2023年受賞部品

機械・ロボット部品賞

大径ワークに適応したダウンサイジング高速傾斜円テーブル

北川鉄工所

コンパクトMCで大物加工

 北川鉄工所の「大径ワークに適応したダウンサイジング高速傾斜円テーブル」は、マシニングセンター(MC)に搭載する数値制御(NC)円テーブルの革新的な新製品。
 搭載可能な加工対象物(ワーク)寸法は、最大で直径500ミリ×高さ270ミリメートル、最大積載質量100キログラム。従来、直径400ミリメートルを超えるワークの加工には、主軸40番以上の大きなMCが必要だった。それがコンパクトな主軸30番のMCで大型ワークを加工できる。
 秘密は動力伝達機構に「ローラギアカム機構」を採用したこと。従来のウオーム減速機構に比べ動力伝達効率を大幅に向上、モーターの出力を60%低減した。製品本体の質量も300キログラム、市場競合機の約30%まで軽量化。車の電動化で採用が増えると見込まれる大きなアルミ部品の加工用途をねらう。

Voice
北川鉄工所 上席執行役員 キタガワ グローバルハンド カンパニー 社長 北川 和紀 氏

 このたびの受賞、大変光栄に存じます。また、開発にご協力いただいた企業の皆さまに感謝申し上げます。
 私どもはお客さまのニーズと課題に真摯に向き合い、商品の開発を進めてまいりました。自動車の電気自動車(EV)化に伴い、大型アルミケース部品が増えてきている中、「大径ワークに適応したダウンサイジング高速傾斜円テーブル」は工作機械のダウンサイジングにより高速と省エネ加工を実現できますので、さまざまな製造現場でご活用いただけると思います。
 このたびの受賞を励みに、これからもモノづくりに貢献できる製品を世に送り出すべく、開発に取り組んでまいります。

NSKリニアガイド 長寿命シリーズDH型/DS型

日本精工

装置案内部を長寿命化

 日本精工のリニアガイド「DH型/DS型」は、これまでの軸受開発で培った独自の熱処理技術「TF(タフ)化技術」を採用。直動機器の標準シリーズである「NH/NS型」比で2倍以上の長寿命化につなげた。装置案内部の長寿命化を図ることができ、装置の信頼性向上が果たせる。
 独自の熱処理技術で材料の鋼材に存在する残留オーステナイト量(鉄に他の元素が固溶したもの)を最適化した。ボールが異物などを踏むことで発生する溝圧痕の縁形状をなだらかにすることで、応力集中が小さくなり剥離を抑制。走行寿命の延長につながる仕組みだ。
 一般にリニアガイドはサイズが大きいほど、定格荷重が大きく長寿命となる。同製品は、寿命を維持しながらも、従来より小型のリニアガイドへの置き換えが可能。装置全体をサイズダウンできる。

Voice
日本精工 執行役常務 産業機械事業本部 産業機械技術総合開発センター 所長 武村 浩道 氏

 NSKリニアガイド「DH型/DS型」は、当社の4コアテクノロジーの一つである「材料技術」を生かした高度な熱処理技術によって、従来比2倍の長寿命化を実現しました。また、本製品は、従来品より小型に置き換えても寿命を維持することが可能で、お客さまの装置の小型化、軽量化に貢献します。
 今回の受賞は大変光栄であり、今後も社会やお客さまの期待に応えられる商品開発に力を注ぎたいと考えます。

高能率側面切削用エンドミルER5HS-PN

MOLDINO

コーナー部も安定加工

 MOLDINOの「ER5HS-PN」は、側面切削を高能率に行うことができるソリッドエンドミル。各種の金型や部品に存在するポケットの彫り込み荒加工や、穴の繰り広げ荒加工において、高能率加工を実現することができる。
 切削制御負荷ツールパスの加工法に着目して、効果が発揮できるよう、5枚刃の分割や刃形状、チップブレーカー形状と配置といった刃形状の開発を実施した。
 その結果、びびり振動が生じやすいポケットのコーナー部も振動することなく安定した加工が可能。
 S50Cにおいて、最大切りくず排出量毎分250cc以上の高能率加工を実現することができた。
 直径20ミリメートルといった大径高送り工具をもしのぐ能率を実現できるため、荒加工工程における工程集約およびトータル加工時間の大幅短縮によって、高いパフォーマンスを得ることができる。

Voice
MOLDINO 代表取締役社長 鶴巻 二三男 氏

 このたびは、「機械・ロボット部品賞」を受賞いただき、ありがとうございました。大変光栄で嬉しく思います。
 今回の開発は、切り屑分断、切削抵抗、耐欠損性の最適な工具形状を見いだし、お客さまの加工において大きな効果を見いだすことが可能になりました。開発を進める上で、本製品の評価にご協力いただき、また、採用いただきましたすべてのお客さまに感謝申し上げます。
 今回の受賞を励みにして、今後ますます、お客さまの課題に真摯に向き合いながら、困りごとを解決できる工具開発を行い、社会に貢献してまいりたいと思います。

