機械部品賞
卓上型微細塗布装置
NTN
製品概要
NTNが開発した「卓上型微細塗布装置」は、数ピコリットル(ピコは1兆分の1)の微量液滴を、位置精度が1000分の1mm、最小塗布径は約20μm(μは100万分の1)で、塗布できる機能を持つ。従来は手作業だったセンサーの生産工程や、小型光学部品の接着剤の塗布などで、現在活躍している。バイオ関連では、試料や試薬などの極微量の分注用途などで、多くの引き合いが寄せられている。
同社は液晶パネル用カラーフィルター向けで、色抜けや混色、異物付着などの欠陥を修正する大型の修正装置を手がけ、業界トップの販売実績を持つ。
受賞製品は、同大型修正装置の修正インク塗布機能を応用。卓上サイズまで小型化し、研究開発や試作少量生産用途などへの展開を狙った。
先端に極微量液滴を付着した塗布針を、対象物に軽く接触させて転写する独自の塗布方式。広範囲な粘度帯の塗布液体を、ノズル目詰まり無しで正確制御する。オートフォーカスや画像処理機能を追加し操作性を高めたタイプもあり、顧客要望に応じてレーザーカット、照射機能などの付帯設備追加も進めている。
Voice
NTN 常務取締役 福村 善一氏
「卓上型微細塗布装置」は、数ピコリットルの微量液滴を塗布する機能を持ち、一般的なディスペンサー方式ではなく、先端に極微量液滴を付着した塗布針を対象物に軽く接触させて転写する独自塗布方式を採用しています。小型部品製作、研究開発機関での扱いやすさを追求し、30cm角と卓上で手軽に塗布できる装置です。このコンパクト性と操作性、塗布性能の高さが評価され、電子デバイスやバイオ分野などで利用されております。生産現場だけでなく先端技術の研究開発における超微量塗布技術にも活用いただいています。今後もさらに新たな研究開発分野に対する提案を進め、日本のモノづくりに貢献してまいりたいと存じます。
狭ピッチ液晶デバイスフィルム個片打ち抜き金型
野上技研(茨城県常陸大宮市)
製品概要
野上技研の「狭ピッチ液晶デバイスフィルム個片打ち抜き金型」は、薄いフィルムにエッチングされた銅材を正確に打ち抜くだけでなく、他社製金型と比べて24倍となる720万ショットの長寿命化を実現した。金型の交換が頻繁になれば、打ち抜きの品質は不安定になり、材料のロスや金型メンテナンス費用が増加するが、開発した金型の使用によって大幅に改善することができる。
打ち抜く製品の特性に合わせた材質を選定し、焼き入れ、仕上げまで、細部にこだわる匠の技により、パンチとダイの隙間を2μm(μは100万分の1)以下の極小に保つ精度を実現し、金型の常識を覆した。同社では、金型が企業の利益を生み出す「金の型」になることをPRしており、すでに国内外で引き合いも活発になっている。
Voice
野上技研 代表取締役 野上 良太氏
顧客、支援機関など応援してくださった皆さまの力添えにより、精密打ち抜き金型の技術力を高めることができ、今回の受賞につながりました。大変光栄に思っています。
当社には今回受賞した金型の部門も含め治具など3事業部門があります。社員には今回の受賞の意義を説明し、他の部門も含めた全社員の力の結集によって受賞に結びついたことを説明しました。そして、受賞を記念して、おそろいのジャンパーを製作・着用し、全社員の一致団結を改めて誓いました。
今後も精密、長寿命にこだわります。打ち抜き金型の分野で、トップの技術力を目指し、これからも日々研鑽していきたいと思います。
AVアーバ(防振アーバ)
日立ツール/日立製作所
製品概要
「AVアーバ(防振アーバ)」は、工具の長さ(L)と工具径(D)の比(L/D)が6以上の加工で問題となる「ビビリ振動」を抑え、加工能率を大幅に向上できる。
ビビリ振動は、切削中に工具が振動する現象で、工具の破損や加工精度悪化、騒音などの不具合を招く。振動を回避するには、切削速度や切り込み量、送り速度を小さく設定せざるを得ず、生産性の低い加工になっていた。
アーバーは、切削加工時に工具と工作機械を結びつける部品。「AVアーバ」は、内蔵するダイナミックダンパーの効果でビビリ振動を抑制し、従来工具の2倍以上の加工能率と工具寿命の延長などの効果を得られる。
ビビリ振動の抑制策で一般的なのは、工具本体を超硬合金で製作したり、工具に超硬合金を溶射して補強したりする方法。こうした工具本体の剛性を高める方法と比べ、ダイナミックダンパー内蔵方式はより大きな振動抑制効果を達成できる。
2010年9月に本格販売を開始。金型製造や大型機械部品加工向けなどに採用されている。
Voice
日立ツール 代表取締役社長 田中 敬一氏
大型機械部品や大型の金型加工には、突き出しの長い工具が必要ですが、突き出しの長い工具はビビリ振動が発生するため、高能率な加工ができないことが問題でした。今回受賞した「AVアーバ(防振アーバ)」は、長い突き出しで高速加工を可能にした高能率工具です。今後、多くの加工方法への対応が期待できます。
今回、この「AVアーバ」で機械部品賞を受賞できたことを光栄に思うとともに、今後もお客さまの要望に応えるべく、モノづくりに励んでいきたいと考えています。
スパイラルPCD(多結晶ダイヤモンド)ボールエンドミル
協和精工(秋田県羽後町)
製品概要
