」に適合する。

「VSアーマー」

ナベル(三重県伊賀市)

製品概要

ナベルの垂直分割式板状カバー「VSアーマー」は、工作機械の駆動部を加工時の切り粉やクーラント液などから保護する蛇腹構造の伸縮カバー。蛇腹は特殊な折り構造のシンプルな設計。省スペース化と耐油性に優れた布にステンレスの板を複数枚取り付けて耐久性を高めた。「R」形状のガイドで蛇腹を機械内部に巻き込んで収納でき、加工物や工具の交換などの妨げにならない。部品点数が少なく軽量で、メンテナンスも容易。

つばき384チューブ(キャップ式)

椿本チエイン

製品概要

創薬研究業務向けの小形冷凍自動保管システム「ラボストッカ」用保管容器。微量保管、保管数の増大、容器のID化という要望に応えた。容積は115マイクロリットル(マイクロは100万分の1)と従来のマイクロチューブに比べ10分の1に減容して保管スペースを大幅に削減。チューブを長方形状にしたため、四角の容器底面に2次元コードの印字もできる。
ノズルが届きやすいよう内面底の形状はV字を採用。キャップ方式による着脱のため、繰り返しの再利用が可能だ。

Voice
椿本チェインマテハン事業部PSS技術部プロセス機器技術1課長

「ラボストッカ」の発売後にユーザーからの微量保管、保管数の増大や容器のID化という要望、叱咤(しった)激励があって完成できた。社外の方から知恵をいただき、ブレイクスルーの発想も喫茶店の打ち合わせで生まれた。自動化に対応した小さなチューブは、従来の樹脂成形技術ではなし得なかった。チューブ形状の完成には苦労が多かった。海外にも通用する製品のはず。この部品を活用したシステムが生まれることも期待したい。さらなる技術革新と拡販に取り組んでいく。