2008年受賞部品

電気・電子部品賞

自動車用LEDヘッドランプ 小糸製作所

小糸製作所

製品概要

同等の明るさで寿命4倍の1万時間
小糸製作所は世界で初めて、LEDを搭載した自動車用ヘッドランプを実用化した。従来の高輝度放電灯(HID)ランプと同等の明るさで寿命は従来比約4倍の1万時間。LEDは小型、省電力、長寿命だが、ヘッドランプに使うには光量や輝度の確保が難しいとされていた。同社は独自の光学制御システムを開発し、量産化に成功した。
現在、採用車種は1車種のみだが、09年には価格を半値に抑えて供給を拡大する予定。LED自体の低価格化とともに、一層の普及を目指す。

Voice
小糸製作所副社長 後藤 周一氏

燃費改善がテーマ、受賞を励みに拡販 白色LEDを使用した当社の自動車用ヘッドランプは省電力が特徴。クルマの燃費改善に大きく貢献できるのが最大の売りだ。自動車メーカー各社は環境規制が強まる中、燃費改善を最重要テーマに新車開発を進めている。当社もそれを先取りする形で部品開発に取り組んでいる。今後、LEDヘッドランプはLEDの性能進化とともに、確実に需要が増えるだろう。すでに、07年にトヨタ自動車の「レクサスLS600h」に供給を始めており、来年以降、新たに複数車種への採用が決まっている。受賞を弾みに、拡販につなげたい。

開発の狙い、ブレークスルー、そして今後の展開

高速差動伝送対応薄膜コモンモードフィルタ

TDK
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製品概要

導体部に薄膜技術 薄型化・小型化を実現
導体部に薄膜技術を活用することで薄型化や小型化を実現し、伝送信号の高速化に対応したコモンモードフィルタ。TDKがハードディスク駆動装置(HDD)用薄膜磁気ヘッドの製造で培った生産技術や高精度薄膜導体技術を応用した。従来の標準タイプの製品はカットオフ周波数3.5ギガヘルツだったが同フィルターは6ギガヘルツを達成し、ノイズ除去性能を高めた。実装面積は巻き線タイプの約2分の1。電子機器の画像の高精細化で高速信号の利用が進むことで需要拡大を期待できる。

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TDK庄内酒田生産部 製品技術部設計二課課長 伊藤 知一氏

省エネ技術向上、受賞は力強い励みに
当社の巻き線と薄膜技術を融合して生まれた。携帯機器の小型化や伝送データの大容量化に伴い、小型で高速伝送に対応したノイズ対策部品が必要になると確信し、開発に乗り出した。秋田地区のマザー工場で一貫して開発、製造した。日本でのモノづくりを前提にこだわってつくってきたため、受賞は力強い励みになる。
受賞製品はテレビのノイズ対策部品として使用される。省エネルギーや環境対応にも貢献する技術であり、需要はますます大きくなる。この分野をさらに伸ばすため技術水準を高める。高速、小型のさらなる要求に応えたい。

小型グリーンレーザBEAMMATE

島津製作所

製品概要

視感度 赤色の4倍 屋外でも投影線認識
建築現場などで水平や垂直の基準線を照射するレーザー墨出し機向けの小型グリーンレーザ光源。人間の目は緑色光に対して感度が高い。同製品が発する緑色レーザーは従来の赤色半導体レーザーに比べ、視感度が4倍以上と見えやすく作業がしやすい。投影線が直射日光下でも認識でき、屋外で使用できる。
内蔵の熱電変換(ペルチェ)素子でレーザー素子を温度制御することで、マイナス10度-50度Cの動作温度範囲を確保。厳しい環境でも安定した照射が行える。

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島津製作所民生品部開発課 デバイスビジネスユニット主任技師 東條 公資氏

コンパクト技術で評価
従来技術をコンパクトにまとめ、使いやすくした製品が高く評価され、うれしく思っている。開発力の8‐9割をこの部分に投入した。見えない努力が評価されたと考えている。類似品もあるが、使ってもらえれば、性能の違いがはっきりと分かる。
最近、中国が光学技術に力を入れ始め、レーザー分野の追い上げは激しい。うかうかしていると日本は抜かれてしまう。非線形結晶を使った分野を日本はないがしろにしているが、さまざまな人たちの努力で今の技術力が保持されている。国産技術が評価されないと、将来は中国から買うだけの国になる。そういう意味でも良い評価を受けた。

SpursEngine SE1000

東芝

製品概要

CPU・GPUと連携 映像処理速度1.5ギガヘルツ
東芝が開発したマイクロプロセッサー「スパーズエンジン(SpursEngine) SE1000」は、中央演算処理装置(CPU)やグラフィックプロセッシングユニット(GPU)と連携して映像処理を施す。処理速度1.5ギガヘルツ(ギガは10億)、消費電力10ワット台。「セル/ブロードバンドエンジン」に搭載したプロセッサーコア「SPE」を4個搭載し画像処理規格「MPEG-2」や「H.264」方式の符号化・復号化(エンコード・デコード)専用回路を組み合わせた。

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東芝セミコンダクター社 斉藤智隆システムLSI事業部副事業部長

事業間連携の成果
非常に価値ある賞を頂きうれしく、感慨深いです。本製品のコンセプトは半導体部門だけでは生まれなかったもので、パソコンなどデジタル家電部門と連携した成果です。当社が追求している「事業間の連携」の成果として喜ぶ声は社内でも多いです。

カーナビ用システムLSI「ナビエンジン」

NECエレクトロニクス

製品概要

CPUコアを4つ搭載 1920MIPS実現
NECエレクトロニクスが開発したカーナビゲーション用システムLSI「ナビエンジン」は、中央演算処理装置(CPU)コアを四つ搭載した。マルチコア技術の導入により、1920MIPS(1秒間に100万回の演算処理)を実現しながら、消費電力を5ワット以下に低減した。経路案内や地図描写、ワンセグなどの諸機能を1個で処理可能。将来普及が見込める障害検知や危険警告などの「運転支援機能」や自動運転などの「統合制御機能」にも対応できる。

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NECエレクトロニクス社長 中島 俊雄氏

マルチ技術に磨き、車の安全に貢献 「ナビエンジン」は、当社が力を入れている自動車用半導体部門での受賞であり、同時に、CPUコアを複数用いたマルチコアプロセッサーとして初めての受賞でもあるため、とてもうれしく思う。受賞を契機として、マルチコア技術に磨きをかけるとともに、自動車用半導体部門を当社の中核事業として改めて認識したい。
自動車は将来、障害物の検知や危険警告などと言った運転支援機能が求められ、また、自動運転などの統合制御機能にもつながっていく。マルチコア技術を持ってして、自動車の安全や安心の実現に貢献していきたい。