天然ダイヤモンドに近い硬度を有するPCD(多結晶ダイヤモンド)製の小径スパイラルボールエンドミル。先端部の半径は最小0.1mmと小型化し、微細で高精度な加工を可能にした。ガラスやセラミックスなど硬くてもろい材料を容易に加工できるのが特徴。半導体や医療機器など精密金型製造での利用が見込まれる。
超硬のスパイラルボールエンドミルと比べて20倍以上の長寿命を実現した。刃先がスパイラル形状のため、加工の衝撃を抑えられる。
工具の長寿命化によるコストダウンや、工具交換に伴う工作機械の停止時間の減少などのメリットが出る。
硬くて加工難度が高いPCDを、小径で複雑な形状の刃形に加工するため、同時3軸制御のマイクロ放電加工機、自動検知システムを搭載した同時5軸制御の微細加工用の研削盤を開発。加工の送り速度や加工順などを最適化した。リニアモーター駆動の微細加工用小型マシニングセンターの特性に合わせて使用できるようにした。
Voice
協和精工 代表取締役 鈴木 耕一氏
CBN(立方晶窒化ホウ素)ボールエンドミルに続き、PCDボールエンドミルでもこのような名誉ある賞を頂戴し、当社の目指す微細加工工具への取り組みを評価いただいたものと大変うれしく存じます。海外への生産移転がさらに進み、国内外でのモノづくりに求められる高度化への厳しさは、それを支える周辺メーカーにも強く求められると認識しております。
このような使命感を持って日本のモノづくりの一端を担っているという誇りを胸に、新しい課題に向かい、これからも「開発力」を磨いてまいります。受賞を従業員のみならず協力いただいた機械メーカーに至るまで皆の励みとし、さらなる高みの製品開発を目指します。
大容量 低速・高トルクサーボモータ装置
アイダエンジニアリング
製品概要
アイダエンジニアリングの「大容量 低速・高トルクサーボモータ装置」は、ドライブ軸を直接駆動するダイレクト駆動を大容量、高トルクの小型モーターで実現した。プレス機などの産業機械だけでなく、車両など各種産業に幅広く対応するため、電源・インバーターからモーションコントロールソフト、エネルギーマネジメントシステムなども自社開発。「サーボシステム」としてパッケージ化した。
エネルギー蓄積装置を搭載し、モーター減速時の回生電力を有効活用する。加工やモーターの加減速に必要なエネルギーの大部分は、同蓄積装置から供給する仕組みとし、電源設備容量を小型化した。駆動の省エネルギー化にも寄与する。
モーターの小型化に向け、強力な磁力を持つネオジム磁石を利用した多極構造の永久磁石サーボモーターを採用した。独自のマルチ巻線方式を開発し、磁気設計や冷却設計を最適化した。
モーター本体は、従来比で約50%小型化。モーターの最大電力に対する電源設備容量は最大10分の1に低減できる。
Voice
アイダエンジニアリング 執行役員 モータ事業部長
森永 茂樹氏
機械部品賞をいただき誠に光栄です。当社は約10年以上前、当時市場には存在しなかった、プレス加工に最適なサーボモーターを求めて自社開発に着手しました。そして誕生したのが、減速機無しでダイレクト駆動が可能な「大容量 低速・高トルクサーボモータ装置」です。
モーターだけではなくアンプ、電源、モーションコントローラー、エネルギーマネジメントシステムまで自社開発し、パッケージ化した本装置は、プレス機械だけでなく、大型産業機械をはじめとする多くの業界のニーズにもお応えできるため、2010年後半から外販を開始しました。今後も更なる高性能化に向け、進化を続けてまいります。
真空チャック機能および非接触による浮上搬送機能を持つ多孔質セラミックス製テーブル「エアロフィックス」
ナノテム(新潟県長岡市)
製品概要
ナノテムは、各種サイズの極薄基板・フィルムのチャッキングと、非接触による浮上搬送ができるセラミックス製テーブル「エアロフィックス」を開発した。独自のセラミックス焼結技術により、テーブル面は平均1μm(μは100万分の1)の微細気孔を無数に生成、平面度は5μmの精度を実現した。
微細気孔から空気の出し入れにより、均一な吸着や部分吸着、浮上搬送ができるためワークの変形や跡がつかずに、作業効率を大幅に高めコスト低減できる。静電気を除去する機能もあるため、帯電や放電による不良が生じない。
スマートフォンに代表される極薄基板やフィルム、電子部品は、露光や印刷工程が多数あり吸着固定、剥がす、貼る、汚染リスク無しの浮上搬送まで可能とした画期的な開発。従来はワークのサイズ・形状に合わせてチャック用テーブル製造していたのに対し、エアロフィックスは1台であらゆるワークに対応する。
Voice
ナノテム 代表取締役 高田 篤氏
この賞がもらえるとは思っていませんでした。とても驚きました。受賞は大変光栄です。まだ、海外の顧客が大半で、日本国内の顧客が金額ベースで3分の1と少ないため、国内外とも拡販に注力する考えです。
来期は「エアロフィックス」の優れた特徴をいっそう認知していただき、今期の2倍の売り上げを目指します。
これからの取り組みは、用途目的がガラス吸着からフィルムに変わっていて、フィルムを剥がす・貼る・浮上搬送向けの提案で需要を拡大していきます。加えて、ダイヤモンド砥石工具や研削・研磨装置の研究開発にも注力していく所存です。