2019年受賞部品

環境・資源・エネルギー関連部品賞

中心部にターボ型リブを有する軽量・省エネファン

三菱電機

円筒ボスなくし43%軽量化

 三菱電機が開発したルームエアコンの室外機向けの新型ファンは、従来中心部にあった円筒ボス(軸受部分)をなくして43%軽量化した。消費電力も従来比で12%削減。構造見直しで強度が不足しないようにリブの配置を工夫した。
 補強目的だった円筒ボスの代わりに耐振動用のターボ型リブを適切に設けて剛性を保持しながら、そのリブ自体を翼形状に成形することでファンの送風効率も高める一石二鳥の効果を実現した。
 室外機の熱交換器全体へより高効率で送風できれば、ファンモーターの消費電力を抑えられる。また、リサイクル性に難があったファン材料の使用量も削減でき、環境負荷低減にも大きく貢献している。
 新型ファンは小型室外機から大型室外機まで幅広く展開されており、これまで全世界に向けて数多くの出荷実績がある。

Voice
三菱電機 RAC製造部 専任 濱田 慎悟 氏

 この度は名誉ある賞を頂き、光栄に存じます。
 本製品は、空調機器用のプロペラファンの省エネ性改善と樹脂量削減を目的に開発しました。送風効率と軽量化・強度向上を両立する上では、流体・構造解析による現象分析、形状考案と試作実験を繰り返しました。最終的にターボ型リブの設置が効果的とわかり、製造性や品質基準も満たした上で空調室外機へ搭載、量産化にこぎつけました。
 本開発技術により、地球環境負荷・資源・エネルギー軽減に貢献できるため、国内・海外向け空調製品へますます適用拡大していく所存です。



超小型EV向けワイヤレス充電システム「D-Broad EV CHARGING DOCK」

ダイヘン

停車するだけで自動充電

 ダイヘンは、社会への早期普及が見込まれる超小型EV向けにワイヤレス充電システム「D-Broad EV CHARGING DOCK」を開発した。充電ケーブルが不要で、停車するだけで自動充電を実現する。EVの普及拡大に伴い高まりつつある充電インフラの整備ニーズに対応する。
 同社の産業機器向けワイヤレス充電システム「D-Broad」シリーズで実績のある磁界共鳴方式を採用。送電側と受電側のコイルの位置ズレを許容できる範囲を大幅に拡大するとともに、業界最高水準の高効率給電を実現した。自動運転技術との相性もよく、モビリティーの普及と全国の地域活性化への貢献が期待できる。駐車管理・課金・車両ロックシステムを搭載することで、簡単にカーシェアリングの運用も可能となる。

Voice
ダイヘン 取締役常務執行役員 蓑毛 正一郎 氏

 このたびは大変名誉ある賞を賜り、心より感謝申し上げます。
 「D-Broad EV CHARGING DOCK」は、当社が長年培ってきた高周波やインバーター技術を駆使し、世界初の超小型EV用ワイヤレス充電システムとして販売を開始しました。充電ケーブル不要で充電できることから、駐車場に停車するだけで自動充電が可能です。
 自動運転技術との相性も良く、利用者の利便性向上に寄与し、さまざまな社会課題の解決につながると期待しております。今後も社会に新たな価値を提供する技術開発をより一層推進してまいります。



Mn-Zn系高周波電源用ソフトフェライトコア「MaDC-F」シリーズ

日立金属

トランスの性能低下防ぐ

 日立金属の高周波電源用ソフトフェライトコア「MaDC(マードック)-F」シリーズは、高周波環境で使っても磁心損失(エネルギー損失)を小さく抑えられるマンガン(Mn)―亜鉛(Zn)系の軟磁性材料を使った磁心(磁気コア)。サーバーやアダプター、EVの電源・電力用変圧器(トランス)などに用いられる。
 トランスなどの機器は、小型軽量化のため次世代パワー半導体の採用が進み、コアにも高周波環境への適応性が要求されるようになった。同シリーズは高周波領域でも磁心損失が少なく、トランスの性能低下を防げる。
 例えば、周波数500キロ~1メガヘルツ帯での使用を想定したシリーズ製品「ML95S」は、磁心損失を同社従来品の約3割に減らす実証データがあり、トランスやこれを組み込むサーバーなどの小型化・高効率化に貢献できる。

Voice
日立金属 執行役 機能部材事業本部 副本部長 植村 典夫 氏

 栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 「MaDC-F」シリーズは、高周波領域で使用する受動部品の小型化という未来のニーズを見据えて開発した高周波電源用のソフトフェライトコアです。
 開発に際しては、次世代パワー半導体の伸長を想定し、対応する周波数やユーザーの要求特性を詳しく調べました。その上でそれぞれの周波数に応じた材料設計、そして幅広い周波数領域にもれなく適応するためのシリーズ化に、関係者一同が力を注ぎました。
 今後も産業部材のさらなる高性能化に貢献すべく精進してまいります。