2016年受賞部品

機械部品賞

「NSKリニアガイド」NHシリーズ、NSシリーズ

日本精工

製品概要

 従来比2倍以上に長寿命化した直動案内機器の戦略シリーズ。液晶・半導体製造装置、産業用ロボット、工作機械といった各種生産設備のほか、鉄道駅ホーム用ドア、CTスキャナーなどでの利用も可能だ。長寿命化により、生産性の向上、メンテナンス期間の延長、装置の小型化などに寄与する。
 ボール溝の設計変更により接触面圧を低減し、大幅に長寿命化した。小型でも寿命が長いので、省スペース化が可能だ。動定格荷重も同1.3倍に高まった。
 従来品「LHシリーズ、LSシリーズ」と取り付けまわりの寸法が同一なのも特徴。既存装置の設計を変えることなく、円滑に採用することができる。長期メンテナンスフリーを実現する潤滑ユニットなど、既存の各種オプションもそのまま適用できる。
 開発には独自の解析技術を活用した。また、生産現場ではロボットなどによる自動化を推進し、競争力を確保している。

Voice
日本精工  産業機械技術総合センター 直動技術センター所長 宮口和男氏

 栄誉ある機械部品賞を賜り、誠にありがとうございます。「NSKリニアガイド」NHシリーズ、NSシリーズは、弊社のおよそ100年にわたる転がり機械部品の経験を結集した製品であり、受賞を大変喜んでおります。
 リニアガイドは装置の直線運動を案内する重要な機械部品で、工場の生産設備に不可欠なモノです。従来比2倍以上の長寿命を実現した本製品は、生産設備の一層の信頼性向上にお役立ちします。
 今後も、高機能な機械部品の開発を通じ、日本のモノづくりのさらなるレベルアップに貢献していきたいと存じます。

超高精度・小型・高速直動アクチュエータ

アイセル

製品概要

 アイセルは、産業機械向けに高精度で小型の直動アクチュエーターを販売。従来、外形寸法は28mm角が限界だったが、ガイドとボールネジの一体化により同20mmと小型な製品に仕上げた製品だ。芯ずれゼロで0.1μmの高精度な微小直動送りを可能にし、国内の半導体メーカーを中心に採用が進んでいる。
 同アクチュエーターは、ガイド部、ボールネジ部、軸受、カップリング、モーター、ハウジングで構成。ガイドとボールネジの一体化により部品点数が少ないため、従来品に比べて15%のコスト削減に成功した。一体化に向けて自社で開発に力をいれたほか、部材の調達を重視。特に生産委託したボールネジメーカーと打ち合わせや試作を重ね、納得のいく形を作りあげた。
 このほかにも定格推力は30N、瞬時最大推力60N。定格送り速度は1秒あたり10mm、瞬時最大送り速度は1秒あたり50mm。有効ストローク量は10mmの性能を持つ。

Voice
アイセル 社長 望月貴司氏

 このたびは、栄えある“超”モノづくり部品大賞機械部品賞を受賞でき誠に光栄です。長年の研究が評価されたことに大変感謝しております。この製品開発のきっかけは、従来高精度ガイドのみを販売していたところ「ガイドが高精度でも取り扱いが難しい」といったお声を頂いたことです。高精度ガイドと駆動部を一体化し、コンパクトで高精度なアクチュエーターを目指しました。
 特に苦労したのが駆動部側との取り付け誤差で、試行錯誤の末にガイドとボールネジ部の一体構造化に成功。これにより芯ずれを抑え、高精度微小送りが可能になりました。今後も受賞できるような商品開発に取り組んで参ります。

