健康・医療機器分野
DoseRite DTS
東芝メディカルシステムズ
製品概要
東芝メディカルシステムズが開発した「DoseRite DTS」はX線循環器診断装置を使った血管内カテーテル検査・治療時に、患者の被ばく線量をリアルタイムで管理できる。3次元患者モデル画像にカラーマップで皮膚入射線量を表示する仕組みで、医師は手術中に皮膚入射線量をリアルタイムで確認しながらさまざまな処置が行える。
X線を使った検査や治療は照射条件が常に変化するため、正確な被ばく線量や被ばく位置を確認することが難しかった。そのため放射線皮膚障害などの医療事故が起こるケースもあった。同技術はX線の照射条件や照射視野サイズ、カテーテルテーブルの位置情報などを受信し、仮想患者モデルデータを使って入射線量を計算する。モニターを常時確認し、一方向からのX線の集中照射を避けるなど、患者負担を軽減した低侵襲な検査・治療が可能になる。
同社はX線循環器診断装置の国内トップメーカー。線量の正確なモニタリングは世界の医療現場で重要視されており、国内外でシステムの利用を提案していく。
Voice
東芝メディカルシステムズ 代表取締役 瀧口 登志夫 氏
今回「健康・医療機器部品賞」に選定頂きました「DoseRite DTS」はX線血管撮影装置の線量低減技術です。疾病の早期発見・治療のための装置にはX線を用いるものがあり、そこには医療被ばくが存在します。検査を受ける患者さんのリスク軽減はもちろんのこと、検査や治療を行う術者、患者さんや術者の安全を管理する管理者すべての方のリスクの低減を目指して開発しました。
これからも最新の技術でみんながいきいきと健康に暮らせる社会を実現するために、患者さんにやさしく質の高い日本の医療技術を世界中の医療現場に提供してまいります。
点滴スタンド「divo」
岡村製作所
製品概要
岡村製作所の点滴スタンド「divo(ディーボ)」は”看護師にも患者にもやさしい”をコンセプトに開発された。従来の点滴スタンドに欠けていた①看護師の業務負荷軽減、②常に清潔に保つ、③患者が安心して持って歩ける、④使う人の心を明るくする、⑤使う人を選ばない調整機能-を実現する工夫を各パーツに施している。
最大の特徴は高さ調整機構部の安全ストッパー。一般的なネジ固定式ではなく、ストッパーを指で押し上げるだけでロックが解除されて伸縮が可能になり、手を離すと確実にロック。また、輸液フック部をリング(円筒)形状とし、リングの外周に沿わせて簡単・確実に輸液を掛けられるようにした。点滴スタンドを押しながら歩く際も輸液が揺れにくく、スタンド全体の安定性を保つ。
さらに介助者がサポートしやすいように、二人で握れるデザインのハンドルと荷物掛け用フックを標準装備。ハンドル・フック下にあるグリップを回すことで保持部が緩み、体格の違いや車いすの使用など、さまざまな患者に合わせて上下に動かせる。
Voice
岡村製作所 専務 マーケティング本部長 岩下 博樹 氏
看護師・患者両者の視点で使いやすい点滴スタンドを作りました。当社のヘルスケア部門は「病院スタッフの仕事の効率化につながっているか」ということを常に意識し、実際に製品を使用する現場でのリサーチに重きを置いて開発しています。「ディーボ」開発の際も、現役看護師へのヒアリングと評価を繰り返し、発売に至りました。
私たちは、医師や看護師ではないので患者は助けられません。それでも、病院スタッフの仕事の負担を少しでも軽減することが結果的にスタッフの笑顔につながり、最後には患者へのホスピタリティーにつながると信じて、これからもモノづくりに取り組んで参りたいと思います。
下痢止めフィルム剤
ツキオカフィルム製薬
製品概要
下痢止めフィルム剤は0.2mmと薄くて長さ30mm×幅20mmと小さな切手状で、携帯しやすい。独自開発した母材はでんぷん由来で軟らかく、水なしでも口中で簡単に溶ける。これらの特性は、外出先での急な服用が必要な下痢止め薬に適している。錠剤や水を飲み込むことに障害を持つ人や高齢者、幼児も服用しやすい。
フィルム製剤は生体内に直接吸収できるため、錠剤や飲み薬より少ない薬量で十分な効能が期待できる。原液を樹脂フィルム上に塗布する製法により、熱や圧力に弱い成分も扱える。同社は苦みなどがある粒子状薬剤をコーティングする技術も持ち、服用時の不快感も抑えられる。
同社は金属箔を紙や皮に熱転写する箔押し印刷を本業としている。独自技術により金箔を扱いやすいようシート化した。その派生技術として可食フィルムやフィルム製剤も事業化した。先に大手製薬会社にOEM(相手先ブランド)供給を開始している。下痢止めフィルム剤は初の自社ブランドの製剤製品となった。
Voice
ツキオカフィルム製薬 社長 月岡 忠夫 氏
実際に服用された患者さんからは「飲みやすい」という声をいただいています。他の形態の製剤より優れている点は多く、製品には自信を持っています。ただしフィルム製剤自体がまだまだ世間には知られていない製品。存在さえ知ってもらえればもっと販売は伸びると思っており、受賞が知名度向上につながってもらえるとありがたいです。フィルム製剤では2013年度に「ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞」を受賞しています。一度だけの受賞ならみなさんに「まぐれ」と思われるかもしれませんが、今回の受賞により「実力」と理解してもらえるはず。そういう意味でも今回の受賞は本当にうれしく思います。