2020年受賞部品

健康福祉・バイオ・医療機器分野

ガルバニ電池式鉛フリー酸素センサ

マクセル

小型・軽量、低コスト測定

 「ガルバニ電池式鉛フリー酸素センサ」は、小型・軽量で常温作動し、低コスト酸素濃度を測定できる。船倉やマンホールなどでの酸欠状態のチェックや、医療機器の酸素濃度の検出などに使用されている。
 マクセルは、独自の弱酸性電解液を開発し、センサーを鉛フリー化した。同センサーは、二酸化炭素(CO₂)の影響を全く受けず、他の酸性ガスの影響も受けにくいのが特徴。同電解液は、負極の反応生成物を長期的に安定して電解液中に溶解させることができるため、長寿命化を実現した。従来の鉛酸素センサーと同等レベルの特性を持つ。
 また、2021年7月には、鉛酸素センサーは欧州RoHS指令の適用除外が解除となる見込みだが、同社のセンサーは鉛フリーとなったことで同指令に完全適合した。

Voice
マクセル エナジー事業本部 電池事業部 技術部 課長 北澤 直久 氏

 ガルバニ電池式の酸素センサーの鉛フリー化は、難易度が高いと言われていました。当社の「ガルバニ電池式鉛フリー酸素センサ」は、長年の研究により、鉛フリー電極と、その電極反応の制御に適した弱酸性電解液を開発して製品化したもので、技術を高く評価いただいたことを大変うれしく思います。
 「鉛フリー」で「ガルバニ電池式」の酸素センサーは、RoHS指令にも適合し、環境配慮面はもちろん使いやすさの点からも市場ニーズは高く、今後、世界のガルバニ電池式酸素センサーの鉛フリー化の普及に努め、環境保全に貢献していきます。

ディスポーザブルアクティブ電極「CHIDORI」

日本パーカライジング

電気メスへの組織付着 低減

 ディスポーザブルアクティブ電極「CHIDORI」は、コーティング加工を施すことで、組織付着を低減した電気メス構成部品。剝がれにくい表面処理剤を開発し、コスト低減に貢献する。焦げ付きも拭き取りやすく手術の効率が向上する。微細塗装が可能な技術を生かし、側面を塗装しないことで放熱性を上げ、温度上昇を抑制する。患部以外の熱侵襲によるリスクを抑えることができる。従来の電気メスは、切開や止血の際に血液が焦げ付き、電気の流れが悪くなるのが難点で、術中に拭き取りながら使ったり、新しいメスに持ち替えて使ったりすることが多いのが課題だった。
 日本パーカライジングは、各種産業分野への加工で蓄積した金属表面処理技術を活用し、同製品を開発した。日本のほか、中国や東南アジアなどでの販売も視野に、量産に向けた設備投資も実施した。

Voice
日本パーカライジング 代表取締役社長 松本 満 氏

 このたびは、「健康・バイオ・医療機器部品賞」を頂戴し、誠に光栄に存じます。
 ディスポーザブルアクティブ電極「CHIDORI」は、各種産業分野で蓄積した表面処理技術を生かし、研究者や関係者の情熱が最終製品の開発につながったものです。炭化物付着抑制や温度上昇制御など、新たな機能を提供することで、手術の効率やコストの改善などに貢献できると考えております。
 今後、健康・バイオ・医療に対するニーズの高まりが想定される世界に対して、弊社ができる社会貢献の意味を考え直し、将来につながるモノづくりを究めていきたいと思います。

超小型な送液用ポンプ「マイクロチューブポンプカセット」

アイカムス・ラボ

細胞培養液ロスを抑制

 細胞工学や生化学といったライフサイエンスの実験で送液するチューブポンプで、超小型・低価格化を実現した。遊星式の複数個のローラーが公転してポンプ内のチューブを圧搾して送液するため、装置外部から細菌類がポンプ内に混入せず無菌性の確保が容易。1分間当たり0.1マイクロリットルの微量の送液ができ、弁構造がないため浮遊細菌を含む懸濁液や培養液のような粘性のある液体を流すのに適している。
 高価な細胞培養液の無駄なロスを抑えられ、実験のコストを低減する。一方向送液、循環送液ともに可能で、総液量はリザーバーの容積変更で自在に設定できる。実験室にある既存の細胞培養システムと組み合わせて使用する際には、工具を使わずに連結できる構造のため、組み立て時のミスを防ぐ。プラスチック製で実験用廃棄存として焼却できる。

Voice
アイカムス・ラボ 代表取締役 片野 圭二 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、大変光栄でございます。
 本マイクロチューブカセットは、研究者のニーズを基に開発した商品です。近年、再生医療や分子細胞生物学等の分野において、高度な医療や実験研究のためには高品質の細胞供給が重要課題になっています。本製品は、細胞培養工程において培養液交換の作業負荷を大幅に低減するとともに、手技に寄らずに高品質な細胞を安定して生産することが可能となりました。
 本受賞を励みとして医療・バイオ分野に関わる全ての方々が「よりよく生きる」ことを目指して、今後も事業を発展してまいります。