高能率仕上げ加工用刃先交換式異形工具シリーズ

三菱日立ツール

製品概要

 次世代の切削工具との位置付けだ。シリーズ第一弾は、曲面や壁が切り立つような複雑形状の金型や部品の仕上げに向き、加工時間を従来工具に比べ約70%削減する。
 具体的には自動車部品のウォータージャケットの金型、タービンブレードなどだ。これら5軸加工を必要とする複雑形状品の仕上げに向く。
 刃先交換式では珍しい「バレル工具」と呼ばれる、たるのような先端形状を持つ。工具径より外周の弧が大きく、1回の動作で大きく削れる。従来0.2mm単位で700回刻みだった加工を、3倍の0.6mmで230回に向上させた。
 第二弾として、先端がレンズのように見える異形工具も品ぞろえしている。
 自動車のボンネット、ドアなど緩やかな曲面のあるプレス金型向けだ。加工時間を現在比で3割削減する。ある条件で、加工面の粗さを従来のRa0.80μmからRa0.36μmへと大幅に改善した。

Voice
三菱日立ツール 社長 増田照彦氏

 受賞の栄誉を賜り誠に光栄に存じます。
 受賞製品は、外周切れ刃部に工具半径よりも大きなR切れ刃を備えたバレル(たる)形状の工具で、世界を驚かせる鋭い発想で三菱日立ツールならではのとんがった心を込めたご提案の一つの形です。立壁の急勾配曲面などを高精度に、高能率なストレスのない加工が可能になりました。
 今後ともお客さまの課題に真剣に向き合い、お客さまと私たちの笑顔のために果敢に挑戦し、日本のモノづくりに貢献して参ります。
 削れなければ工具じゃない。楽しくなければ人生じゃない。

耐熱合金加工用切削工具 BIDEMICS JX1/JP2

日本特殊陶業

製品概要

 航空機エンジンのタービンディスクやシャフトなど耐熱合金部品を切削加工する工具。インコネルなどの耐熱合金は熱伝導率が低い、高温強度と加工硬化が大きい、工具材料との親和性(溶着性)が高いなど切削が難しい材料だ。
 特殊な炭化物と化学的安定性に優れる酸化物とを超微細、均質に複合化するなどし、硬度、熱伝導性などを向上させた。
 粗加工と中仕上げ加工に用いる「JX1」(写真上)は優れた耐摩耗性能、耐欠損性能を持ち、従来製品比2倍の切削速度を実現。仕上げ加工に用いる「JP2」(写真下)は優れた耐摩耗性、耐溶着性能を持ち、中仕上げ加工では同4倍を実現した。また、両製品とも、工具寿命を4倍に延ばせる。
 長寿命化により、チップ交換、段取り回数低減による設備停止時間の削減、作業者が多くの設備を稼働できることによる加工費低減が見込める。米国などの大手エンジンメーカーで採用実績が出始めている。

Voice
日本特殊陶業 取締役副社長執行役員 特命担当、品質統括本部担当、機械工具事業部担当 河尻章吾氏

 一つの素材に対して機械部品賞を授与して頂き、喜びの気持ちでいっぱいです。日本の工作機械は世界トップレベルであり、性能を発揮できる工具を目指して開発して参りました。
 「BIDEMICS」は世界の主流である超硬(Carbide)と高性能であるセラミック(Ceramics)を融合させたことに由来し、新素材の魁となるよう命名しました。
 難削材である耐熱合金を従来比10倍の速さで加工できる特長を持ち、生産性を向上させて投資や作業コストを抑える事ができる点で、ご評価頂いております。

超小型IGS(超小型集積化ガス供給システム)

フジキン

製品概要

 ミニマルファブの実現を視野に製品化を進めているのが超小型の集積化ガス供給システム(IGS)。狙うデバイス構造を自在に作り上げるために、IGSには高い信頼性・均一性・再現性・生産性・低コストが要求される。半導体製造装置関連にもこれら技術の応用が進められており、プロセスチャンバーヘ、各種の特殊材料ガスを瞬時に所定の流量で、また完全クリーンの状態で供給する。
 超小型IGSはステンレス製ブロックに、継手(Wシール)、小型バルブ、圧力制御式流量コントローラー(FCS)を搭載した構造。小型化すると半導体製造におけるガス供給系の設備設計の自由度が高まる。ガス流量制御機器や継手、作動バルブの小型化など、複数の技術課題への挑戦が続いている。
 IoT(モノのインターネット)、第4次産業革命のカギを握る半導体。今回の超小型IGSの取り組みで、さらなる半導体の超微細加工に道を開くことが期待される。

