2017年受賞部品

機械部品賞

エンジン刈払機用風力式ガバナ機構

日立工機

製品概要

 日立工機はエンジン刈払機をより低騒音、低燃費、ハイパワーにする目的で「風力式ガバナ機構」を開発した。同機構はエンジン回転数を自動的に一定に保つことができる、業界初の独自技術。エンジン冷却風の風量増加に応じてスロットルを閉じるガバナプレートと、スロットルバルブを開く方向に動かすねじりバネをキャブレターに取り付けた。スロットルバルブをプレートとバネのバランス点に保持し、自動的に一定回転数を維持する。
 低負荷の際は回転数を抑制し騒音と燃料消費を抑える。高負荷の際は自動的にエンジン出力を増加させ回転数を維持し、刈り刃の停止を防ぐ。回転数の調整を行う必要がなく快適に作業でき、ムダな燃料消費も抑制する。

Voice
上席執行役員 研究開発本部 本部長 横山 光聖氏

 「エンジン刈払機用風力式ガバナ機構」が栄えあるモノづくり部品大賞「機械部品賞」を頂戴し、大変光栄に存じます。
 当社は、主に建築現場・家庭・農作業で使われる電動工具・空気工具・エンジン工具を全世界に展開しております。今回、受賞したエンジン刈払機用風力式ガバナ機構は、小型・軽量・低コストでエンジン回転数を自動で調整し、草刈作業におけるお客さまの負担を軽減でき、高い評価を得ております。
 今後もお客さまの快適性と作業効率向上にさらに貢献できるよう、製品開発に継続して取り組んで参ります。

ラジエタースプルーブシュ(糸引き防止スプルーブシュ)

プラモール精工

製品概要

 金型から射出成形品を取り出す際、流路内の樹脂の冷却が不十分な場合「糸引き」と呼ばれる成形不良が生じる。プラモール精工の「ラジエタースプルーブシュ」は、糸引きを防ぐために金型に取り付ける部品。
 成形機のノズルから熱が伝わりにくくするため、部品表面に同心円状の凹凸加工を施して、接触面積を小さくした。裏側に放熱フィンを設けて熱を逃がす。樹脂の入り口を切れやすいH形状にした。成形条件に応じて穴の大きさを変え、射出時のピーク圧を抑える。
 ABS樹脂やポリプロピレン(PP)など10種の樹脂で効果を確認。国内特許を取得した。海外への拡販を見据えて米国、欧州、中国、タイなどでも特許取得を検討する。

Voice
代表取締役社長 脇山 高志氏

 このたびは「機械部品賞」を賜り、喜びでいっぱいです。当社社員の励みにもなります。
 プラスチック射出成形加工に携わる企業にとって糸引き対策は究極の課題でした。多くの企業が同様の商品を販売していますが、成形樹脂の種類や温度帯を問わず、糸引きを防げるものはありませんでした。
 試行錯誤を重ね、ようやく完璧なものができました。これまで悩まれてきたお客さまに必ず喜んでいただけるものです。今回の受賞は商品の普及に多大な影響をもたらすと確信しております。国内だけでなく、世界中に拡販してまいります。

超高圧水素配管用メタルガスケット継手

フジキン

製品概要

  耐圧性や外部漏洩に対する信頼性と、施工・メンテナンス性を向上した超高圧水素配管用メタルガスケット継手。従来の水素ステーションで主流だった、コーン&スレッド方式継手の課題点である着脱耐久性や締め付け時の供回りを、新方式で解消した。
 シール性が高く施工もしやすい半導体製造装置用メタルガスケット継手をベースに開発。同継手は高圧対応が難しい構造だが、継手内径やシール面突起の直径、ガスケット内外径による係数から最適値を割り出し、水素ステーションで使用できる95MPa対応にした。
 着脱時に大きなスペースを要しない構造のため保守・点検が容易になり、長期の安全運営とメンテナンスコストの低減につながる。