スリムシートクリーナ

TRINC

フィルム付着の異物 除去

 TRINCの「スリムシートクリーナ」は、車載用バッテリー、ディスプレー、フレキシブル基板(FPC)などの製造・検査装置内で、特にカットされた枚葉(シート)状態のフィルム・金属箔などに付着した異物を除去するためのユニット部品。シート状の加工対象物(ワーク)を非接触で両面を同時にクリーニングし、90%以上の高い除去率で異物を除去・回収できる。最大で幅が1500ミリメートルのシートの異物処理が可能な能力を持ちながら、クリーニングヘッドを非常にスリムで、省エネルギーで動作するように設計した。
 さらに、異物対策が重要な装置内の複数箇所にユニットを設置することが可能で、工程全体を通して製品の異物不良の撲滅に貢献する。スリムシートクリーナを使用することで、異物不良による廃棄物を削減できるという観点からも環境への貢献が可能になる。

Voice
TRINC 代表取締役専務 高柳 順 氏

 このたびは、栄えある「機械・ロボット賞」をいただき、誠に光栄に存じます。
 当社は、これまで「実証主義」の姿勢で顧客の現状調査から入り、静電気やホコリ、異物による不良発生の原因究明と解決に取り組んできました。「スリムシートクリーナ」は、従来の方法では困難だったシート材の除塵を実現した部品です。車載用バッテリーやエレクトロニクス関連、医療分野など、昨今シート材を用いる領域は広がっています。同時に異物対策が必要な生産現場も増えていくことでしょう。
 今後も当社は、産業界の新たな課題解決に貢献してまいります。

センサ内蔵転がり軸受「しゃべる軸受」

NTN

発電機を内蔵、配線が不要

 NTNの「センサ内蔵転がり軸受『しゃべる軸受』」は、軸受の温度・振動・回転速度を計測し、外部のデータ記憶装置やタブレット・パソコンなどに無線送信できる。本体にセンサーICや無線デバイス、それらを駆動する発電機を内蔵した。計測・通信する軸受は他社製もあるが、軸受の寸法と負荷容量を変更せず外部への配線を不要にし、一体化したのは初めて。
 製造業では、機械の異常を自動で検知し、設備の保守や軸受交換を最適な時点で行うニーズが強まっている。同社は、2012年に風力発電の状態監視サービスを開始し、設備の安定稼働に貢献するとともに、検知した設備状態を迅速に報告する実績を積んできた。今後は「しゃべる軸受」の機能を生かし、軸受や周辺部品の「健康」を診断する需要の開拓を目指す。顧客へのサンプル提供と製造設備での評価を始めている。

Voice
NTN 取締役執行役CTO 江上 正樹 氏

 このたびは、「機械・ロボット部品賞」を賜り、誠にありがとうございます。
 産業界には少子高齢化による労働人口減少への対応として、IoT技術を活用した状態監視やデジタル変革(DX)によって、設備稼働率や生産効率を向上させたいとの強い要望があります。
 「センサ内蔵転がり軸受『しゃべる軸受』」は、これらの要望に応えるために開発したものであり、製造品質のより一層の向上にも貢献できると期待しています。
 本受賞を励みに、今後も市場トレンドを先取りする高機能商品の開発に努め、モノづくりの発展に貢献してまいります。

水圧モータ[NWM-012]

日本アキュームレータ

水道水を作動流体に

 日本アキュムレータの「水圧モータ[NWM-012]」は、水道水を作動流体とした水圧モーター。圧力の高い水を一次側から供給すると軸の回転運動へと変換し出力する。二次側から排出される使用済みの水は再利用でき、経済合理性や地球環境の保全にかなう。
 最大の特徴は、モーター内部に従来の機械要素に不可欠な機械油が一切含まれていないこと。このため、安全性や洗浄性が求められる食品関連機械での搭載が見込まれる。
 モーター駆動用の高圧水を洗浄源としても活用することで、清掃時間を従来比80%以上削減する効果を得た。
 爆発や可燃性のある環境下では、発火の可能性がある電気モーターを使いにくく、空気圧モーターが採用される場合が多い。空気圧モーターに比べ、ランニングコストを大幅に低減。熱の発生と二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できる。

Voice
日本アキュムレータ 代表取締役社長 杉村 登夢氏

 このたびは、「機械・ロボット部品賞」をいただき、大変ありがたく思います。
 モノづくり部品大賞に応募するのは初めてで、どうなることかと心配しておりました。このように受賞することができて嬉しく、またホッとしております。関係各位の励ましとお力添えのおかげだと思います。  
 今回の受賞により、当社が新規事業として全力で取り組む「NADS(ナデス)」事業に箔がついたと感謝しております。受賞の知らせをいただいたばかりではありますが、また来年も新しい製品を応募しようと考えております。
 本当にありがとうございました。