Voice
フジキン 社長 野島新也氏

 “超”モノづくり部品大賞を13年連続で受賞させていただくことができました。心より厚く深く、御礼申し上げます。
 超小型IGSは、ミニマルファブの実現を視野に製品化を進めている超小型の集積化ガス供給システムです。ミニマルファブは、以前であれば遠い夢のような話でしたが、ここにきて形がくっきりと見えてきました。IoTがリードする時代の到来の中で、電子バルブから成長を遂げてきたフジキンの製品群は重要なポジションを占めており、さらなる進化を遂げてまいります。

麺生地混合装置 真空Extruder内蔵「エアロッカー式真空チャンバー」

ソディック

製品概要

ソディックの製麺装置に搭載する真空チャンバーで従来技術よりも麺の歯応えを良くすることができる。麺の歯応えは含有する空気量に関係し麺生地の密度が大きい方が良い。同チャンバー搭載の製麺装置で作った麺生地は空気量が少なく密度が1cm3当たり1.32g。従来式の同1.29gを上回る。
 従来技術から生地投入部の機構を見直して、内部の回転体が直ちに材料投入口をふさぐ構造を採用した。回転体は互いに180度の位置関係で生地を納めるポケットを持つ。回転で生地を混合工程に落としつつ投入口をふさいで真空引きする。
 この構造は一般的なシャッター開閉方式などに比べ密閉状態を作りやすく安定した真空圧力を維持できる。
 空気の含有量を少なくすることでスープの中で延びにくくなり、酸化も抑えられ長持ちする。ソディックは同真空チャンバーが製麺以外にも粉を原料にした医薬品などにも向くとみて提案していく。

Voice
ソディック 常務取締役 大迫健一氏

 栄誉ある賞を受け光栄に思います。今回受賞したのは当社の食品機械事業部門の製麺装置の部品になります。
 パスタや強いコシの麺生地などを生産する際、スクリューで押し出す装置を使います。この装置に真空を引いた環境で作ると食感が格段に上がります。受賞した「エアロッカー式真空チャンバー」は、完全に密閉された装置の中で麺を連続生産しながら、真空を効率よく引ける機能を高めました。安全安心かつ、品質の高い麺生産への技術的な貢献が評価されたと感謝しています。今後も気を抜くことなくモノづくりへの技術や開発への挑戦を続けて参ります。

SmartSCALE

マグネスケール

製品概要

 マグネスケールが展開するのが、工作機械に組み込まれ、位置決め精度が高い「SmartSCALE(スマートスケール)」だ。スケール部分の磁性体の組成や密度を変更し、生産方式も改善することで磁気出力を従来に比べて30%高めた。スケール上のセンサーの感度も10倍に向上させた。スマートスケール技術・製造部の丸山重明部長は「今までよりも賢いスケール」と自信をのぞかせる。
 磁性体を利用したスケール(マグネスケール)の顧客を広げてきた同社にとって、スマートスケールはこれまでとは異なるコンセプトで実用化した。異物などが入らないようにするための筐体で覆う構造だったが、筐体をなくすニーズが高まっていたという。そこでセンサーとスケール部分をそれぞれ金属カバーで覆うように変更した。磁気出力の向上などにより、センサーとスケールの間隔を確保でき、金属カバーの導入につなげた。

Voice
マグネスケール 社長 藤森徹氏

 このたびは栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。今回の受賞製品は長年培ってきた磁気技術と新開発の技術により、工作機械などの過酷な加工現場でも「壊れにくい」スケールを実現しました。ベアリングやダストリップの機構部分などが故障する要因を大幅に減らすとともに、分割されたスケールと検出ヘッドをそれぞれ完全密閉しているため、エアパージも不要の高精度なスケールとして、ランニングコストの削減にも貢献いたします。今後もお客さまに喜んでいただける製品開発に取り組み、日本のモノづくりに貢献してまいります。