Voice
代表取締役社長 野島 新也氏

 今回の受賞でモノづくり部品大賞を14年連続で受賞させて頂くことができました。心より厚く深く御礼申し上げます。
 超高圧水素配管用メタルガスケット継手は、独自のシール構造による漏れに対する信頼性向上、配管施工時間の短縮、メンテナンス時の作業性改善の効果があり、圧縮水素スタンド設備に無くてはならないキーパーツの1つとなると確信しております。
 燃料電池自動車の普及から水素発電の本格導入に向かう水素社会の実現に、フジキンの流れ制御機器はさらなる進化を遂げて貢献してまいりますので、今後ともご指導、ご鞭撻のほど、よろしく申し上げます。

フラット直角分岐装置「F-RAT-U225」

伊東電機

製品概要

 伊東電機が受賞したフラット直角分岐装置は、生産や物流の現場において、コンベヤー上の搬送物を分岐処理する箇所で使われる。搬送物を直進、左右に仕分けする。
 同分岐装置はローラー搬送部とコロ搬送部、搬送部を昇降させる昇降部で構成。各搬送部を交互に昇降させて直角分岐させるため、搬送物への衝撃や振動を軽減する。精密機器や壊れやすいもの、形の崩れやすいものを搬送できる。
 これまでのローラーとベルトを組み合わせた装置は、搬送物が引っかかってベルト外れの可能性があったが、同分岐装置はベルトの接触がなく、トラブル発生を防げる。搬送と直角分岐が1ユニットのため、レイアウト設計も簡単にできる。

Voice
代表取締役 伊東 一夫氏

 このたびは栄誉ある「機械部品賞」を賜りましたこと誠に光栄に存じます。
 弊社は小型モーターの専門メーカーとして創業し、70年にわたり独自技術を駆使し弛みない開発努力とフロンティア精神で数々のオリジナル製品を生み出して参りました。
 このたびのフラット直角分岐装置「F―RAT―U225」につきましても、弊社の世界の各拠点からの市場ニーズを適確に反映したオリジナル製品であり、世界各地のお客さまに満足してご使用頂けるものと確信しております。今後も引き続き、社会に貢献するモノづくりにまい進してまいります。

Hyper Zタップシリーズ

不二越

製品概要

 不二越の「Hyper Zタップ」シリーズはコーティング工具でも無処理工具でもない新機軸の製品。安定加工と長寿命を両立させた。
 最適設計を施した新しい切れ刃形状で切りくずの排出性を高め、切りくずが絡みやすい低切削速度域や被削材でも安定加工する。材料、熱処理、表面処理などの独自技術を複数組み合わせ、耐摩耗性、対欠損性を大幅に向上させた。
 非コーティングの従来製品に比べ寿命を2倍とした。非コーティング製品は、毎分20mほどの中切削速度領域では加工の初めから刃先の欠損や異常摩耗が起きやすい。また、毎分5~25mの低・中切削速度領域では、コーティング製品を上回る寿命を実現した。
 寿命を伸ばしたことで工具廃棄物を65%削減でき、環境保全に寄与する。

Voice
取締役工具事業担当 塚本 裕氏

 このたびは、「機械部品賞」を賜り、誠にありがとうございます。これもひとえに「Hyper Zタップ」への、お客さまからのご支持のおかげと感謝申し上げます。
 「Hyper Zタップ」は、材料開発から熱処理、研削、表面処理まで、当社の持つ技術シーズを結集した、他社にはない新ジャンルの革新的なタップです。
 幅広い切削速度領域(毎分5~25m)での安定加工を可能にし、工具寿命は従来の無処理タップの2~3倍、コーティングタップをも上回る長寿命化を実現しました。
 今後も、お客さまのニーズに対応する商品開発で、モノづくりの世界の発展に貢献して参ります。

