2023年受賞部品

電気・電子部品賞

バッテリーセンシングIC LC709204/9

オン・セミコンダクター

二次電池の劣化を診断

 オン・セミコンダクターの「バッテリーセンシングIC LC709204/9」は、リチウムイオン電池(LiB)の劣化を診断し、過充電や過放電による発熱・発火リスクを低減する。スマートウオッチなどの携帯機器に採用されており、現在、累計数千万台以上の出荷実績を誇る。今後は、より高い安全性が求められる補聴器や聴覚補助機能付きヒアラブルへの採用増が見込まれる。
 独自のバッテリー残量測定アルゴリズムを高度化し、従来品に比べて残量精度と消費電力をそれぞれ約30%改善。また、劣化推定機能を搭載しており、電池容量率による健康度だけではなく、蓄積したダメージを示せる。さらに、過充電・過放電に対し、二重の保護機能を有する。残量精度や動作電力などにおいて、業界トップクラスを実現した。

Voice
オン・セミコンダクター デジタルソリューションズ・ビジネスユニットリーダー 寺田 聡 氏

 このたびは、「電気・電子部品賞」をいただき、光栄に存じます。
 受賞した「バッテリーセンシングIC LC709204/9」は、当社が長年継続して開発してきた独自アルゴリズムで電池の物理化学レベルまで検討し、製品化を実現したものです。この製品は、人々の暮らしに欠かせない存在となっている多くの携行品で使用されるリチウムイオン電池(LiB)の安全性を向上させます。
 長年にわたって電池向けの半導体を開発してきた技術を生かして、今後もお客さまの課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献する製品を提供していきます。

カラーセンサ 形B5WC

オムロン

油の劣化、色の変化で把握

 オムロンの「カラーセンサ 形B5WC」は、幅40ミリ×奥行き8.4ミリ×高さ15.9ミリメートルと、機器への組み込みに適した小型サイズが特徴。製造現場の装置へ搭載し、油の劣化状態を色の変化から定量的に把握できる。これまで人が行っていた目視点検を自動化する。
 B5WCは、光の三原色の原理を活用。赤、緑、青(RGB)の成分を含む白色発光ダイオード(LED)の光を照射すると、対象物の色によってRGBの比率が変わり、同センサーがRGBの電圧値を出力する。この電圧値を利用してユーザーは機器開発を行う。B5WCによって油の状態などを即時遠隔監視でき、作業員ごとの判断のバラつきや突発的な故障による生産停止をなくすほか、点検・保全工数削減にも役立つ。油圧装置や工作機械から、ドリンクサーバーの自動化といった幅広い活用を想定する。

Voice
オムロン 執行役員 デバイス&モジュールソリューションズカンパニー 営業統轄本部長 神尾 幸孝 氏

 このたびは、「電気・電子部品賞」をいただき、大変光栄です。
 当社の電子部品事業は、「つなぐ・切る」技術を軸に、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)とデジタル化社会の社会課題解決を顧客とともに進めています。
 「カラーセンサ 形B5WC」は、製造機器の油の劣化を色の変化で監視し、点検バラつきを防止、設備起因の生産ロスを抑制してカーボンニュートラルへ貢献します。また、製造現場以外にもドリンクサーバーの自動化など、さまざまな色を判別する場面で活用でき、労働力不足の社会課題の解決に貢献します。
 今後も社会価値を提供し、持続可能な社会への貢献を続けます。

超短パルスファイバレーザー「iQoM」

セブンシックス

半導体ウエハーの欠陥検査

 セブンシックスの「超短パルスファイバレーザー『iQoM』」は、レーザー加工装置やレーザー検査装置に組み込み、微細加工・ガラス加工・複合材料加工のほか、バイオイメージング・半導体ウエハー欠陥検査などの検査に使用できる。
 半導体レーザーのスイッチを入れると、瞬時に再現性の良い安定的なパルスを発振させる。
 中心波長は1040ナノメートル(ナノは1億分の1)で、出力は80ミリワット。パルス幅は3ピコ~15ピコ秒(ピコは1兆分の1)。超短パルスを18メガ±3メガヘルツ(メガは100万)の繰り返し周波数で発生する。経年劣化しやすい可飽和吸収ミラーの代わりに異なる2波長の光を透過させるフィルターを使い、安定したレーザー動作を実現した。
 汎用の光ファイバー部品のみを使い、内部構成を単純化。サイズや価格を大幅に抑えた。

Voice
セブンシックス 代表取締役社長 羽根 洋介 氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 当社は、光の専門商社として始まり、2014年より世界最高のファイバーレーザーを提供することを目標に研究開発を進めてまいりました。
 受賞製品である「超短パルスファイバレーザー『iQoM』」は、独創的な発明により、高い信頼性と性能、安定的な供給体制、圧倒的な低価格をすべて実現しました。
 今後も製品ラインアップを充実させ、国内唯一の超短パルスファイバーレーザーメーカーとして、半導体・加工・医療、さまざまな産業分野の発展に貢献できるよう励んでまいります。

機器の省エネ、小型化に大きく貢献するGaNデバイス「EcoGaN」

ローム

低消費電力・小型化に貢献

 ロームの「EcoGaN」は、窒化ガリウム(GaN)の性能を最大限生かし、実装先の低消費電力化、周辺部品の小型化、設計工数・部品点数削減を同時に実現するパワー半導体。GaNは、次世代パワー半導体として期待される化合物半導体の材料で、従来のシリコン製半導体と比べて、スイッチング性能に優れており、市場で採用が進んでいる。
 2022年、同社はゲート耐圧を業界最高となる8ボルトまで高めた150ボルト耐圧の窒化ガリウム製高電子移動度トランジスタ(GaN HEMT)の量産を始め、EcoGaNシリーズとして発表。2023年4月には、650ボルト耐圧GaN HEMTを商品群に加えた。
 GaN性能を最大限引き出す周辺部品の開発にも注力しており、GaN半導体と制御ICをワンパッケージ化し、簡単実装できるパワーステージICなど関連製品も発表している。

Voice
ローム LSI事業本部 フェロー 兼 統括部長 濱澤 靖史氏

 このたびは、栄えある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
 窒化ガリウム(GaN)は、従来の半導体より電力損失が少なく、高周波動作性に優れているのが特徴で、データセンターや通信基地局など、あらゆる電源の省エネルギー・小型化に寄与すると期待されています。
 「EcoGaN」は、GaN普及を妨げていた「使いやすさ」の問題を克服したロームの独自ブランドです。GaN性能を最大限引き出す周辺部品と合わせて、多くの引き合いをいただいています。
 今後もGaN市場を牽引し、持続可能な社会への貢献に取り組みます。