紫外光用極薄波長板「MT波長板」

光学技研

製品概要

 波長板は光の偏光を制御するための部品で、レーザー計測・分析装置やレーザー加工機などに使われる。光学技研の紫外光用極薄波長板「MT波長板」は、光学検査の高精度化につながる。厚さ10µm(マイクロは100万分の1)以下の単一結晶板で、193.4nm(ナノは10億分の1)の高出力で短波長の光に破損することなく性能を発揮する。
 結晶板を交差0.1µm程度の精度で、研磨加工する。手作業で洗浄後、表面の光の反射をなくして、透過率を上げるための反射防止膜を両面に成膜する。破損防止と取り扱いを考慮して、金属ホルダーに装着し出荷する。従来は単一結晶板での加工は難しく、2枚の結晶板を貼り合わせて製作していた。

Voice
社長 岡田幸勝

 栄誉ある「機械部品賞」をいただき、誠に光栄に存じます。MT波長板は5年以上かけて開発してまいりました。それだけに技術開発や加工に従事してきた社員も大変喜んでおります。これにより社内のモチベーションが上がると確信しています。
 当社は自社で素材選定から研磨加工、洗浄、反射防止膜の成膜、出荷まで一貫して取り組んでいます。品質にこだわる企業姿勢が評価され、海外を含めて受注が増えています。
 MT波長板の開発を通じて自社技術のレベルアップにつながりました。この受賞を糧にさらなる挑戦に取り組んでいく所存です。

ACサーボドライブ「Σー7Cモデル」

安川電機

製品概要

 安川電機のACサーボドライブ「Σ(シグマ)ー7Cモデル」は、使い勝手の良さで好評なΣー7シリーズに、システムを省スペース化するためのコントローラー「MP3300」とサーボドライブ「Σー7W」を一体化した。単体同士の組み合わせと比べて、幅が34mm短くなって、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)を用意しなくても、小規模装置のシステムを構築できる。
 Σー7Cは装置のモジュール化や、コンポーネント小型化といった顧客ニーズに対応するため、機能を強化した。機能部のバッテリーレス化や、高速応答性も実現した。省スペース・省配線を生かして装置のモジュール化、分散制御のシステム構成を実現する。

Voice
執行役員モーションコントロール事業部長 熊谷 彰氏

 このたびは栄誉ある「機械部品賞」を賜り、誠にありがとうございます。情報通信技術の活用により更なる生産性向上が求められる中、当社はこうした要求に対応するため、お客さまの課題をともに解決するパートナーとして、自動化ソリューションの提案に取り組んでおります。
 ACサーボドライブ「Σー7Cモデル」はこの取り組みを具現化した製品の一つです。装置自体の小型化や、製造装置内の機構部分モジュール化に役立つ製品となっています。
 受賞を励みに、今後も機械・装置に貢献できるモノづくりに取り組んで参ります。

狭窄ノズルおよびこれを用いたTIG溶接用トーチ

ムラタ溶研

製品概要

 高品質で低コストなTIG(タングステン不活性ガス)溶接を可能にしたのが、「狭窄ノズル」。プラズマアークの直進性やエネルギー密度の向上といったTIG溶接の課題を、タングステン電極棒の周りに狭窄ノズルを取り付けて解決した。
 溶接ガスが流れる溶接トーチ内に、ノズルを設けてもうひとつの高速ガス流を実現させるという発想は、今までになかったものだ。プラズマ気流速度が高まり、アークに作用する電磁力や磁界が強化されることで、ミクロンオーダーの超薄板における突き合わせ溶接が可能になった。
 作業者の熟練度を要せず、高品質で安全・安心に、しかも溶接速度は従来の5~20倍になった。国内外で一層の普及が見込まれる。

Voice
会長 村田 彰久氏

 このたびは栄えある機会部品賞を賜り、感謝の気持ちで満たされる想いです。狭窄ノズルを搭載したTIG溶接トーチは、薄さ40µmの金属を深い溶け込みで極小範囲に限定して溶接できる機械部品ですが、最大の特長は、わずかなコストでレーザーや電子ビーム溶接に匹敵する以上の溶接結果を生むことです。小さな部品が、今までできなかった溶接を可能にしたことで、多くの中小企業に広く貢献できると思われます。
 また、開発には大阪大学との連携があり、経験と知識を産学が持ち寄った結果の受賞に、ものづくりの明るい未来を感じています。